作品タイトル不明
第84話 呪文の文言
サイドさんはお茶を入れて戻ってきた。
「だいぶ話が脱線してしまったね。まぁアキくんが使える魔法の開発が最終目的ってことだけど、基礎がわからないとね。まずは呪文の文言の基礎を話して今日は終わりにしようか?」
僕は頷いた。サイドさんは講義を始める。
「呪文の文言は3つのパートに分かれている。その3つはわかるかな?」
「えっと…。以前校長室でヴィア主任が言っていましたが覚えていません。すいません」
サイドさんが優しい顔で講義を続ける。
「アキくん。覚えていなくても謝る必要はないよ。今、覚えれば良いのだし。後から忘れても良いんだよ。調べてわかれば。今日は【呪文解析概論】の教科書を持ってきているよね。ちょっと貸して」
そう言うとサイドさんは教科書をパラパラして記載されているところを開く。呪文文言基礎の部分に載っていた。
「アキくん、ここだね。それでは改めて質問に答えてください」
「えっと、【起動の句】と【主文の句】と【魔法名】です」
「それが正解だ!それではそのまま教科書を見ながら講義をしようか。まずは【起動の句】。これは魔法を立ち上げる句なんだ。その時に魔力を何の力で働かせるか決める事になる」
サイドさんはお茶を一口飲んで続けていく。
「先程の防壁の起動の句で考えてみよう。【金剛の心】が起動の句だね。まずは魔法を立ち上げるきっかけ作りだ。その時の魔力は金剛の心を力にしていく。ここで考える。金剛の心ってなんだろう?金剛の心のあり方と言っても良い。金剛とは硬い硬い金属、その心は誰にも負けない硬さと考えるんだ。つまり起動の句の【金剛の心】は魔力の立ち上げのきっかけと魔力を誰にも負けない硬さにするってことだ」
僕は感心した。
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「そう言う事なんですね」
「だから呪文の文言には詩的感覚が必要になってくるんだよ。改良や開発にはセンスが必要だね」
僕は頷いた。サイドさんが続ける。
「ついでに先程やった改変した防壁の起動の句でも考えてみようか。改変した起動の句は【金剛の力】だったね。魔法の立ち上げのきっかけは同じ。ただし魔力を金剛の力にしようとしている。金剛の力のイメージはなんだろ?金剛の力とは金剛の長所と捉える。これは硬さだね。つまり金剛の力の起動の句は魔力を硬くする感じになる」
一度間を取ってサイドさんは続ける。
「【金剛の心】と【金剛の力】の違いは【金剛の心】は誰にも負けない硬さ。【金剛の力】は硬さとなるんだよ。その違いが障壁の耐久力と魔力の消費量の違いになって現れるんだよ」
心と力でこんなに変わるのか。僕には難しそうだ。
「相当難しそうですね。僕にできますかね?」
「まぁこの辺は長い年月をかけて試行錯誤した呪文の文言だからね。そう簡単に理解できたら先人に申し訳ないよ。まずは色んな呪文の文言を読んでどういった意味があるか考えるんだ。そうすると詩的感覚も優れてくるよ。焦ることないからさ。まだ1日目だよ。今日はここまでにしようか。詰め込み過ぎも効率が悪いからね。まずはお疲れ様でした」
僕は今日、サイドさんがとても素晴らしい講師と感じた。
僕は素直にサイドさんを讃える。
「とても面白かったです。サイドさんって凄いんですね」
「これでも一応王都魔法学校の3本線だったんだよ」
「3本線?」
「あぁ、首席の別名だ。アキくんの左腕にも3本線があるだろ」
なるほどね。そんな言い方するんだ。その時、サイドさんがミカに話をする
「前から気になっていたんだけどミカさんって【硬化】と【障壁】の呪文しか使わないの?」
ミカが答える。
「私が通った帝国の学校は魔法学校ではありませんでした。それでも少しは魔法の授業がありまして。そこでいろいろ試したのですがこの2つしか発動しませんでした」
サイドさんが口を開く。
「ミカさんは今Bランク冒険者ですよね。経験をたくさん積んでいるから魔力の質が上がっていると思いますよ。きちんとした指導を受ければ、他にも覚えられると思います。どうせなら金属性の魔法をもう一度試していきませんか?時間はいっぱいあるし、金属性なら魔法射撃場に行かなくても大丈夫ですから」
「でも私は従者ですから…。」
「もうダンジョン仲間って言ったじゃないですか。反動の魔法や結界の魔法とかも使えると思いますよ」
ミカの態度が変わった。
「私に結界の魔法が使える可能性がありますか!」
サイドさんが答える。
「可能性はありますね」
「それなら試してみたいです」
急にミカが変わった。そんなに結界の魔法が覚えたいのかな?
「じゃ明日からやりましょう。美味しいお菓子を食べて行ってくださいね。それで今日は終了です」
残った授業時間は3人で雑談して盛り上がった。