軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話 二人きりの年末年始

貴族主催のパーティに出席する事になり、それ用のタキシードとドレスが必要になった。

慌てて高級服飾店に駆け込む。年末年始を挟んだこの時期、お店側は間に合わないの一点張りだったが金にモノを言わせて作ってもらった。

僕はミカの髪色の黒のタキシード。ミカは僕の髪色の水色のドレスを作った。

ミカにはその他に必要な宝飾品も購入した。

奴隷にこんなにお金を使う主人はいるのだろうかと、少し思ったが気にしたら負けだ。

12月30日。1年の最後の日である。ミカと2人で自宅でゆっくりしていた。

何の気なしに今年1年を2人で振り返る。

僕は5月の誕生日に蒼炎を覚えて家出した。

アクロまで来て冒険者となった。

蒼炎が見つからないように人が少ない夜のダンジョンをソロで攻略した。

来る日も来る日もモンスターハウスでオーク狩りをした。

Dランク冒険者になって奴隷のミカを購入した。

2人で泥ゴーレムばかり倒していた。

蒼炎の事がバレてしまい、慌ててBランク冒険者を目指した。

無理矢理泥ゴーレムをキャリーして毎日クタクタになっていたのは良い思い出だ。

夏の海水浴は楽しかった。また来年アクロに行って海水浴しようかな。

ファイアール公爵家に呼ばれてアクロからボムズへの馬車での移動。

ミカと肌を合わせていた一ヵ月弱。2人の気持ちが近づいたと思ったら離れてしまったようなそんな不思議な感覚。

ファイアール公爵家との不干渉の契約。

Bランクダンジョンの水宮のダンジョンボスでは死が自分の横をカスって行った。ボス部屋で布団をしいて寝たのは良い思い出だ。

ボムズに拠点変更してからのダンジョン探索は順調だった。

本当に充実していた7ヵ月だった。

ミカは僕と出会う前に戦争で捕虜になった。

身代金を払ってもらえず戦争奴隷になった。

僕に購入されてからは、僕の盾になってくれた。

気がつくともうBランク冒険者だ。

2人で思い出話をしていたら、会話が止まるタイミングがあった。

ミカが僕の目を見ている。僕もミカの目を見ていた。ミカの目に吸い込まれる感じだ。ミカも僕の目に吸い込まれたのかもしれない。

そのまま唇を合わす。夏の時とは違って優しいキスだった。ゆったりと肌を合わせていく。

夏の時、僕は不安と欲望をミカにぶつけていた。今は自然にミカを求めている。そんな僕をミカは受け入れてくれようとしてくれた。ミカは優しい笑顔を僕に見せてくれた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1月1日の朝。1年最初の朝である。朝起きて目を開ければ、それが1年最初に見るものである。

今年最初に見たものは白い肌だった。

お互い服を着ないで寝てしまったらしい。

眼福、眼福。今年は良い事がありそうだ。

ミカも起きたようだ。気怠そうにベットから出て、服を探して着ようとしている。そんなミカを僕はずっと眺めていた。

それに気づいたミカが恥ずかしそうに身体を隠す。

「今更隠してもしょうがないじゃないの?」

「そういうものじゃないの。アキくんも女の子の気持ちを分かってね」

そんなもんかと思い僕も服を着た。

リビングに行って2人で朝食を食べる。朝食は日持ちのする祝い料理をリーザさんが作ってくれていた。無言での食事だったが今の2人に会話は必要なかった。

ボムズでは1月1日に火を祀るお祭りがある。

ミカと2人でお祭りを見に行った。

屋台もいっぱい出ている。お昼は屋台の買い食いで済ませた。お祭り名物のスライム釣りをやっていた。つい熱くなって3,000バルも使ってしまう。横でミカが笑っている。

その日の夜もミカと自然と肌を合わせていた。

冬はやっぱり寒い。

ミカは北のカンダス帝国出身だからボムズの冬は暖かいと言っていた。僕は生粋のボムズっ子なので十分寒い。

北の中央都市のコンゴに行く時は夏にしようと思う。

ファイアール公爵家主催の新年祝賀パーティーに僕とミカが出席する旨を伝えたら、ファイアール公爵家宗主で父親であるシンギ・ファイアールが殊の外喜んだらしい。

しっかりとしたドレスコードのパーティーであり、会場のファイアール公爵家の館もボムズ南門から3キロル程度あるために馬車で行かないといけない。

馬車は借りる予定だったがファイアール公爵家の馬車を手配すると提案された。

断ったのだが頑としてこちらの言い分を聞いてくれなかった。

面倒なのでファイアール公爵家の馬車で行く事になった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

1月10日天候晴れ。ファイアール公爵家主催の新年祝賀パーティーである。

慌てて買ったタキシードとドレスは1月8日に納品された。間に合って良かった。

パーティーに行く準備を始めた。姿見で自分の姿を見てみた。

黒のタキシードに水色の髪が映える。

なかなか格好が良いじゃないか。

僕も満更じゃ無いなと思っていたらミカがリビングに現れた。

ミカを見て僕は息を飲んだ。

今日の服装はこの間買ったイブニングドレス。

全体的なシルエットが細く直線的なシルエット。胸元が結構開いているが、ミカの生来の品のせいか上品に見える。

鮮やかな水色のドレス。奴隷の証であるチョーカーは現在僕の髪色に合わせて水色にしている。

神経が張り詰めていながら優雅にしなやかに動く指先がミカはやはり帝国の上級貴族と思い出させる。

今日は長い黒髪をアップに纏めていた。黒髪と白いうなじのコントラストに色気を感じられる。

切長な目と綺麗に通っている鼻筋、柔らかそうな唇、今日は薄化粧だ。圧倒的な美がそこにあった。

今、僕は間違いなくミカに魅了されている。

ミカの後ろからリーザさんが現れた。今日はミカの支度の手伝いに来てくれている。ミカに見惚れている僕にリーザさんが軽い笑みを浮かべて口を開いた。

「アキ様、どうですか。今日のミカ様は私の自信作です。素材が良いと、こちらも気合いが入りますね」

「こんなドレスを着るのは初めてです。アキくん似合っていますか?」

ミカが自信なさげな声で呟いた。慌てて僕は「とても似合ってる。綺麗だよ」と言った。

ミカは笑顔を見せてくれる。そして少し沈んだ声を発した。

「アキくんもとても似合っています。カッコ良いです。今日はありがとうございます。私のわがままに付き合わせてしまって。私は奴隷失格ですね」

「何を言ってるかよくわからないよ。さぁ楽しんでこようか。」

僕はミカの手を引いて迎えに来た公爵家の馬車に乗った。