軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

307 爆発

映像を呆然と見つめる転生者たち。

いち早く立ち直ったのは、工藤さんだった。

「ねえ、これが本物の映像だとして、この星ってあと何年くらいもつの?」

工藤さんの言葉に、ハッとする転生者一同。

まあ、普通に考えたらこんな状況だったら、あと数日で星が崩壊しますって言われても納得できるし、こうまざまざと終末感出されたら気になるよね。

「ご安心を。とりあえずあなたたちが生きている間に崩壊という事態にはなりません」

私の計算が正しければ、今のままでも星が崩壊することはない。

少なくとも転生者がその一生を終えるくらいの期間はもってくれるはず。

ただ、エルフの先生みたいに長命だと保証はできない。

一応、ポティマスというエネルギーの無駄遣いしてる最大の要因を排除したので、今後は緩やかに回復していくはずだ。

そう、時間をかければ、回復はするのだ。

ただ、それにはどうしたって犠牲が出るっていうだけで。

その犠牲が、現在システムの核となっている女神サリエル。

サリエルはもうシステムに使い潰される寸前。

そんな長い時間耐えられるわけがない。

加えて言うなら、この世界に生きる人々の魂の劣化もそろそろ危険域に達してきている。

魔族が出生率の低下で苦しんでいるのは、魂の劣化によって転生ができなくなってきているから。

何度も何度も転生させられた魂は摩耗し、傷ついてきている。

その状態で無理やり転生すれば、待っているのは魂の崩壊。

そうなればもう二度と転生することもできない。

黒がそんな魂の劣化が見られる人々を隔離していた場所もあったけど、そこは鬼くんが潰しちゃったしなー。

それに、そんな対症療法じゃ、根本的な問題は解決できないし。

黒がやったことは、なるべく人々にスキルを取らせないという、ポティマスが転生者たちにしたことと同じようなこと。

そうすることで、スキルという余分なものを魂につけることなく、生涯を送らせる。

スキルはあるだけで魂の負担になるからね。

それが健康的な魂なら問題ないけど、劣化した魂では抱えきれなくなる。

けど、そうやってスキルを取らせないようにしたって、結局のところ魂が回復することはない。

病の進行を遅らせるだけみたいな感じ。

魂の劣化を回復させるには、転生させずにいったん魂を休養させるしかない。

そして、休養している魂が増えてくれば、出生率が下がる。

結果、世界の人口はどんどん減っていく。

人族は魔族よりも総人口が多いから、まだ顕著になっていない。

けど、時間が経てば徐々にそれは表出してくる。

人口が減ればそれだけ星の回復も遅れ、そして時間が経てばまた魂の劣化が進む。

星が回復するのが先か、それとも魂の劣化が極まるのが先か。

そんなチキンレースじみた状況になる。

まあ、そこらへんは転生者たちには無縁のこと。

転生者たちは今世が終わればこの世界の輪廻ではなく、通常の輪廻の輪へと戻る。

そんな未来の心配なんかしなくても大丈夫なのだ。

「私たちはって、私たちの子供の世代は危ないってこと?」

工藤さんの言葉に、ちょっと意表を突かれた。

子供?

思わず工藤さんのお腹に目を向けてしまったけど、その視線を受けた工藤さんは慌てて釈明を始めた。

「妊娠なんかしてないわよ。将来の話よ」

あー。

そっかそっか。

子供かー。

それは全く考えてなかった。

これは盲点というか、認識の違いっていうかなんというか。

私からしてみると、この世界で子供産むなんて正気の沙汰じゃないっていうかなんというか。

そもそも子供を産むっていう発想自体なかったわけだけど。

ベイビーズ?

あれは、うん、子供とはなんか違う別枠だよ。

この世界で子供を産むってことは、つまり誰かの生まれ変わりを産むってことなんだよねー。

自分のお腹の中から、誰かの生まれ変わりが産まれてくる。

まあ、それを言ったらこの星だけの話じゃないけど、ここだともしかしたら知ってる相手の生まれ変わりかもしれないんだよねー。

しかも、下手したら自分が殺した相手の生まれ変わりとか、普通にあり得る。

もし真実を知っていたら、子供を産もうなんて考えられないんじゃね?

ていうか、神言教の教皇がそういう真実を人々から忘れさせたのは、そこらへんが理由だろうし。

贖罪のために延々転生し続けて、エネルギーを貯めるための装置として生かされる。

そんなことを知ったら、人はどうするか?

自殺? あるある。

けど、自殺しても生まれ変わるだけ。

じゃあ、この煉獄から抜け出すにはどうしたらいいか?

捧げちゃえばいい。

存在そのものを。

私はそんなことしようなんて思わないけど、追い詰められた人間は消え去ることを望んでもおかしくない。

そして、一人の人間が捧げても、回復するエネルギーは微々たるもの。

一瞬の量としてはいいかもしれないけど、長い目で見れば転生し続けて稼いでもらったほうがずっと多くのエネルギーを得られる。

人々は真実を忘れちゃったんじゃなくて、忘れなくちゃならなかったんだ。

しかし、それをここで言うのは、どうなんだろう?

知らなければ幸せな家庭を築くことも、できなくはないか。

「少なくとも、今すぐこの星が崩壊するということはありません。そもそも、崩壊を防ぐためにポティマスを討ったのです。ポティマスがいなくなれば、星の崩壊は止まり、後は緩やかに回復していくでしょう」

嘘は言ってない。

その前に私がいろいろやらかすつもりではあるってだけで。

子供云々についてもあえて触れない。

触れても不幸なことにしかならないだろうし。

知らないほうがいいってことは世の中にはいっぱいあるってことだね。

まあ、出生率が下がってきてるわけだから、子宝に恵まれるかどうかは知らんけど。

ていうか、そもそも相手がいるん?

「ポティマスって、私たちを監禁してた奴よね?」

工藤さんが額に手を当てながら聞いてくる。

その視線は私ではなく、先生のほうを見ていた。

先生はというと、監禁という言葉を否定することもできず、真っ白に燃え尽きたような状態で呆然としていた。

あまりのことに何も考えられなくなっているのかも。

まあ、けど、先生は強い人だし、大丈夫でしょう。

映像を切り替える。

この星の現状を映していたものから、この前の戦いの記録に。

そこには森の上空に浮かぶ無数のウニや三角錐。

そして、森の中で動く機械兵の姿。

このファンタジーっぽい世界には似つかわしくない、SFチックなものたち。

「ポティマスはこれらの兵器を稼働するためのエネルギーを欲していました。そのエネルギーが、星の生命力そのもの。それを搾取されていたために、現在の星があのような状態になっていたわけです」

今世では見たこともない、前世でもスクリーン越しにしか見たこともないだろうその映像。

転生者たちは食い入るように見入っている。

「ポティマスが転生者を集めていた理由は、転生者の特異な力を求めて。それを利用してよからぬことをしようとしていたようです」

ホントは不老不死を求めて転生者をミキサーにかける予定だったわけだけど、そんなスプラッタなこと聞かせられないし言わない。

大体からして不老不死って言われてもねえ?

普通は鼻で嗤うとこでしょ。

マジのマジで本気で不老不死目指してこんな壮大なことやらかしてる、なんて言われても、逆に信憑性なくなるわ。

「つまりなに? 私たちは利用されるために拉致監禁されたと?」

「はい」

工藤さんの身も蓋もない言葉を肯定する。

だって実際そうだし。

「ま、え、じゃぁ、わた、わた、な、の、ため、え?」

ん?

え?

言葉にならないかすれた声のほうを向くと、そこには痙攣して椅子から崩れ落ちる先生の姿があった。