軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

294 エルフの里攻防戦④

かすかな振動が伝わってくる。

それはこの森のいたるところで起こっている戦闘の中でも、最も激しいものが引き起こしたもの。

それと認識した私は、一度だけ薄目を開けて黒のことを見て、転移でその場を去った。

山田くん一行はほぼ無力化したし、後は鬼くんに任せれば問題ない。

山田くんが苦しんでいた理由が禁忌のカンストによるものだとわかったしね。

あの様子じゃ、目を覚ましてもすぐに行動できるようにはならないだろうし、魔王とかち合うことはほぼありえない。

だったら放置で十分。

それよりも、私はついに出てきたエルフの最終兵器を片付けるのに専念したい。

そう、ついにエルフは出してきたのだ。

さっきまで相手にしていたロボとは比較にならない、兵器を。

転移した私が目にしたのは、蹂躙されるタラテクト群団。

かつての私と同じような小さな蜘蛛が、それが成長した大きな蜘蛛が、そこからさらに成長を重ねた大蜘蛛が、等しく何もできずに蹂躙されていく。

その中には、あのクイーンすら含まれていた。

空中に浮かぶそれ。

それを一言で表すとすれば、ウニだった。

直径10メートルはあろうかという巨大な球体。

その球体からのびる無数の棘。

うん。ウニだ。

金属の巨大なウニ。

そんなちょっと反応に困る外見のウニだけど、その性能はやばい。

全身からのびた棘、その一本一本が砲身であり、地上に向けて絨毯爆撃を続けている。

逃げ場などない。

ウニが浮かぶ上空から砲弾が雨あられと降り注ぎ、地上を焦土に変えていく。

森が吹き飛ぶ。

そこにいるタラテクト群団もろとも。

クイーンですらその爆撃から逃れることができず、その身を削られていく。

クイーンの巨体だと的がでかくてもろに爆撃の餌食になってしまっている。

本来ならばクイーンはその巨体に似合わないスピードで相手の攻撃を躱すことすら可能だけど、さすがに避けようもない広範囲に砲弾をばら撒かれたら対処のしようもないか。

けど、さすがはクイーンというべきか。

女王の矜持か、砲弾の雨に撃たれながらも、その口に黒い光という矛盾したエネルギーを収束させていく。

ブレスだ。

最強クラスの魔物であるクイーンが、その全力で放つブレス。

極太の黒い光線が空中に浮かぶウニ目掛けて飛来する。

ウニから放たれていた砲弾を消し飛ばし、その迸るエネルギーでウニ本体さえも消し飛ばし、宇宙にさえその光線は届いた。

そんな光景を幻視した。

それだけの力があった。

クイーンの渾身の一撃は、直撃すれば山さえ吹き飛ばし、地形を変えてしまえるほどの破壊力を誇る。

直径たかだか10メートル程度の金属の塊なんて、跡形も消し去るだけの力があった。

だというのに、ウニは健在。

ブレスは直撃した。

避けるそぶりすら見せなかった。

まるで避けるまでもないと言うかのように。

ウニの周囲に張られた結界が、クイーンのブレスを消し去っていた。

消し去る、だ。

防ぐ、じゃない。

その結界はクイーンのブレスを消し去ってしまった。

まるで、元からそんなものはなかったかのように。

あの結界、私は知っている。

なんせこの身で味わったこともあるものなんだから。

地下にあった旧文明の施設。

そこで味わった、魔術妨害。

その結界バージョン。

うんと昔の旧文明にあった技術なんだから、その時代から生き残っているポティマスが知っていてもおかしくはない。

だから、それを使う兵器があっても不思議じゃない。

それこそがエルフの最終兵器。

ブレスが効かないウニに、クイーンができることなんかない。

遠距離攻撃はことごとくウニの張った結界に防がれる。

あとは純粋な物理攻撃しか攻撃手段がないけど、絶え間なく降り注ぐ砲弾がそれを許さない。

空間機動を駆使して何とか空中に駆け上がろうとするクイーンだけど、一歩目を踏み込む間もなく砲弾で地に縫いとめられる。

クイーンの体が砲弾を受けるたびに削られ、再生する間もなく次の砲弾が襲い掛かる。

あのマザーと同種のクイーンが、為す術もなく蹂躙されている。

なんつう恐ろしい兵器を開発しとんのじゃ。

あれ一体だけで世界征服できるんじゃね?

