軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

286 堂々と敵地の中を進軍

王国で一騒動起こした後は、エルフの里に向けて魔族軍を進軍させる大仕事がある。

エルフの里は人族の領域にあるので、そこに進軍するってことはつまり魔族軍が人族領域を通るってこと。

普通だったらその前に終わる。

帝国の国境を越えられなくて、長年魔族はそこで足止めされてたんだから。

まあ、わざとそこで止まってたっていう側面もあるけど。

けど、今回は違う。

帝国の国境を守っていた砦のいくつかは陥落し、通行が可能になっている。

それでなくても夏目くんや吸血っ子を使って帝国内部を掌握しているので、適当に市民をだまくらかせば問題なし。

あらかじめ帝国軍の制服だとか旗を拝借して、魔族軍を帝国軍に偽装させる。

まあ、全軍にそれを配備するだけの数はないので、目立つ将校とかの

そうすることで、パッと見では魔族軍だと思われなくなる。

魔族って言っても見た目は人族と変わりないからね。

装いさえ変えれば不審に思われることもない。

本来であれば神言教の鑑定スキルもちの異端審問官がそこらじゅうで目を光らせて、こっそり侵入する魔族を見つける役割を担っていたんだけど、それも今回に限って言えば協力者。

わかっててもスルーしてくれます。

それは帝国の諜報部隊も同じ。

そういうわけで、魔族軍であるにもかかわらず、堂々と人族領に足を踏み入れることに成功。

今回引き連れてきているのは、メラ率いる第四軍、鬼くん率いる第八軍、私率いる第九軍。

その三軍だけ。

魔王直属の近衛軍すらバルトと一緒に魔族領に置いてきている。

とはいえ、三軍だけでもその数、戦力は過剰ともいえるくらい。

一軍だけでも人族の小国を蹂躙できるだけの戦力を有してる。

それが三軍。

そんな軍団を、こっそりと移動させることなんて土台ムリな話。

だったらもう開き直って堂々とすればいい。

多少違和感を覚えられても、ここまで堂々とされたら逆にそういうもんかって思われるもんよ。

神言教と帝国という二大勢力がそろってあれは味方の軍って宣言してんだからなおさら。

まあ、そこら辺の根回しは教皇に任せてるから問題ないはず。

教皇がどんな交渉をしたのかは知らんけど、帝国領に入った軍団は、帝国内にある軍の移動も可能にする巨大転移陣で、エルフの里の近くの小国に移動させられる。

巨大転移陣って言っても、この大所帯を一度に転移させることはできない。

なので、小分けにして転移を繰り返しての移動となる。

これがまた時間がかかる。

私がまとめて転移させるのが一番速いんだけど、そんなことしたらエネルギーがごっそり減るのでやりたくない。

それに、時間がかかっても問題はないしね。

ここまで事態が進んだのなら、もうあとは水が高いところから低いところに流れてくようなもん。

それを止めることはできない。

それこそDだとかの舞台を根本からひっくりかえせるような存在じゃないと。

この世界でそれができうるのは黒と私のみ。

その二人ともが今回の作戦を主導してんだから、ひっくり返りようがない。

だから時間をかけてもなんの問題もない。

結果が出るのが早いか遅いかの違いだけ。

ぞろぞろと移動する人の列を眺める。

道の幅に対して人数が多すぎるために、列の長さが凄まじいことになっている。

先頭はそれこそ普通の視力では見えない。

その先頭を進むのはメラの率いる第四軍。

元はバルトが軍団長をしていた正統派の軍団だけあって、その見た目はごくごく普通。

その後ろに続くのが鬼くんの率いる第八軍。

こっちはもともと寄せ集めの集団だったこともあって、装備も不揃いなものが多い。

統一感のある他の軍団に比べると雑多な印象が強く、傭兵の集まりみたいにも見える。

そんでもって、最後尾を進むのが私の率いる第九軍。

人数は一番少ないのに、一番目立つ。

なんせ軍団全員がそろって白装束に身を包んでいるんだから。

異様の一言に尽きる。

まあ、私のせいなんだがな!

そんな異様な集団でも、帝国の旗を掲げていれば不審な目を向けられはしても攻撃されることはない。

先ぶれで軍が通るっていうことも教えられているし、民衆は心得たもの。

子供なんかは進軍する兵士たちに手を振ったりしてる。

結局のところ、魔族だとか人族だとか言ったところでこんなもんよ。

それを知らなければ、争うことなんかない。

争わなければならない時代背景があり、争わなければならない義務があったとしても、それを知らないってことは争う理由がないってことでもあるんだから。

知らないことはある意味で幸せなのかもしれない。

無知は罪である、と誰かは言いそうだけど。

「白ちゃん、大丈夫?」

そういうことを言いそうな人物筆頭が私のことを心配する。

現在私と魔王、ついでに吸血っ子は優雅に馬車に乗っている。

が、私の調子はすこぶる悪い。

大丈夫に見えるかね?

争いの真理を垣間見るくらいにはトリップしてますぜ?

人混みに私みたいなボッチ体質の人間を放り込んではいけません。

酔ってしまいます。

人の波に酔います。

うう、気持ち悪い。

馬車越しでも感じるこの数多くの人の気配。

どうして人ってこんな多いん?

少しくらい減ってもいいんちゃう?

いっそ減らしてまってもええんちゃう?

やってまうか?

「なんかよからぬこと考えてない? ダメだからね?」

うぐぐぐ。

せめて戦闘が始まればスイッチ切り替わるから我慢できるけど、こう、ただ黙々と移動するだけっていうのが辛い。

人がこんな集まってもいいことないって。

なんで人はこう、集団を作ろうとするのか?

ええやん、一人でも。

むしろ一人にさせてくださいお願いします。

は!

山田くんが餌に食いついたのを分体が察知した!

こうしちゃいられねえ!

観察するためにも出かけなければ!

決して人混みが辛くて抜け出すんじゃない!

これはれっきとしたお仕事のためだから!

「そういうわけで行ってくる」

「白ちゃん、それだけの言葉で理解できるのはエスパーだけだからね? 何がそういうわけなの?」

なんか呆れている魔王を放置して転移。

ふう。やっと息ができる。