軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第113話 ヴィア主任の仮定からの推論

朝、いつものようにヴィア研究室のドアを開ける。昨日と同じようにヴィア主任が起きていた。研究が忙しいのかなっと思っていたがヴィア主任に声をかけられる。

ヴィア主任は1つの魔法陣を持ってきて僕の前に広げた。先日、預けたステータスカードをその魔法陣の横に並べる。

「おはようアキくん。最近隷属の魔法陣を調べていてな。少し寝不足だ」

まさか僕の奴隷になる事をヴィア主任は諦めて無いのか?

「まさかまだ僕の奴隷になる事を諦めていないのですか?」

「見損なうな。その件は撤回すると言ったろ。今日は違うアプローチだ」

そう言ってヴィア主任は紙にペンを走らせる。そして次の内容を書き出した。

・蒼炎には感情がある(仮定)

・アキに蒼炎の感情が伝わる(仮定)

・ミカにアキの感情が隷属紋から伝わる(ほぼ確定)

・アキとミカは隷属の魔法で繋がってる(確定)

・隷属の魔法陣には感情を伝える箇所がある(仮定)

・主人の感情を感じる奴隷は相性が良い奴隷と忠誠心が高い奴隷(ほぼ確定)

・蒼炎の魔法を使えば使うほど蒼炎の感情がより伝わる(仮定)

《感情の伝わり方》

・アキ→ミカ(ほぼ確定)

・蒼炎→アキ(仮定)

「アキくん、君はこの仮定が全て正しいとしたら、そこからどんな結論を導く?」

僕は考えてみたが良く分からなかった。ヴィア主任が話し出す。

「一つ一つ考えてみよう。まずは蒼炎には感情があるという仮定だ。これが正しいとする。光るステータスカードを君が触って蒼炎の呪文の文言が頭に浮かんだ。でも知識だけじゃなく蒼炎を作った人の魂らしき物も一緒に取り込んだんじゃないかと思っている。蒼炎は感情を変化させている。ダンジョンは嫌だ。ダンジョンの外は気持ちが良いと。これは意志や情念より高次元の物じゃ無いとおかしい」

蒼炎の魂らしきもの? 確かに蒼炎は生きていると感じる。ヴィア主任がニヤリと笑う。

「ここから導く結論は、君が光るステータスカードを触った時、知識以外に蒼炎の感情の元になる高次元の何かしらの物が一緒に取り込まれている」

あの時、蒼炎の呪文の文言以外に蒼炎の魂、いや心かな。それが一緒に僕の中に!?

僕は理解が追いついていない。

それでもヴィア主任の話は続けられる。

「今度は隷属の魔法について考えてみよう。隷属の魔法で、主人の感情が奴隷に伝わる事がある。主人の感情を感じる奴隷は、相性が良い奴隷と忠誠心が高い奴隷であると言われている。これはほぼ立証されている」

ミカから言われている事だ。今までそういう事例が何件も確認されている。

「次に君は蒼炎の魔法を使えば使うほど蒼炎の感情がより伝わる(仮定)。何か似てないかい?」

ヴィア主任はまたもやニヤリと笑った。

「アキくん、君は蒼炎に対して以前より信頼が増してないか? より近い存在になっていないか? 忠誠心ではないが、より蒼炎と君との心が近くなったから蒼炎の感情を強く感じられるようになったと推論する」

ヴィア主任に言われて、確かに似てると思った。

「結論、隷属の魔法での感情の伝わり方と蒼炎からの感情の伝わり方は同じ可能性が高い」

そう言われて一つ気になった。僕は質問する。

「それでは僕は蒼炎の奴隷って事ですか?」

ヴィア主任は丁寧に答えてくれる。

「そうではない。あくまで蒼炎の感情が伝わる魔法がかかっていると考える。隷属の魔法陣は感情を伝える箇所だけじゃないぞ」

そう言われて少し安心した。魔法の奴隷って何かなぁ。

「そこで考えないといけない事がある。君はいつ蒼炎の感情が伝わる魔法をかけられたのか? 可能性が高いのは光るステータスカードを触った時だ」

僕は光るステータスカードを触った時を思い出していた。よくわからなかった。

ヴィア主任の話は続く。

「感情を伝わるようにする魔法陣は隷属の魔法陣の一部に記されていると考えられている。このステータスカードにもそれと似た魔法陣が記されてないかと考えたんだ。しかしこのステータスカードを見てもどこにも魔法陣は無い。後はステータスカードを開けてみるしか方法が無いんだ」

ステータスカードを開ける!? 分解して調べるということか。

ヴィア主任が少し悔しそうに言葉を口にする。

「君からステータスカードを預かり、出来る範囲で調べてみたが、全く分からなかったよ。ステータスカードは国宝級の価値がある。たとえ現在作動してなくとも相当貴重な事には変わらない。また失われた技術で作成されている。そのためステータスカードを開けてしまうと、完全に壊れる可能性がある。その他にステータスカードは開封できない封筒を開ける鍵になっている可能性がある。ステータスカードが完全に壊れてしまうと封筒が永遠に開封できなくなるかもしれない。それとも反対に開封できるようになるかもしれない」

ヴィア主任が僕を力強い目で見つめた。

そして言葉を発する。

「私はステータスカードを開けてみたい。研究者の 性(さが) だな。ステータスカードを開ければ、未知の技術が分かる可能性があるからだ。そしてそこに隷属の魔法陣と同じような魔法陣があれば蒼炎に感情がある事がほぼ立証できる」

説明が終わったようでヴィア主任が椅子の背もたれに身体を預ける。

そして僕に言った。

「このステータスカードは君のだ。開けるかどうかは君が決めて欲しい」

僕は少し考えたがステータスカードを開けて調べる事に同意した。

ステータスカードが反応しなくなってから、もうステータスカードの事は諦めている。

開けることに同意したのは、少しでも蒼炎の研究に役立つならと考えたからだ。

ヴィア主任は一言「ありがとう」と言った。

ステータスカードの分解は専門知識が必要とのこと。それでもステータスカードは未知のものだ。どうなるか分からない。

魔道具の専門家に任せる必要がある。外部の専門家に依頼する予定のため、開封は5月末辺りになりそうと言われた。