軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 悲恋の魔法と送別会

ヴィア主任が僕の冒険者パーティに入る事が決まると、オウカさんがエンバラの里から少し離れた森に僕たちを連れてきた。

少し歩くと祠があった。

オウカさんは祠を開けて、ヴィア主任を呼ぶと中を見るように指示する。

横から確認すると石碑が入っているようだ。

オウカさんは説明してくれる。

「この石碑はソフィア・ウォレールが晩年開発した魔法の文言が刻まれている。風の属性を色濃く持っているエルフならば問題なく発動できるはずだ。効果は火魔法の威力を上げてくれる。しかし通常の火魔法だとその火が逆に消えてしまって意味が無いものになる。単体で唱えてもそよ風が吹くだけだ。蒼炎と併用する事だけを念頭にした魔法だ」

ヴィア主任が石碑を見ながら呪文の文言を読み上げる。

【風は愛、火と 目合(まぐわ) い激しく狂え、烈風!】

軽いそよ風が吹いた。

オウカさんが説明してくれる。

「エルフと人間の恋は 悲恋(ひれん) になる。子供が殆どできないし、生きてる時間が違い過ぎる。これはウルフ・リンカイに対するソフィア・ウォレールの心が感じられる呪文だ。ウルフ・リンカイが作った蒼炎。その蒼炎と激しく愛し合いたい。魔法だけで良いから一緒になりたい想いが詰まった魔法だ」

僕は2,000年前の 悲恋(ひれん) について心を馳せた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

エンバラを発つ予定は明日にした。今日は僕たちの送別会を開いてくれている。

ヴィア主任の僕達の冒険者パーティ参加を受けて、オウカさんは上機嫌だ。

ずっと僕に話しかけてきた。

シニアさんはヴィア主任にこれからの注意を事細かに話している。もうあれは説教だな。

そう思い夕食を食べていたが最後に疑問に思った事をオウカさんに聞いてみた。

「蒼炎の開発者の説明の時とダンジョンの事を説明してくれた時に、【憎きカフェ・ウォータール】って言ってましたがカフェに対して何かあるのですか?」

「なんじゃアキ殿は【白狼伝説】を読んでいないのか? ソフィア・ウォレールとカフェ・ウォータールは犬猿の仲だ。ソフィア・ウォレールからカフェの子孫とは仲良くするなと伝えられている。だからエルフはその子孫の街であるアクロには余程の事が無いと行かないな」

「【白狼伝説】ではカフェは家名を持っていません。ウルフもガラムもです。ソフィアだけウォレールの家名を持っています。オウカさんはカフェの家名をウォータール、ガラムの家名をアイアールと言いました。今のウォータール公爵さんやアイアール公爵家とは関係があるのですか?」

「どちらも子孫だな」

あっさり答えるオウカさん。近くの紙に書いて説明してくれる。

・リンカイ王国→ウルフが祖先

・ウォータール公爵家→カフェが祖先

・アイアール公爵家→ガラムが祖先

・ファイアール公爵家→ウルフの次男が祖先

・エアール公爵家→ソフィアが目をかけた少年が祖先

「まぁこんなもんかな。ここエンバラにはウルフやカフェ、ガラムが亡くなった後もソフィアが生きていたから、結構その頃の歴史が残っているんじゃ」

陽気に話をするオウカさん。

「ソフィア・ウォレールに頼まれた事は、蒼炎の魔法の使い手のパーティに自分の子孫を入れる事。次がエアール公爵家を見守り大切にする事。最後がカフェの子孫とは仲良くするなじゃ」

少し悲しげな雰囲気になるオウカさん。ゆっくりと話を紡ぐ。

「2番目のエアール公爵家を見守り大切にする事があるから、先代のエンバラの長の一家は皆殺しにされてしまったがな。私の夫もその時に亡くなったよ」

そう言ったオウカさんは「湿っぽい話はいらないな。楽しい話をしよう」と言って違う内容の話を始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

