軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212 魔王様の3時間クッキング

街についた。

それはいいんだけど、ここまでの道のりで吸血っ子のスキルはあんまり成長しなかった。

悪食の称号は取れたようだけど、スキルの伸びは今ひとつ。

まあ、ただ移動してるだけだし、そんな簡単にスキルが伸びるはずもないか。

街についたらまずは宿屋に直行した。

吸血っ子が死にそうな顔してたので、休ませるためだ。

むう。

毒食わせすぎたかな?

悪食はもうゲットしたし、食事は普通のに戻してもいいか。

それに、私もそろそろまともな料理が食いたい。

吸血っ子が毒食ってる間、私もそれにつき合わされて毒食ってたからなー。

魔王め、私のは毒抜きにしろって言ったのに、それはフェアじゃないとか言って私にも毒入りの料理食わせやがった。

けど、それもここまで。

魔王との約束で私に美味しいもの食わせてもらうというのを履行してもらうとしよう。

とりあえず宿屋。

この街の中でも1番いい宿屋を探し、そこにためらわずに入る。

魔王が多めにチップを渡して、1番いい部屋を借りる。

具合の悪そうな吸血っ子とメラを残して、私と魔王は買い物に出かけた。

その際、留守番としてこの前回収した子蜘蛛を元にした分身を3匹ほど召喚して置いてきた。

エルロー大迷宮に置いてきたベイビーズと違って、回収した子蜘蛛は自我の芽生えていない状態だったので、私がそのまま吸収して分体として使っている。

1匹1匹の強さはそんなでもないけど、3匹もいれば龍クラスくらいなら撃退してくれるはず。

宿屋にいた連中は、魔王の威圧を受けてるから滅多なことはしないだろうけど、人間金に目がくらむと何するかわかんないからね。

で、買い物である。

買うのは主に食料品。

それも、高級食材を惜しげもなく買っていく。

魔王金持ちやね。

しかし、さっきから視線が鬱陶しい。

街に入ってからずっと見られっぱなしだ。

私は見世物じゃないってーの。

あー、イライラする。

私のこと見てくる連中を皆殺しにしたい気分だわ。

……皆殺しはダメでも、厳選すればよくね?

向けられる視線の中から、邪なものを感じ取る。

魔王が買い物に夢中になっている間に、その視線の主から逃げるように路地裏に入る。

路地裏の店を冷やかしながら、さりげなく、人気のない場所に歩いていく。

慣れない街で道に迷ったかのように。

完全に人気のない場所に出ると、無言で襲われた。

と、同時に襲撃者の首が飛んだ。

斬糸を軽く振っただけなんだけど、襲撃者はなんの抵抗もできずに絶命した。

呆気なさ過ぎてイライラの解消にもならなかった。

コイツがなんの目的で私を襲ったのかはわからんけど、捕まえて奴隷に売るか、人質にして魔王を脅す材料にするか、性欲の捌け口にするか、そんなところでしょう。

ストレス発散にも役に立たなかったクズだけど、せっかくだからその血液は採取しておこう。

メラに飲ませるものだけど、そろそろあいつには自力で血を集めてもらわないとなー。

魔王も気に入ってるし、吸血っ子のおまけで面倒見てやってるけど、ぶっちゃけ私あいつに興味ないし。

手早く作業を終え、死体を分体をストックしてある異空間に放り込む。

異空間で分体が死体を食い始めたのを感じ、魔王のところに引き返した。

しかしこれは早めになんとかしないとな。

人がたくさんいるところに来るだけでこんなにイライラさせられるんじゃ、いつ爆発するかわかったもんじゃない。

黒のこともあるし、なんとか皆殺しは我慢するけど、気分は最悪だ。

「ふう、買った買った」

無駄なことしているうちに魔王の買い物が済んだらしい。

「終わり?」

「うん。今日のところはこんなもんでいいでしょ」

「食材だけ買ってどうするの?」

「ん?私が調理するんだよ?」

何?

てっきりこの街の一流シェフでも呼びつけて料理させるのかと思ってたら、魔王がやるの?

「ふふふ。伊達に長生きしてないからね。言っておくけど私の料理の腕はそんじょそこらの料理人よりも数段上であると断言させてもらおう」

ほう。

よろしい。

ならばその腕、見せてもらおうじゃないか。

宿屋に戻った魔王は宿の厨房を貸切、調理を始めた。

私は先に部屋に戻って今か今かと料理が完成するのを待った。

3時間かかった。

宿屋のスタッフの力を借りて、魔王が料理を部屋に運んできたのは3時間後だった。

待った。

ずっと待った。

ここまで我慢した私偉い。

寝てた吸血っ子が匂いにつられて起きたので、全員でテーブルに着く。

「では、いただきます」

「「「いただきます」」」

待ちに待った料理に手を付ける。

まずは魚から。

!?

う、美味い!

口に入れた瞬間広がる濃厚なソースの味。

マヨネーズに近い味だけど、もっと上品でまろやかな味わいだ。

そして、その濃厚な味にも関わらず、しっかりと魚本来の旨みがにじみ出て、ソースと絡み合っている。

生まれて初めてこんな美味しいもの食べた。

ああ、考えてみたら、私って普通の料理って食べたことないや。

お供え物でもらったことがあるのは果物とかお菓子の甘味だけ。

こうして、毒もないちゃんとした料理を食べるのは、ホントに生まれて初めてなんだ。

そう思ったら、泣いてた。

一口ずつ味わいながら食べた。

ちょっと涙でしょっぱくなったような気もしたけど、その分お酒が進んだ。

おはようございます。

あれ?

私いつの間に簡易ホーム作ってたっけ?

ベッドを中心に白い繭で覆われていた。

というか、いつの間に寝たっけ?

んー?

記憶が飛んでるな。

魔王の手料理に感動して食べてるのは覚えてるけど、途中からの記憶がない。

酔っ払って寝ちゃったのかな?

とりあえず起きる。

簡易ホームから出ると、魔王がとてもいい笑顔で出迎えてくれた。

「白ちゃん。電光機関開放!」

魔王がなんか白く輝く。

同時に繰り出される拳が私の体に何度も突き刺さる。

「歯を食いしばれ!」

ゴフッ!?

あ、朝から何なんだ。

ガクッ。