軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルフの里攻防戦⑦

【ポティマス】

「来たか」

「は、はい」

「迎撃。あれを出せ」

「はい。数は?」

「全部だ」

「はい?」

「全部出せ」

「全部ですか?」

「そうだ。フィリメスと勇者がいる部隊付近以外の全方位にばら撒け」

「しかし、それは戦力過剰ではありませんか?」

「結界が破れた原因が不明だ。そして、私の考えが正しければ、逆に戦力不足だ」

【ロナント】

「なんじゃ、これは?」

儂は思わずそう口に出していた。

そこには異様なものがいた。

『鑑定不能』

儂の人生の中で、鑑定が失敗したのはこれで2度目。

1度目はあのお方。

しかし、そのときは『鑑定不能』ではなく、『鑑定が妨害されました』と表示されたはずじゃ。

つまり、目の前のこれは儂の人生において初めて遭遇する未知なるものということになる。

儂の目の前には、破壊された金属の鎧のようなものが複数転がっておった。

ような、というのは、それが明らかに人が着ることを前提にしていない形状だったからじゃ。

腕が4本あり、足も4本。

この時点でおかしいじゃろうに。

ハッ!?

8本足じゃと!?

まさかあのお方をリスペクトしておるのか!?

いや、ないのー。

こんな無骨なもの、あのお方の美しさを一片たりとも表現できておらん。

もしこれがあのお方の姿を模したものなら、侮蔑も甚だしいのう。

しかし、これはいったいなんじゃろう?

壊されておるが、壊される前は動いておったのか?

称号「人形遣い」はスキルの念動などと合わせて人形を意のままに操ることができるようになるというが、これはその人形の1種なのじゃろうか?

人形遣いという物自体が希少で、儂も実物を見たことがないから確たることは言えんのう。

しかし、ここにこうして破壊されたものが散乱しておるということは、儂らより先にこの場を通ったものがいるということじゃ。

そのものが結界を破壊した人物に違いない。

見たこともない人形に興味が湧くが、今はその人物の後を追うべく先を急ごう。

儂がそれを避けることができたのは、本当にただの偶然だった。

否、避けてなどいない。

ただ、人形を座って眺めていた姿勢から、気持ちを切り替えて立ち上がった。

その動作に偶然救われたに過ぎない。

腰を曲げながら立ち上がった、その瞬間、何かが儂の腹の前を通過していった。

衝撃だけで儂の体が後ろに吹き飛ぶ。

その何かが通過した位置は、儂が直前まで座っていた、ちょうど頭部に当たる場所じゃった。

「老師!?」

「下がれ!」

儂は吹き飛んだ勢いのまま地面を転がる。

撤退を促す叫ぶ声も虚しく、儂の部下たちが血を爆ぜさせながら吹き飛んでいく。

それは、まさに爆ぜるという言葉通りの光景だった。

部下たちの手足が吹き飛び、胴体が抉れる。

視認もできない謎の何かが通過していくたびに、部下たちが無残に死んでいく。

儂はその何かが飛来してきているであろう地点を見る。

そこには、まだ破壊されていない、先ほどの人形と同じものがいた。

その人形の腕に備え付けられている、奇っ怪な形の筒から、その何かは飛び出しているようじゃった。

儂は即座に人形に向けて魔法を放つ。

手加減は一切しない。

じゃが、儂の放った火炎の矢を、人形はあっさりと回避してみせた。

まずいのう。

あの人形、儂よりも明らかに強い。

「総員、撤退!」

どうにかそれだけ叫ぶ。

生き残った部下がどれだけいるのかわからんが、とにかくあの人形と真正面から戦っては、今以上に被害が甚大になる。

馬鹿な弟子どもじゃが、1人でも多く生き残ってほしい。

そして、その弟子の命を奪ったあの人形を、この命に代えても壊してみせようぞ。

魔法を構築。

儂の生涯において、あのお方と出会ってからひたすら磨き続けた魔法の基礎。

基礎にして奥義。

作り出す炎の矢は数十。

それら全てを制御下に置き、放つ。

高速で飛来する炎の矢。

しかし、人形は半分以上を躱す。

そして、直撃した残りも、大したダメージを与えられていないようじゃ。

鎧に似せているだけあって、防御力も高いと見える。

さらに高速で動く機動力。

こちらの目には見えない謎の攻撃。

強いのう。

今まで戦った中で、あのお方に次いで強いかもしれん。

転移。

人形の背後に回り込む。

すぐさま魔法を構築。

人形の足元を凍らせる。

そして、追撃の風魔法による衝撃波。

凍った人形の足が半分砕ける。

それでも半分。

されど半分。

これで機動力はだいぶ落ちるはずじゃ。

人形の腕が関節の動きを無視するように後ろを向く。

ギョッとした瞬間、地を蹴って横に飛ぶ。

人形なんじゃから関節なぞどうとでもいじれる。

それを目の当たりにするまで理解できておらんかった。

その代償は、右腕と両足。

避けきれんかった。

しかし、ただではやられん。

苦痛を堪え、魔法を構築。

人形が再び儂に筒を向ける前に、魔法を完成させる。

獄炎魔法レベル4、陽炎。

拳大程の大きさの小さな火の玉。

それが、人形の体に当たる。

効果は一瞬。

されど、その炎はすべてを焼き尽くす。

陽炎は莫大な炎の力を、小さく圧縮した魔法じゃ。

儂がもっとも得意とする最上級魔法。

さしもの人形も陽炎の前にはその頑強な体を焼かれ、溶かされ、完膚なきまでに破壊される。

してやったり。

ニヤリと浮かべた笑みは、次の瞬間引きつった。

視界に、同じ人形が数体、動いているのが見えた。