砲弾の残数とか運用するためのエネルギーだとかの問題はあるだろうけど。

ていうか、弾切れしないな。

きっと内部で空間拡張でもして、弾は異空間に収納されてるんだろうなー。

でないと理屈に合わないし。

私も大怪獣対未来兵器の戦いを観察してるだけじゃない。

こう見えてもちゃんとクイーンを助けるべく、ウニに攻撃を加えている。

んだけど、結界に阻まれていまのところ全部から回っております。

異空間にボッシュートも結界に阻まれてそもそも異空間への入り口が開けない。

魔術による狙撃も結界が消し去ってしまう。

ぐぬぬ!

思った以上に結界の強度が高いぞこれ。

結界の魔術妨害だって万能じゃない。

妨害であって無効化ではないんだから、限界値がちゃんと存在する。

要は結界が妨害しきれない出力の攻撃をぶち当てれば、消しきれずに通る。

けど、それをするには妨害を超えるエネルギーで攻撃しなきゃいけないわけで、クイーンのブレスを問題なく消し去ってる時点で結界の強度は相当高いと判断せざるを得ないわけで。

うん。

ムリ!

イヤ、できないわけじゃないよ?

ただ、それやっちゃうとこっちだってバカにならない量のエネルギーを消費しなきゃならないわけでね。

ぶっちゃけもったいない。

だから、別の方法をとることにします。

ホントはこれ、あんまやりたくはないんだけどね。

背に腹は代えられない。

目を開ける。

瞳に力を集中。

そして、ウニを視界に収める。

暴食の邪眼発動!

この邪眼は神になってから開発した新たな邪眼。

その能力は、魔王の暴食のスキルと似ている。

だからこそ暴食の邪眼と名付けたんだけど。

その能力は、ずばりエネルギーの強奪。

視界に入った魔術をエネルギーに分解し、吸収してしまうという邪眼。

ウニの搭載している魔術妨害結界、これも厳密に言えば魔術の一種になる。

魔術を妨害し、消し去る魔術。

それが魔術妨害結界の正体。

それならば、魔術を消す魔術、をさらに消す魔術を開発してしまえばいい。

そこで着目したのが、魔王の大罪スキル暴食。

暴食の能力は何でもかんでもエネルギーに変換し、それを食らうというもの。

その原理を解明し、エネルギーに変換するものを魔術に絞るよう改造したのが、この暴食の邪眼。

私が対黒用に開発した切り札の一つ。

だからこそ、あんまり黒には見せたくなかったんだけどね。

お得意の魔術妨害結界を私の暴食の邪眼に食われ、それどころか浮遊するための魔術すら食われたウニが地上に落下していく。

そこに待ち構えるクイーン。

ウニも砲弾を撃ち出して抵抗するけど、地上に落ちて結界もなくなったウニに勝ち目はない。

クイーンの巨大な牙が鋼鉄のウニを貫き、スクラップに変えていく。

勝った。

と、思った瞬間、ウニが爆発した。

その爆発をゼロ距離からもろに食らったクイーン。

その上半身が消し飛び、残った下半身が力なく地面に倒れこむ。

クッソ!

最後の最後で自爆とは、やってくれる。

まあ、クイーンを始めとしたタラテクト群団が全滅したのは痛手だけど、逆に言えばそれだけでエルフの最終兵器を破壊できたんだ。

必要経費だったんだと思って納得するしかないな。

そんなことを考えた私の視界に、空中に浮かぶウニの姿が映る。

それも、無数に。

……………………は?

あれ?

ん?

んん?

んんんんんんんん!?

ちょーっと待て!

待て待て待て!?

ええ!?

ウニあれ一体だけじゃなかったの!?

ていうか、多くね?

パッと見だけで百体以上のウニが浮かんでるように見えるんだけど?

しかも、なんかその中心にウニよりもだいぶでかい正三角錐の何かが浮かんでるんだけど。

もしかして、ウニって最終兵器でも何でもない、量産型兵器?

そんでもって、あの中央にいる三角錐がホントの最終兵器?

やばい。

ちょっと、エルフの戦力を舐めすぎてた。