軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2 どうやら私はモンスターらしい

さて、私が蜘蛛に転生してしまったことは、とても遺憾ながら認めよう。

認めはしたけど、このあとどうしよう?

ボリボリッ!

何やら不穏な音がする。

うん。

現実から目をそらせちゃ、ダメだ。

私の目の前には私のおそらく兄弟と思われる蜘蛛軍団がいる。

音を出すとしたら奴らしかいない。

そーっと視線を前に戻す。

ボリボリッ!

ホギャーッ!?

なにさらしとんじゃこいつら!?

えっ、食ってる?

共食いしてる!?

私の目に映ったのは、兄弟たちが血で血を洗う生存競争が始まっていた。

イヤイヤイヤイヤ!

まずいまずい!

どうして血を分けた兄弟で争わなければならないんですか!?

あ、餌ですね。

お腹減ったんですね。

私も実は結構お腹減ってます。

ハッ!?

いかんいかん。

また現実逃避してた。

こんな戦場にいたんじゃ、いたいけな女の子たる私はあっという間に男たちの毒牙にかかってしまう!

比喩でもなんでもなくまんまの意味で!

戦う

道具

逃げる ←

こういう時は三十六計逃げるにしかず。

戦う?

ムリムリ。

こちとら生粋の帰宅部。

あんなバイオレンスな連中と戦えるわけがないでしょ。

あ、今の私の姿はあいつらと同じだった。

うん。

無駄なこと考えてる暇があったら逃げよう。

ズンッ!

今度はなんだ!?

音と振動は背後から。

後ろを振り向いたらそこには、見上げるほど巨大な大蜘蛛がいた。

オゥ、マザーですか?

それともファザーですか?

いかんいかん。

また混乱してた。

というか、え、でかすぎでしょ!?

私の大きさの数十倍はありそうだ。

私の記憶が正しければ、地球上にそんな巨大な蜘蛛はいなかったと思うんですけど?

ヒョイ、パク。

あ。

大蜘蛛が小蜘蛛を爪の先でぶっ刺して食った。

お摘みを食べるみたいな感覚で。

マザー、貴様もか…!

考えるのは後だ。

今はここから無事逃げ出して、生き残ることを目指そう!

全速力で逃げた。

もう疲れて動けないってくらいになって、ようやく落ち着いた。

振り向いても蜘蛛軍団で追ってきてる奴はいない。

あー、死ぬかと思った。

生まれてすぐ死亡とかシャレにならん。

さて、人心地ついたし、ちょっといろいろ考えなきゃならん。

今の私は蜘蛛である。

それはもう認めないわけにはいかない。

そりゃね、人間には自分の身長を軽々飛び越える跳躍力も、壁を垂直に走破する技術もないはずだしね。

何の話かって?

逃走中の話だよ。

あんな蜘蛛がわんさか溢れてる場所で、正攻法に走って逃げることなんてできないでしょ。

例えて言うなら、特売に群がるおばちゃんを押しのけて行くようなもんだ。

なんという命知らずな行為!

いや、まあ、特売のおばちゃんのところに突っ込んだことはないけどさ…。

とにかく、私は逃走するとき、忍者さながらのジャンプに壁走りをして、あの蜘蛛包囲網から脱出した。

走ってる最中は、足がいっぱいあって違和感があったけど、もつれるようなこともなく、ちゃんと動かすことができた。

生まれながらの本能というやつだろうか?

うん、まあ、五体(?)満足で不自由なく動かせるというのはいいことだ。

で、私が蜘蛛だとして、さっき見た超巨大蜘蛛はなんなんだろう?

うーん。

状況を考えると、本当にあれが私の母親か父親だったんじゃないだろうか?

蜘蛛の生態なんてそんな詳しくはないけど、子供を食べちゃう親っていうのは、自然界にはいたはずだ。

あいつら、生まれた瞬間から共食い始めるような種族だし、親が子供を食ってもそんなに不思議じゃない気がしてくる。

本当にあの巨大蜘蛛が親なのだとしたら、いつかは私もあのサイズになるってことかな?

考えたらちょっと気持ち悪くなった。

いや、蜘蛛って益虫だし、人様の役に立つっていうことは、前世の私よりむしろプラスなんじゃなかろうか?

あれ、おかしいな、なんだか悲しくなってきたよ…。

あー、いかんいかん。

横道に逸れた考えを戻そう。

あの巨大蜘蛛、私の体の大きさと比較すると、とんでもない大きさになる。

私の体の大きさがわからないから、正確なサイズはわからないけど。

もし私のサイズが指の先くらいの、本当に小さな小蜘蛛ならいい。

それならまだ、あの巨大蜘蛛も納得できるサイズに落ち着く。

それでもタランチュラクラスの大きさになるけど。

けど、もし私のサイズがもっと大きかったら、あの巨大蜘蛛は少なくとも地球では発見されていない種になる。

未発見の新種、ならまだいいんだけど、転生なんてファンタジーな体験をしてしまった手前、楽観的に考えるのはよくないよねー。

それを確かめるためには、私のサイズを知るのが手っ取り早い。

何か、私と大きさの比較になるものはないかな?

周りを見回す。

ここはどうやら大きな洞窟の中らしい。

明かりはないけど、薄暗い程度の感覚で視界は良好。

キョロキョロ辺りを見回す。

お、こ、これは!

地面にあったもの、それは人の足跡だった。

おお!

何人か分の足跡がくっきりと残ってる!

つまり、ここには人が来てるということだ。

というか、ちゃんと人が生きてるということだ。

人がいるということには感動した。

けど、それとは逆に、ちょっと、いや、かなーりやばい事実に気づいてしまった。

私の体は、人の足跡よりもはるかに大きかった。

うん。

この足跡の人たちの身長を170センチくらいとすると、私の大きさは、体長1メートルくらい、かな…。

ああ、うん。

あの巨大蜘蛛を見た時から薄々そんな気はしてた。

今の私はどう考えても地球に生息してる蜘蛛じゃない。

つまり、ここは地球とは異なる異世界で、私はというと、どう贔屓目に見てもモンスターですありがとうございます!