軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第143話 思い出の積み重ねと風宮のダンジョン

鎌鼬の庭ダンジョンを出ると雪が舞っていた。

ボムズではあまり降らないために雪を見ると少しテンションが上がる僕。

カッターまでの帰り道、ミカと手を繋ぎながら歩いた。

家に帰り着替えてから冒険者ギルドに行く。ギルド長が僕たちにすぐに会いたいと言っているそうで、魔石の納品と武器の鑑定をカルタさんに任せて2階のギルド長室に向かう。

ギルド長室のドアをノックすると女性の声で応答がある。ドアを開けると30過ぎに見える女性がデスクに座っていた。

「冒険者ギルドカッター支部のハートだ。カッターへようこそ! Bランク冒険者が2人も来てくれて嬉しいよ」

ハートさんは満面の笑みで迎えてくれた。

「冒険者のアキ・ファイアールとミカ・エンジバーグです。2週間ほどの滞在になると思いますがよろしくお願いします」

ハートさんに勧められて応接セットのソファに座った。

「2週間ほどとは少しだけ残念だ。今日は早速ダンジョンに行ったのかな?」

「鎌鼬の庭ダンジョンに行ってきました。カーサスだけでしたので制覇をしてきましたよ」

「何と! 鎌鼬の庭ダンジョンをもう制覇したのか! あそこのカーサスは速すぎて冒険者が皆んな切り刻まれてしまうのに。さすがにBランク冒険者だな」

驚きの声を出すハートさん。僕は知りたい事を確認する。

「実はカッターのエルフ排斥運動がどの程度のなのか知りたいのですが。私のパーティメンバーにエルフがいるためです。そのエルフの仲間はBランク冒険者になりましたがカッターに入って問題はありませんか?」

少し驚いた顔の後に真剣な表情になるハートさん。

「うーん。まだエルフ排斥運動は街中でもあるなぁ。冒険者ギルドとしてはBランク冒険者のエルフなら守る義務が生じる。エルフ排斥運動はエアール公爵家が主導で進めたものだ。私の方からエアール公爵家に話をしてみよう。調整に時間が少しかかると思うが待っていてくれ」

ギルド長のハートさんの言葉を聞いて、僕は何とかなりそうな感じを受ける。その後は雑談をしてギルド長室をあとにした。

冒険者ギルドのロビーに行くとニコニコ顔のカルタさんと大勢の冒険者が僕たちを歓迎してくれる。

冒険者達は鎌鼬の庭ダンジョンを制覇した事を称賛し、僕の肩を次々と叩いていく。もう少し力加減を考えて欲しい。

カルタさんは魔石の大量納品に喜んでいるようだ。

鑑定を頼んでいた刀を渡された。

鑑定結果は【飛燕の刀】。特殊効果は斬撃を飛ばす。

魔力を込めて刀を振るとエアカッターの魔法の様に斬撃が飛ぶようだ。

蒼炎以外の遠距離攻撃になるな。早速、明日ダンジョンで試してみよう。楽しみができたね。

12月24日から12月29日までは毎日、鎌鼬の庭ダンジョン制覇をして過ごす。

【飛燕の刀】は魔力を込めると「ブン!」と軽く音がする。その状態で刀を振ると前方に三日月形の緑色の斬撃が飛ぶ。有効距離は30メトルはありそうだ。

今のところ鎌鼬の庭ダンジョンの宝箱からは【飛燕の刀】しか出ていない。きっと宝箱を開ける時に僕が考えた踊りを踊ってないせいだと少しだけ思っている。

12月30日と1月1日はダンジョンには行かず休みにした。去年と同じようにミカと2人でゆっくり過ごす予定。

家のリビングでミカと2人で今年1年あった事を話し合う。

本当にミカは笑うようになったなぁ。以前は僕に対してオドオドした態度があり、敬語を使う事もあったけど、今はそんな事も無くなった。完全に奴隷という関係から脱却して冒険者仲間になっている。

ミカとは【白狼伝説】の話で盛り上がる。楽しく会話していた2人の間に一瞬間が生じた。

ミカはこちらを見ている。僕もミカを見ている。

気がつくと唇が触れ合っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1月1日の朝。当たり前だが1年最初の朝である。朝起きて目を開ければ、それが1年最初に見るものである。

今年も最初に見たものは白い肌だった。

眼福、眼福。今年も良い事がありそうだ。

外に出ると少しだけ雪が積もっていた。

白い雪が街を包んでいる。僕は昨日ミカの白い肌に包まれた。

雪とは違い暖かかったけど。

カッターでは1月1日に風を祀るお祭りがある。ボムズでは火を祀っていたな。

ミカと2人でお祭りを見に行った。

屋台で買い食いし、お祭り名物のスライム釣りがやっている。

今年も熱くなる僕。横でミカが笑う。去年と同じ光景だ。

こんな思い出を2人で積み重ねていきたい。僕はそう強く思った。

夜はミカと自然と肌を合わせていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【1月2日】

一度、風宮のダンジョンを見学に行くことにしている。

Bランクダンジョンである風宮のダンジョンはカッター西門より3キロルほどの距離だ、

出てくる魔物はBランクモンスターの台風馬。緑色の馬である。額には一本の立派な角が生えている。大きさは馬とあまり変わらない。ただし速度が段違いのようだ。いななきと共に風属性の魔法を使うらしい。

