軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第75話 合格発表とシズカ・ファイアード

3月20日、今日は王都魔法学校の合格発表の日だ。お昼に発表になるが合格している事がわかっている。合格者はその後に学校生活のガイダンスが実施される予定だ。制服の採寸もするので学校に行かないといけない。

ユリさんの作ったお昼ご飯を食べてミカと一緒に学校に向かう。ミカは僕の従者として学園に通う為、従者用の制服を作りに行かないといけない。

家から出て学校に行こうとしたらミカが反対の方向を見ている。

ミカに「どうしたの?」と聞くとミカが少し怖い口調で言った。

「今、そこに冒険者ギルドのパメラさんがいたと思うの」

「気のせいじゃない?」

「何かウチの家を覗き込みそうな感じだったの。私と目があったら慌ててそこの路地に走って行ったわ。追いかけて問い詰めてもまだこちらも何もされてないから意味無いかって止めたのよ」

「そうなんだ。一応注意しておこうか」

何か気持ち悪い感じがしたが、何もしようがないので王都魔法学校に向かった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

王都魔法学校は王国有数の難関校だ。

600人くらいの受験生がいるが属性ごとに40人の枠になる。

合計160人の合格者が出る。

そんなに競争倍率が高くないと思ってはいけない。

受験生の600人全てが優れた魔力の持ち主なのだから。

王都魔法学校の卒業後の進路は王国の政治を担う大臣や官僚、その他には他国から国を守る魔法騎士団、後は実家の家を継ぐ場合もある。

何が言いたいかと言うと魔術師のエリートコースに乗ると言う事である。

4月1日時点で15歳の子供が強力な 篩(ふるい) にかけられるのである。

王都魔法学校に着いた。念の為合格発表の掲示をミカと見に行く。

属性ごとの発表になっている。僕は火の属性魔法で受けている。

試験の成績順で張り出され、1位から20位、21位から40位でクラスわけされる。

上の順位がAクラス、下の順位がBクラスである。

火の属性魔法の掲示板の前が少し騒ついている。なんだろうと思いながらも掲示板を見る。

火属性の1番上にアキ・ファイアールの名前があった。

「やりましたよ! アキくん! 見事1位で合格ですよ!」

ミカが声を張り上げる。

僕は恥ずかしくなってちょっと斜に構える態度を取ってしまった。

「ミカ、そんなたいした事じゃないでしょ。4属性もあるし、あくまでも火属性で1位ってだけだから」

「もう、アキくん、こういう時は素直に喜ぶべきですよ。ダンジョンの宝箱から素敵な装備が出た時のようです!」

ミカは頬を膨らませながら、いまいちズレてる例えをした。

もう一度掲示板を確認する。

火属性は当然ながらボムズ出身のファイアール家縁のものばかりになる。

2位合格者にシズカ・ファイアードの名前がある。そういえばシズカは魔法実技試験でファイアーランスを決めてたな。

知ってる名前が多い。当たり前だ。

そこでおかしい事に気がついた。

火属性のAクラスの人数が21人いる。

Bクラスは20人。

定員が40人で決まっているのに合格者が41人だ。

他の属性の合格者人数を確認したが例年通り40人だった。

火属性のAクラスだけ21人で1人多い。

これが騒ついていた原因か。

掲示板から離れて考える。

もしかして僕が原因かなっと思った。

蒼炎って火属性魔法か怪しいって面接の時に言われたもんな。

しょうがなく火属性に入れた感じがする。

まぁ考えていてもしょうがない。

合格者だけがもらえる資料をもらって講堂に移動する。

合格者は属性ごとに分かれて座るようだ。

髪色をみれば分かり易い。

赤色の髪色の方に向かうと椅子に名前が付いている。これはもしかしたら成績順かなと思ったらやはりそうだった。

僕の名前は1番前の席の1番端だった。従者を申請している場合はその隣りに設定されている。

その隣りの席は成績2番のシズカ・ファイアードだ。まぁミカを挟んで並んでいるから会話をしなくて良いだろ。そう思い席に座る。

先程もらった合格者だけがもらえる資料を読んでいた。授業のカリキュラムや生活上の注意点などが書かれている。

ミカと雑談をしながらカリキュラムを見ていたら目の前にシズカ・ファイアードが立っていた。

この子もめげないなぁと思い声をかける。

「シズカさん、合格おめでとうございます」

シズカはキツい顔をして話し始めた。

「火属性の1位合格者に言われてもそんなに嬉しくないわ」

「それでシズカさん、以前私とした約束は守っていただけるのでしょうか?」

シズカのキツい表情は変わらない。そして口を開く。

「さすがに同じ学校の同じクラスでは会話が生じたりするのは避けられないわ。悪いんだけど、それは許して欲しいわ」

僕は一つため息をついて返事をする。

「確かにそうですね。分かりました。クラスメイトとして最低限生じる会話や交流は許容しましょう」

シズカが微笑んだ。

「ありがとうございます。アキ様の広い心に感謝いたします。それで早速なんですけどこの間の魔法実技試験の魔法についてお聞きしたいのですが」

やっぱりそうか。シズカの好奇心は底抜けだ。

面倒くさいなぁ。何とか躱せるか。

「そのような質問はクラスメイトとして最低限生じる会話とは思いませんが?」

シズカの勝ち誇った顔は変わらない。

そして僕と会話を続けようとする。

「優れたクラスメイトがおりましたら、その人から指導を仰ぎ自分の成長に繋げて行く。入学試験の1位合格者の話を聞くのはクラスメイトとして当たり前だと思います。私の質問は間違いなくクラスメイトとして最低限生じる会話だと思います」

酷いこじつけだと思った。もう会話を切り上げたい。強引に打ち切ろう。

「どうやらシズカさんとは見解の相違があるみたいだね。これは人それぞれだから良いと思うよ。僕は自分の見解を人に押し付けようとはしない。シズカさんにも同じ事をして欲しいな。ガイダンスが始まる前に資料を確認したいんだよ。今日のところはこの辺で引き下がってくれるとありがたいのだけど」

秘技! 俺はしないからお前もするな! 発動!

特に変わった表情を見せずにシズカが言った。

「分かったわ。でもこれから長い学園生活があるのよ。早めに教えてくれたほうが楽になると思うわ」

そう言ってシズカはミカの隣りの席に座る。

僕の耳元でミカが小声で話す。

「いつもシズカさんを見てますが心が折れずに凄いですね。好奇心丸出しです。シズカさんも言ってましたがアキくんが諦めたほうが楽じゃないですか」

今度は僕が耳元で話す。

「いろいろあるんだよ。家に帰ったら話すよ」

そう言って僕は資料に目を落とした。