軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第94話 皇帝陛下との会食

王冠とマントを外し、リラックスした雰囲気の陛下が話す。

「今日はアキ殿とミカ殿と話をしたくてな。どちらもBランク冒険者なのだろ? リンカイ王国としても是非Aランク冒険者になって欲しくてな。堅苦しい言葉はいらないからな。気楽に話してくれれば良い」

少し落ち着いた僕が話す。

「陛下が私達に聞きたい話はなんでしょうか? ご要望がございましたら」

陛下は右眉を上げた。

「アキくん。気楽にって言ったよね。ご要望なんて言葉使って。やだね、貴族はね」

おちゃらけた態度の陛下。僕の呼び方も、くん付けになっている。

「そう仰られてもこちらは困惑してしまいます。どうぞご容赦ください」

すると陛下は急に真剣な顔になった。

そして言葉を発した。

「分かった。まずはこちらからカードを切ろう。そうで無いとアキくんの信頼は得られないからな」

そう言って謁見室で見た鋭い眼光になった。

「まずは話そう。Aランク冒険者が出ることがリンカイ王国としての悲願なんだ。またそれは私の悲願でもある」

Aランク冒険者が出ることがリンカイ王国の悲願?

なんで冒険者ギルドとリンカイ王国が関係するんだ?

陛下は言葉を続ける。

「アキくんがBランク冒険者になったのはアクロだったな。それならばウォータール公爵家からある程度の話を聞いているはずだ。1段階目の制約が解除されるからな」

僕はウォータール公爵家での話の内容を思い出しながら話す。

「時間がかかっても構わないから、Aランク冒険者になって封印ダンジョンを制覇してくれないかって頼まれました。理由はAランク冒険者になったら話すと。契約で話せないとも言ってました。封印ダンジョンの制覇が封印守護者達の悲願と」

陛下は頷きながら話す

「契約は古の契約だ。リンカイ王国初代国王のウルフ・リンカイとの契約なんだよ。1段階目の契約は、Bランク冒険者になった者に対して、Aランク冒険者から封印のダンジョンの制覇を促すことが可能となる。それ以上の内容はAランク冒険者にならないと解除されない」

ウルフ・リンカイ? さらっと名前が出てきたぞ。

【白狼伝説】ファンとしては聞き流せない。

「陛下、今、ウルフ・リンカイ初代国王の名前が出てきました。本当にウルフ・リンカイ初代国王がその古の契約に関わっているのですか?」

僕の問いに平坦な口調で陛下は返す

「なんだお前はウルフ・リンカイを存在しなかったと言うとんでもない説を信じているのか? 紛れもなくウルフ・リンカイは存在していたぞ。ウルフ・リンカイは私の祖先だ」

この国の1番偉い人にあっさり言われて驚いた。

僕は恐る恐る訪ねた。

「陛下、失礼ながら高名な学者達はウルフ・リンカイの存在について真偽が定かではないと言っております。そこまでしっかりと断定はできるのでしょうか?」

笑いながら陛下は言った。

「まぁ2千年以上前の話だからな。その真偽を今は示すことはできない。Aランク冒険者になれば自ずと分かる事だろうがな?」

僕はせっかくだから陛下に聞いてみることにした。

「封印ダンジョンとはなんなんですか? 封印の守護者とかもわかりません。そこには何が待っているのですか?」

陛下は笑いながら話してくれた。

「誠に申し訳ないがそれは全部Aランク冒険者にならないと教えることはできないのだよ。Bランク冒険者になる実力があり、実際に全てのBランクダンジョンを制覇した者で無いといけないんだ。この制約は破るわけにはいかん」

結局、何もわからないということか。

「ボムズのBランクダンジョンの火宮のダンジョンも制覇したのだろう? それならばファイアール公爵家からも期待をかけられているんじゃないか?」

「はい、ファイアール公爵家と分家一堂、僕たちを応援してくれると宣言してました。僕にはその期待が分からなくて」

「今回、アキくんとミカさんをここに呼んだのはウォータール公爵家とファイアール公爵家と同じようにリンカイ王国王家としてアキくんとミカさんを全力で応援するって伝えるためだ」

僕は理由も分からずにかけられる期待に困惑してしまう。

その時、会食の準備ができたと連絡が来た。

呼びに来た王宮の執事の後に続き会食の会場に入った。

会場と言うよりは部屋の一室くらいの大きさ。テーブルも大きくなかった。

ただ部屋の雰囲気はとても好感が持てる感じだ。

身構えていた僕は少し拍子抜けしていた。

案内された席に座ると飲み物が用意された。僕はさっぱりとしたフルーツジュース。ミカは陛下にワインを勧められてワインにした。

陛下の言葉が響く。

「それではアキくんとミカさんと出会えた幸運を御先祖様に感謝して乾杯!」

そう言って食事が始まった。

出てくる料理はボムズ、ウォータール、コンゴ、カッター等の名物料理と王都名物料理のパスタが締めである。

食事中の会話は今までのダンジョン制覇の話が主だった。

そして待ちに待ったデザートのケーキが出てくる。なんか見た事の無いケーキだ。一口食べると口でとろける食感だ。僕は夢中で食べていた。

その姿を見た陛下は「アキくんもやっと子供らしいところを見せたな」と喜んでいた。

食後のお茶を飲みながら雑談が始まる。陛下から疑問点を上げられた。

「先程聞いたが本当に2人だけのパーティなんだな。アキくんが火属性、ミカさんが金属性か。パーティメンバーは増やさないのかな?」

僕は答える。

「探そうと考えたこともあったのですが、何となくズルズル来て今の状態です」

「何となくズルズルでBランクダンジョンを2つ制覇しているなんてな。凄いな」

「制覇したと言っても危なかったですから。水宮のダンジョンではボスモンスターに殺されかけました。このミカがいなかったら僕は危なかったです。火宮のダンジョンは完全にミカ1人で制覇したものですから」

陛下がポツリと言葉をこぼす。

「【囚われの剣姫】か…。」

久しぶりに聞いた異名だな。陛下がミカの顔を見て話す。

「ミカさんはウチのリンカイ王国とカンダス帝国との戦争で捕虜になって戦争奴隷になったのだろ? 不幸な戦争だった。それでもウチが問題ないと言えば奴隷解放もできるだろう。どうだ? せっかくだから奴隷から解放されないか? アキくんへの補償はこちらからするが」

その陛下の申し出にミカは悩みもせずに答える。

「誠にありがたい申し出ではございますが、その件はお受けするわけにはいきません」

「そうなのか?」

「はい、私がアキ様の奴隷でいる事は私の我儘なんです。これについてはアキ様からもご理解いただいております」

陛下は何かしらの理由があると思ったのかそれ以上強く言わなかった。

「これは気を使い過ぎたかな。この件は忘れて欲しい。それより水属性や風属性の人をパーティメンバーに加えたりはしないのか?」

僕が答える。

「どうしても実力差がありますと危険性が高くなります。王都魔法学校を卒業してから本格的なダンジョン制覇を目指す予定にしております。その時にもう一度パーティメンバーを増やすかどうか考えてみたいと思います」

陛下は寂しい声で言った。

「我が死ぬ前に封印ダンジョンの制覇を見たいが難しいかもなぁ。でもアキくんとミカさん、ゆっくりでも、まずはAランク冒険者になってくれな」

何となく寂しさを含んだ空気で謁見と会食は終わった。