軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鬼14 決断

本を手に取る。

少し悩んだ末、それを机の上に置く。

それから目を閉じて考え、気づいたらまた本を手に取る。

そんなことをずっと繰り返していた。

手に取った本を眺める。

きちんとした本ではなく、ノートのようなものだ。

ただ、その内容は僕にとってどんな本よりも重い内容となっている。

ページをめくろうとして、既に何十回と読み直していることを思い出してやめる。

もう、内容は頭の中に入っている。

一字一句とまではいかないまでも、読み直しても内容が変わることはない。

変わっていて欲しくても、変わらない。

そこには、世界崩壊の危機と、その回避方法が記されていた。

頭を抱える。

禁忌でこの世界の成り立ちやシステムについては知っていたけれど、まさかそんな末期の状態になっているだなんて。

これがもし本当のことならば、僕らはとんでもない世界に転生してしまった。

本当ならの話だけれど。

どうにも、ここに書かれていることが本当のことだとは思えない。

いや、ほぼ本当のことしか書いていないのだろうけど、少しの嘘と書かれていない事実があるといったほうがいいか。

僕がそう思うのは、話がうますぎるからだ。

この本に書かれた対処法だと、システムを崩壊させれば世界が救われるという。

けど、本当にそうなんだろうか?

今の今まで、それが実行されたこともないのに、本当にうまくいくんだろうか?

そんな簡単なことで、世界がポンと救われてしまうんだろうか?

だとしたら、今までの世界の苦労はなんだったのかと。

邪推なのかもしれないけど、どうにも信じきることができない。

それに、システムがなくなるということは、スキルやステータスがなくなるということ。

今までそれらを頼りに生きてきたのに、なくなってしまう。

その混乱はかなり大きいはずだ。

ステータスによって簡単にできていたことが、できなくなる。

スキルによってもたらされていた繁栄が、崩壊する。

それは阿鼻叫喚の地獄絵図だろう。

現代日本から電気を奪うようなものかもしれない。

いや、与える影響を考えると、それ以上か。

この本にはそういうことが一切触れられていない。

そこから、都合の悪い事実を伏せ、耳障りのいい事実だけを語っているのではないか。

そう思ってしまう。

はっきり言って、システムの内情なんて僕にはわからない。

そういう意味では、白さんは僕よりも先に進んでいるのは確実だ。

だからこそ、何かを隠されたところで僕らには隠されたものがなんであるのかさえ、見当もつかない。

本当に隠されているのかさえもね。

疑いだしたらきりが無い。

けれど、この本の内容をすべて戯言と切って捨てることもできない。

あまりにも理路整然としすぎた内容には、説得力がある。

禁忌の内容と照らし合わせて考えてみても、違和感がない。

だからこそ、悩みに悩んだ末に僕が出した結論は、ほぼ真実であり一部に隠し事や嘘が混じっている、というものだった。

机の上に置いた本を、人差し指でトントンと叩く。

これがほぼ真実だとして、白さんはどうして僕にこの本を渡したのか?

まあ、そんなことはわかりきっているけど。

要は、身の振り方を考えろということなんだろう。

この本の内容を考えれば、今後世界は激動の時代を迎える。

白さんが、そう行動する。

その時、僕がどうするのか、今から考えておけと伝えているんだろう。

白さんは、案外お人好しなのかもしれない。

前世でも特に親しかったわけでもない僕に、ここまで世話を焼いてくれているんだから。

外道耐性しかり、この本しかり。

もしかしたら、この本を読んだ僕が、敵になる可能性があることを理解していないはずがないのに。

半端な気持ちで結論を出すべきじゃないだろう。

このままでは世界が滅びる。

それはもう間違いないんだろう。

けど、それはいつ起こるのか?

そこが書いていない。

このままでは世界が滅びる、としか書かれていない。

明確な時期が書かれていないこの書き方だと、大げさな話千年後に世界後滅びると言っても嘘ではないのだ。

システムを壊し、そのエネルギーでもって世界崩壊を止める。

これについては真実だと思う。

嘘にしてはここらへんの記述は詳細に書かれていて、方法や進捗状況なんかも載っている。

正直、専門用語を眺めているみたいで何がどうなのか理解できないけれど、嘘だとするならば白さんの想像力は凄まじい。

これが全部想像の産物ならば、マッドな気配すら漂い始める。

ここは素直に本当のことが書かれていると思ったほうがよさそうだ。

ただ、そのれだけではエネルギーが足りない。

補充する必要がある。

問題はこの部分か。

補充、つまり、人々を殺してエネルギーを回収するということ。

だからこそ、そのために魔族と人族の間で大きな戦争を起こそうとしている。

世界を救うためには避けて通れない道。

だけど、本当にそうなのか?

さっきの世界が崩壊する時期の話に戻ると、必ずしもそうではないんじゃないかと思える。

もし、白さんが世界崩壊の時期にまだ余裕が有ることを伏せているのだとしたら、この虐殺をする必要はないんじゃないのか?

だとすれば、白さんはどうしてそこまで早く行動を起こそうとしているのか?

そうしないといけない理由があるのか?

おそらくここだろう。

ここらへんに、どうしても白さんが隠しておきたい何かがあるはずだ。

その何かを知る必要がある。

そして、他に隠していることがないのかも。

本を手に立ち上がる。

窓の外を見ればすっかり日は落ちている。

ここ最近わかったことだけれど、白さんは食事の時間と寝る時は絶対に外出しない。

日中はいないことも多いけれど、その時間は必ずこの屋敷に帰ってきている。

そろそろ寝るくらいの時間。

今ならば、白さんは部屋にいるはずだ。

鑑定石でステータスを確認する。

ほぼ全快、けれど、言い換えればまだ全快ではない。

魔剣は、二本だけ。

それもステータスがまだ戻っていない時に作った急ごしらえのもの。

不安はある。

万全とは言えない上に、白さんの力は未知数。

僕の印象が間違っていなければ、全快状態でさえ勝ち目はないと思える。

けれどもし、白さんの目指すものが、僕の受け入れられないものだったら、その場で戦闘になってもおかしくない。

そうならないように祈る。

覚悟を決めて、僕は白さんの部屋へと歩みだした。