軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

324 初見攻略と言うのなら攻略情報を見てはいけない

「神言教が終わりというのは、どういうことですか?」

口を開いたのは、大島くんではなく山田くんだった。

妹ちゃんに支えられて、若干ふらつきながらも立ち上がる。

治療魔法で傷は治ってるし、私が密かにお手伝いしたから失った血液も補充されている。

けど、一度なくしたものを補充しても、それが全身に行きわたるには時間がかかる。

山田くんは今貧血に近い状態のはずだけど、気力だけで立ってるってやつかな。

「そのままの意味ですよ。神言教の長きにわたる時代が終わりを告げるのです」

教皇が朗らかに笑う。

その表情に悲壮感はない。

んー?

ホント、何を考えてるんだろ?

「ここではなんです。場所を移してお話ししましょう。それとも、少しお休みになられますか? いきなりのことでそちらも整理するお時間が欲しいでしょうし」

「いえ。お話を伺いましょう」

教皇の提案に、山田くんはすぐに首を振って答えた。

「それでは、ついてきてください。ああ、白様はどういたしますか?」

うむ?

むー。

どうすっかなー?

教皇がどういうつもりでいるのか知っておきたい気もしないでもないけど、私が同席するのってなんか違くない?

ということで、私は首を横に振って参加を拒否。

そのまま一拍おいて転移でその場をお暇した。

なーんてな!

私は転移でその場を後にしたけど、妹ちゃんに張り付いている分体はそのまま。

このまま教皇が何を企んでるのか根掘り葉掘り盗み聞いてやるぜ!

げっへっへ!

「あ」

なんて目論んでおりました。

山田くんにくっついて歩いていた妹ちゃんが、何かに気づいて服の中に手を突っ込んだ。

そして何かを引っ掴んで手を引き抜く。

うん。

その何かって、私の分体だよ。

「えい」

ギャー!?

プチって、プチって潰されたー!?

私のプリチーな分体が!?

なんてことをしてくれるんだ!?

クソウ。

ハア。

まあ、でも仕方がないか。

分体を潰す瞬間の妹ちゃんの顔には、「この恨みはらさでおくべきかー」って書いてあったし。

妹ちゃんにはいろいろとさせちゃったからねー。

恨まれてもしゃーなし。

分体一個くらい、潰されても文句は言えんわな。

分体一個潰したのを黙認。

それとシステム崩壊時の保護リストに妹ちゃんの魂を追加。

これを今までの働きの報酬として、以降私は妹ちゃんに関わらないことにするか。

もともとの報酬として提示していた、お兄さん、つまり山田くんを殺さないっていうのは、そもそも最初っからその気はなかったわけだし。

労働の対価として正当な報酬ってことで。

まあ、それも向こうから私に敵対しなければっていう条件付きだけど、ね。

…………やーめた。

妹ちゃんについてた分体以外にも、教皇たちを監視している分体はいる。

だから、覗こうと思えば簡単に覗くことはできる。

けど、やめとこう。

どうせ、教皇は私が覗いてることも計算に入れて、尻尾を出すようなことはしないだろうから。

十中八九、教皇は今後の展開を予測して、私に対抗するための手段を模索しているはず。

伊達に長年ポティマスを相手に、ただの人間であるにもかかわらず対抗してきたわけじゃない。

私のしようとしていることを全部読み切ってるわけじゃないだろうけど、不測の事態に備えて準備はしているはず。

山田くんに接触したのも、その一環である可能性が高い。

だったら余計に覗いておいたほうがいいんじゃないか?

そう思う。

私も教皇と同じで、いろいろな事態を予測して、万全の準備を整えてからことに挑むタイプだ。

だから、不穏な芽があるのなら、早めに摘んでおくのが対応としては正しい。

ポティマス亡き今、私の敵になりうる数少ない一人があの教皇なのだから。

警戒して損はない。

ていうか、節制の支配者スキルを教皇が抱えているんだから、エルフを倒すまでっていう協力関係が解消された今、闇討ちして始末しちゃうのが一番手っ取り早いんだよね。

けどなぁ。

それだとただのワンサイドゲームなんだよなー。

今教皇を始末するのが一番効率はいい。

それは確か。

けど、その選択は、まずい。

何がまずいって?

そんな結果の見えた選択をしたら、面白くないじゃないか。

私が、じゃない。

観客が。

そう。

この劇を、その土台から台無しにできる最悪の観客にとって、結末の見え切ったその選択はきっとつまらない。

まあ、そんなわけで、私にとって効率が良くても、この選択は取れないんだよなー。

あー。

あの邪神、ホントろくでもない。

絶対私に楽させる気ないもん。

うん。

わかってる。

このまま順調にいくはずがないって。

だから遠回りでも入念に準備をしてきたんだから。

大丈夫。

きっとうまくいく。

私自身の力を信じろ。

うし!

では、教皇の覗き見は中止。

他にできることをしよう。

とは言え、そんな今すぐできることはあんまないかな。

山田くんたちがいないから、転生者たちへの説明会を再開するのもあれだし。

戦後処理に関してはメラたちが頑張ってくれてるし。

システムへのハッキングは本体が関与しなくても、分体が常に行ってるし。

システムへのハッキングは順調。

当初の予定では純潔を妹ちゃんに取ってもらえればと思ってたけど、ハッキングが進んだ今、その必要もないんだよなー。

ちょっと強引にだけど、支配者権限に干渉して乗っ取ることはできた。

それで空席だった純潔は私の手に渡ってるし、ポティマスが持ってた勤勉もあいつが死んだ直後に私がもぎ取った。

魔王が持ってた暴食と謙譲も、本人の同意をもとに譲り受けている。

残りは教皇の節制だけ。

その残り一つが問題なんだけどねー。

一応今のままでも強引に進めることはできるけど、効率は悪い。

まあ、どっちにしろあともうひと踏ん張りってところかな。

システムのハッキングが順調な今、あとの問題と言えば、やっぱ先生か。

他の転生者たちはまだ立ち直ることはできる。

エルフの里に監禁されてただけで、心身は健康そのものだからね。

けど、先生は体は健康でも、心がそうじゃない。

一度、お見舞いに行くか。