軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

S13 聖女と剣帝

入学式は問題なく終了した。

この後はそれぞれ解散となり、たいていの生徒は新しく暮らすことになる寮に戻るか、学校の見学に乗り出すことが多い。

この学園は全寮制となる。

それは俺も例外ではなく、この学園に通う間は寮に住まなければならない。

学園の敷地から外に出ることは、よっぽどのことがない限り、長期の休暇以外ではなくなる。

「このあとはどういたします?」

カティアがお嬢様モードで話しかけてくる。

俺たちはもう寮の準備は全てできている。

できれば学校の敷地の方を見ておきたいところだけど。

「先生会っておきたい人がいるのでぇー、皆さんも一緒に行きますぅー?」

「会っておきたい人ですか?」

「はいぃー。未来の聖女さんと剣帝さんですぅー。会って損はないと思いますよぉー」

聖女と剣帝。

聖女といえば、隣国の聖アレイウス教国の象徴的存在だ。

勇者の対とも呼ばれ、国から任命された代々の聖女は、勇者とともに行動することが義務付けられる。

ユリウス兄様にも、今代の聖女が付き従っていたはずだ。

そして剣帝とは、カサナガラ大陸の人族最大国家、レングザント帝国の帝王その人のことを言う。

レングザント帝国は魔族領と接しており、戦いが絶えない国だ。

その国の帝王ともなれば、強いことが第一条件。

そのことから、代々の帝王は、初代帝王の異名をそのままに、剣帝と呼ばれることになったという。

聖女の方は素質のある候補の中から選ばれるというが、剣帝の方は完全に血筋。

つまり、この学園に現剣帝の息子が在籍しているということか。

「ああ、レングザント帝国の王太子ですわね。噂は聞き及んでおります。確か今年私たちと同じようにこの学園に入学するそうですわね。なんでも初代を彷彿とさせるような剣の天才だとか」

え、カティア知ってるの?

俺全くそんな情報知らないんだけど?

「シュン、あなたはもう少し世情というものを知りなさい」

俺の顔で何かを察したのか、カティアは呆れた顔でそう言ってくる。

ぐ、反論できない。

「けど、先生。先生がわざわざお会いになるということは、そういうことですの?」

「そういうことなのですよぉー」

「では、会わないわけにはまいりませんね」

何やら二人の間だけで話が進んでいく。

俺とスーは話についていけず、そのやりとりを眺めるだけだ。

「さあシュン、行きますわよって、何です? その顔は?」

「いや、話についていけなくて…」

「スーはともかく、どうしてあなたは…」

カティアと先生が同時に残念なものを見るような顔になる。

そ、そんな顔をしなくてもいいじゃないか。

「あ、こっちから出向く必要はなくなったみたいですぅー」

先生の言葉につられてそちらの方を見れば、少年と少女がこちらに近付いてくるところだった。

少年の方は黒に近い茶髪に同じ色の瞳を持つ、精悍な顔立ちをしていた。

少女の方は波打つ金髪に碧眼の、どこか神秘的な可憐さがあった。

「よお。そのちっこいエルフが岡ちゃん?」

「夏目くん。先生に対して失礼だよ。お久しぶりです先生」

少年と少女は 日本語で(・・・・) 話しかけてきた。

それでようやく先生とカティアの会話の内容が理解できた。

この二人は、俺たちと同じ転生者だ。

「お久しぶりですぅー。夏目くんも長谷部さんも元気そうでよかったですぅー」

先生の言葉で、この二人の元の名前がわかる。

少年の元の名前は 夏目健吾(ナツメケンゴ) 、クラスの中では男子の中心のような存在だった男だ。

ただ、俺はこの夏目があまり好きではなかった。

運動神経が良く、腕っ節が強い。

実際に暴力を振るうようなことはしなかったが、その力をチラつかせて周りに言うことをきかせる。

そんな押しの強い性格だった。

だからクラスの中には、夏目に従う人間と、反発する人間とがいた。

俺はその反発する側の人間だった。

まあ、反発するといっても極力関わらないようにするくらいしかしてないけど。

「はは!岡ちゃん元々ちっちゃかったけど、なおさら縮んでんじゃん! ウケる!」

「夏目くん!」

夏目をたしなめるのは元隣の席だった 長谷部結花(ハセベユイカ) だ。

長谷部は夏目と違って、可もなく不可もない、そんな感じの女の子だった。

ちょっと流されやすい性格だったはずだけど、聖女候補と言われるほどの何かを秘めていたかと言われると、あまりピンと来ない。

「エルフだからちっちゃいのは仕方ないんですよぉー。それにぃー、今は夏目くんも大差ないじゃないですかぁー」

「俺はこれからガンガン伸びてくからいいんだよ。でよ、そこにいるの、この国の王子だろ? 中身誰よ?」

夏目の視線が俺に向く。

その目は獲物を見据えるような、獰猛な光が宿っている。

今にも襲いかかってきそうなギラギラした光だ。

こいつ、前世では確かにいけ好かないやつだったけど、ここまで危ない目をする奴だったか?

「山田俊輔だ」

「大島叶多だ。久しぶり」

手短に答える俺と、自分をアピールするようにわざとらしく前に出るカティア。

「え? 大島くん?」

「そうそう。俺大島。びっくりだろ? 生まれ変わったら女になってんの」

カティアの誘導に、長谷部が食いつく。

そこから話が盛り上がり、夏目の視線は俺から逸らされた。

サンキューカティア。

なんにしても、夏目、今の名前はユーゴー・バン・レングザンドは要注意だ。