軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12 感動の再会(笑)

あー、お腹減った。

けど、網に獲物が引っかからないことには食事もできない。

仕方がないから寝よう。

寝て体力を温存するんだ。

うん、決して怠惰を貪ろうとか思ってないよ?

思う存分寝てやろう、と思っていたのに、私は強制的に起きる羽目になった。

網に括りつけた糸から、振動が伝わってきたからだ。

獲物がかかったのかな?

という喜びは、次の瞬間焦りに変わる。

糸で繋がった網の様子は、手に取るようにわかる。

その感覚が伝えてくるのは、今までにない感触だった。

何かが網に触れている。

それは確実だ。

けど、網に引っかかってるわけじゃない。

だって、それは、網の上を歩いているのだから。

ありえない。

網を壊して来る奴がいるかもしれないとは思ったけど、網の上を平然と歩いてくるやつがいるなんて想像もしていなかった。

予想外のことに混乱して、動き出すのが遅くなった。

そいつは既に網を乗り越えて、マイホームのテリトリーの中に侵入してきていた。

やばい。

網を突破してくるような奴がいたら、迷わず逃げようと決めていたのに、私はそいつと対面してしまった。

迂闊だった。

寝起きで頭が働いていなかったのと、予想外のことで混乱していた。

マイホームに引きこもってから、初めて感じる命の危険。

『スモールレッサータラテクト』

現れたのは、私と同じ、蜘蛛のモンスターだった。

同じ種族故に、私の網を難なく突破してきたのだ。

ハローブラザー。

多分だけど、こいつは私の兄弟だと思う。

兄だか姉だか弟だか妹だかは知らないけど。

生き別れの兄弟と感動の再会。

ただし命の危険あり。

待て待て待て。

落ち着け私。

まだこいつが敵だと決まったわけじゃない。

生まれてすぐ共食いするような魔物でも、もしかしたら兄弟のよしみで見逃してくれるかもしれない。

キチキチキチ。シャーッ!

あ、うん。

敵確定。

ただ、威嚇はしてくるけど、まだ襲いかかっては来ない。

あっちもこっちの様子を見ているみたいだ。

どうする?

逃げるのは、あんま得策とは言えない。

私と同じ種族ということは、私と同じくらいの身体能力を持ってるってことだ。

今までは逃げ足の速さでなんとかやり過ごしてきたけど、同じ速さを持った相手に逃げ切れる保証はない。

それに、追い駆けっこになった場合、逃げきれてもその後の安全に不安がある。

マイホームの外は魔物の脅威で溢れているんだから。

今の空腹の状態で、全速力で逃亡して体力を消耗して、その上で安全の確保できない外に放り出される。

新しく新居を作るにも体力を消耗するし、何よりもいい条件の立地を探さなければならない。

ヘロヘロになった状態で、そんな立地を探して彷徨うのは自殺行為だ。

考えるだけでも恐ろしい。

じゃあ、どうするかというと、こいつを倒すということになる。

できるかな?

ちょっと分が悪い気がする。

同じ種族なんだから、身体能力の差はそんなにないはず。

あくまでレベルが同じなら、の話だけど。

こいつが私と同じ時期に生まれた兄弟なら、レベルの差はそんなにないはずだ。

多分同じか、1くらい高いかもしれない。

なんせコイツは私が避けてきた外を、踏破してここまでたどり着いてるんだから。

レベルは私より上だと思っておいたほうがいい。

最悪のパターンは、コイツが私よりもずっと前に生まれてた、古株だった場合。

その場合確実に私よりもレベルは遥かに高いはず。

私が将来目指している、外を大手を振って歩けるレベルに到達してるってことなんだから。

まず勝ち目はない。

どっちにしろ生きるか死ぬかの戦い。

なら、相手の強さはもう考えない。

自分の最善を尽くす。

それでもダメだったら、そのときはこの短い蜘蛛生が終わるだけだ。

死ぬのは嫌だけど、転生なんてものがあるんだし、死後の世界も割と捨てたもんじゃないかもしれない。

覚悟を決めよう。

戦いのために集中する。

思考をクリアに。

眼前の敵だけを見据える。

敵も私が臨戦態勢に入ったのを理解したらしく、身構える。

わずかに重心が後ろに傾いている。

それは、まるで助走をつけるためのようで。

私の読み通り、敵は勢いよく飛び出した。

ジャンプして。

空中で大きく前足の爪を振りかぶる敵に、私は、哀れみの視線を向けた。

私は後ろにバックステップすると同時に、空中に居る敵に向かって糸を発射する。

コイツは選択肢を誤った。

逃げ場のない空中に自ら飛び上がり、尚且つ私たちの最大の武器である毒牙ではなく、爪による攻撃を選択した。

爪の攻撃も悪くはない。

悪くはないけど、あくまでそれは牽制に使うべきだ。

主武器にするようなもんじゃない。

私たちの武器は糸と毒牙。

それを理解していないコイツに、私が負けるはずもなかった。

空中で私の糸にあっさりと捕まる兄弟。

そのまま糸に絡まり、あっさりと地面に墜落する。

私はすぐさまそこに駆け寄り、

ガブッ!

毒牙を容赦なくその体に食い込ませる。

私がそうだったように、コイツにも毒耐性がついてるはずだ。

けど、そんなものは関係ない。

糸に拘束された時点で、勝敗は決している。

あとは、毒耐性を上回るだけの量の毒を注ぎ込んでやればいいだけ。

《熟練度が一定に達しました。スキル『毒牙LV2』が『毒牙LV3』になりました》

大量の毒を流し込み続けたおかげか、毒牙のスキルレベルが上がった。

それとほぼ同時に、兄弟の息の根が止まる。

兄弟、君のことは忘れない。

初めてマイホームに侵入してきた愚か者として。