送別会の次の日の早朝、僕たちはエンバラの里を出発した。森を出た先の小さな町に馬車を用意してくれたそうだ。先導は行きと同じエルフの人が2人で務めてくれている。

行きの時は難儀した森の道だが、帰りは慣れてきたのか夕方になる前に町に入る事ができた。

今後の予定をヴィア主任とミカとサイドさんと話し合う。

ヴィア主任が開口一番言ったことはレベルについてであった。

「私が君達のパーティに入ると1番の問題が私の実力不足だ。君達とのレベル差がありすぎて足を引っ張る事になる。さすがにBランク冒険者と比べられると厳しいからな」

僕がヴィア主任に確認する。

「ヴィア主任の冒険者ランクはいくつ何ですか?」

「Dランクで、もう少しでCランクかな。Eランクダンジョンを主戦場にしていたからな」

Eランクダンジョンが主戦場でもう少しでCランク!?

確かE級魔石は1つ100ギルドポイント。

Dランク冒険者からCランク冒険者に上がるために必要なギルドポイントは3百万。

3万個のE級魔石必要じゃん。

ヴィア主任は冒険者歴何年なんだろ?

「まずは君達の力量まで私が追い付く事が大切だ。君達はステータスカードを持っていたからレベルという数値が確認できていた。普通は確認などできない。一応、モンスターを倒すと強くなる気がするといった具合いだ。君達の経験を聞きたい。モンスターを倒すと強くなっていくのか?」

なるほど、僕達はステータスカードがあったからなぁ。普通はレベルなんて見られないもんな。

「確かにモンスターを倒すとレベルが上がります。多くのモンスターや強いモンスターを倒すと上がりやすいです。剣術レベルなどは鍛錬でも上がりました」

「なるほど、母さんが言っていた事を考えるとモンスターはエネルギーのゴミである 醜(しゅう) 気が集まり発生する。ただモンスターは魔石に変わるように、エネルギーの塊に変化している。モンスターを倒すとそのエネルギーの一部が倒した者に流れ込む感じかもな」

ふーん。そんなものなのか? 気にした事が無かったな。

「後、ステータスカードで経験値の分配を設定できるとも言っていたよな。状態の項目を触ると【経験値分配】を選択できるようになったと。ステータスカードの状態の項目は、主人と隷属が記されてあったはずだ。これは隷属の魔法で主人と奴隷が繋がっているから【経験値分配】ができたと思っている。あくまで仮定だけどな。今回考えてみたいのがモンスターを倒した時に誰に経験値が入るのかってことだ。モンスターの生命力をたくさん奪った者なのか、とどめを刺した者なのか、それとも1番近くにいた物なのか? 1番近くにいた者は余り考えていない。アキくんはいつも遠くからの蒼炎の攻撃だったからな。それならば前衛にたくさんの経験値が入るはずだ。生命力をたくさん奪った者と、とどめを刺した者の可能性が高いと思っている」

ここでヴィア主任は一度言葉を止め、僕たちを見渡し提案する。

「今は冒険前日に体力測定をして、冒険後の体力測定で確定させていきたいと考えている。君達の協力が不可欠だけどな。私のレベルを上げる効率的な方法として情け無い事だが君達の力を借りたい。Dランクダンジョンでオウガを倒すのは相当厳しい行為だからな」

蒼炎の魔法もなく、ダンジョン産の装備が無いと確かに厳しそうだ。

それならダンジョン産の装備で相性が良く近距離攻撃に適しているのは……。

「ヴィア主任は剣は使えるんですよね。それなら効率と安全を考慮するとボムズの焦土の渦ダンジョンが良いと思います。【昇龍装備】で攻撃も守備も完璧です。火宮のダンジョンも良いんですけどイフリートは飛びますので」

「剣はレイピアのほうが良いが、普通の剣も問題無く使える。やっぱり君達は規格外だな。Cランクダンジョンが安全だなんて。悪いがレベルが上がるまで付き合ってもらうぞ」

こうして王都に一度戻ってからボムズ行きが決まった。