台風馬は圧倒的なスピードの突撃で冒険者を跳ね飛ばし、風魔法で切り裂く。結構厄介そうなモンスターとの情報。

弱点は金属性である。

動きが速いため、蒼炎の魔法が使いにくい。

弱点の金属性の装備は持っていない。ミカの金属性の魔法である【反撃】なんかは使えるかな? 【障壁】で突撃を受け止める事ができれば接近戦でも戦いやすそうだ。

武器は【昇龍の剣】と【鳳凰の剣】、【飛燕の刀】を試してみる事にする。

風属性は金属性以外はそれ程苦手じゃないため、少し不安だ。

風宮のダンジョンまでは歩いて移動する事にした。少しだけ積もった雪を踏みしめながら進む。

カッターの西門を抜けて3キロルほど進むと風宮のダンジョンの入り口が見えてきた。

風宮のダンジョンに入った

宮殿のような景色が広がる。やはり風宮のダンジョンの中は水宮のダンジョンと火宮ダンジョンと造りはほとんど変わらない。

壁は煉瓦風で緑色に光っている。通路は高さは10メトルほど、幅は40メトルくらい。

ここも水宮のダンジョンと火宮ダンジョンと変わらない大きさだ。両脇は10メトルくらいの草原になっている。

中央は土の道があり20メトルくらいの幅だ。

ダンジョン内に軽い風が流れていた。

その風がミカの髪を横に流している。ミカが髪をかき上げる。

その何気ない仕草に色気を感じ、僕はドギマギした。

前方60メトルほど前に台風馬が3頭いる。こちらに気がつくと真っ直ぐ向かってきた。

凄い迫力だ! 速い!

ミカが素早く呪文を詠唱する。

【金剛の心、我らを守護する壁となれ、障壁!】

ミカの前方に3メトル四方の淡く光る障壁が出現する。

台風馬はその障壁に真っ直ぐぶつかり昏倒した。

僕は障壁を周り込み、【昇龍の剣】で斬りかかる。倒せないほどでは無いが結構硬い。

ミカは【飛燕の刀】で斬りかかっている。やっぱり硬そうだ。

僕は急いで【鳳凰の剣】に持ち替え、最後の一頭に斬りつけた。【昇龍の剣】よりは刃が通る。

しかしその瞬間、台風馬の身体が1.2倍ほどに膨らんだ。

慌てた僕がもう一度斬りつける前にミカが大きくなった台風馬にトドメを刺した。

台風馬には金属性の障壁の魔法は効果的だった。しかし武器の方は何とも言えない。

【昇龍の剣】と【飛燕の刀】はイマイチ。

【鳳凰の剣】は、それより刃は通るが台風馬を強くする。

完全に属性の相性のせいだ。

このまま風宮のダンジョンを進む事はできそうだがボスモンスターには手こずりそう。

苦戦なら問題無いがパーティの全滅も考えられる。魔石を拾っているミカに話しかける。

「ミカ、どう思う?」

「そうね。進むだけなら何とかなりそうだけど、ボスモンスターには厳しいかも」

「僕もそう思うよ。金属性の装備を集めてからここには来ようか。今日は終了だね」

今日は戦闘1回で帰宅する事にした。帰宅するとカルタさんがギルド長が呼んでいると告げられる。そのまま冒険者ギルドのギルド長室に行った。

応接セットのソファに座ると、ギルド長のハートさんが話を始める。

「まずはカッターでの魔石の納品ありがとう。おかげでカッター支部の収益が上がって助かっているよ。今日呼んだのはこの間の件についてだ」

そう言ってハートさんはお茶を一口飲む。

「エアール公爵家と話し合った結果、ヴィア・ウォレットという女性のエルフだけは街の中に入る事を了承された。ただ街の中では君と行動を共にする事を義務付けされた。君は水色の髪色で目立つからな。街に出す通達の内容は【水色の髪の少年といるエルフには手を出さないように】となる予定だ。不便はかけるがこれが限界だったよ」

ハートさんから結果を聞き、結構エルフ排斥運動は根深いものを感じる。

それでもヴィア主任がカッターで活動できるなら良いか。

「ギルド長、お手数をおかけしてありがとうございました。準備が整えば、またカッターに来る予定です。その時はよろしくお願いします」

そう言ってギルド長室をあとにした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1月3日から1月6日までは鎌鼬の庭ダンジョンの制覇をしてカッター遠征は終了した。

カッターに来てから全然蒼炎の魔法を使ってないなぁ。宝箱の中身は全て【飛燕の刀】だった。 解(げ) せぬ。

少し早いが1月7日に王都に向けて出発する予定だ。

専属のギルド職員のカルタさんからは真剣な表情で、「またいつでも来てください!」と言われる。臨時ボーナスでも出たのかな?

今後も毎年、年末年始はミカと2人で過ごそうと思えたカッター遠征となった。