軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

婚約破棄と烈風の魔法

10月19日【無の日】

日中はミカと2人でセンタールの街に繰り出した。

久しぶりにミカを着せ替え人形にして楽しむ。

目の保養になるね。

服を5着ほど購入し、帰宅した。

不在中に来客があったそうだ。

来客者はシンギ・ファイアールとベルク・ファイアード。

僕の父親とシズカの父親である。

僕たちが入学試験の時に泊まった宿なので、できれば宿までご足労願いたいと伝言があった。

どう考えてもシズカの件と思いながらも宿に向かう。

少し気は重い。

宿の受付で自分の名前を伝えると部屋まで案内される。

案内された部屋には父親のシンギとシズカの父親のベルク・ファイアード、担任のシベリー、シズカの4人がいた。

公爵家の宗主とファイアード3人衆である。

呼ばれた理由がわからないが入室して挨拶する。

「アキです。私が不在の時に自宅まで来られたようですが、何か御用でしょうか?」

シンギが満面の笑みで迎えてくれた。

「これはアキ殿、わざわざすいません。今回、少し立て込んでおりましてな。アキ殿に質問させていただきたい事がありまして」

質問?なんだろう?

「僕が分かる事ならお答えしますよ」

「現在、アキ殿はBランクダンジョンを2つ制覇なさっております。あと2つの制覇については何かしらの計画はございますでしょうか?」

計画か。行き当たりばったりだからな。

「今のところ、いつまでにと言う期限は区切っておりません。パーティのメンバーからは年齢もあるから注意してねと言われております。漠然とですが7〜8年程度までを目処にしてますけど」

続けてシンギが質問する。

「失礼ですが、Aランク冒険者になり、封印のダンジョンを制覇する事はどの程度の自信がございますか?」

「自信がどの程度と言われると困りますが、僕には「制覇をする」と言う意志があるだけです」

横からベルクが声を挟む。

「それは制覇する自信がないと言う事と思って良いですかな」

「ぼくは自信が有るとも無いとも言っていません。制覇をする意志があると言っているだけです」

僕の言葉にベルクが怒声を上げる。

「詭弁を弄すな!自信が無いことを適当な言葉で誤魔化すな!」

「自信があればできるのですか?自信がなければできないのですか?そんな事はありません。自信があってもできない事もあり、自信がなくともできる場合があります。成し遂げるか失敗するかを 別(わ) けるのは意志の力です」

僕はベルクからシンギに顔を向けて言葉を口にする。

「ですから先程、僕は制覇をする意志があると言ったのです」

ベルクはまた怒声を上げる。

「何を申しておる!」

シンギはベルクに手のひらを見せ、言葉を制する

「ベルクもう良い。アキ殿はこちらからの答えられない質問に誠意を持って答えてくれた。成し遂げるか失敗するかを 別(わ) けるのは意志の力か。なるほどそうかもしれんな」

シンギは言葉を噛み締めるように発した、

「なら、アキ殿の意志の力を信じ、心に希望を持ち続ける事が大事な事だな」

晴れやかな笑顔になる。

「ありがとう。これで吹っ切れたよ」

シンギは全員の顔を見渡してから話す。

「それではガンギ・ファイアールとシズカ・ファイアードの婚約は無かったものとする。以上だ」

僕のダンジョン制覇とガンギとシズカの婚約に関係があるのか?と少し思ったが、もう僕には用事が無いようなので辞させてもらった。

あとは勝手にやって欲しい。

シズカの願ったように婚約破棄になりそうな事は良いことなのかもしれない。

その夜、夢を見た。蒼炎が人の形になって僕に話しかけてくる話だ。

とても楽しい会話をしたと思うのだが、起きると朝露のように消えて思い出せない。

次の日の学校でシズカはとても喜んでいた。昨晩は、僕が現れるまでは結論が出ないまま罵り合いに発展していたそうだ。

それが僕が現れて質問に答えただけで、あれほど婚約破棄に慎重だったシンギ・ファイアールがあっさり婚約破棄を認めてしまった。

僕はシズカからはお礼にデートしてあげると言われたが丁重にお断りさせていただいた。

【10月23日】

今日はダンジョン外で蒼炎の魔法と晩年のソフィア・ウォレールが作った魔法である烈風の併用実験である。

烈風の魔法は単体で使うとそよ風程度の風が吹くだけ。普通の火魔法と併用すると、強くなっていく風に火が消されてしまう。今のところ全く役に立たない魔法である。

いつもダンジョン外で使用している場所に来た。ここも穴ボコが酷くなっている。

最初の蒼炎の一発目は烈風とは併用させない。

どこまで蒼炎の炎が大きくなるかわからないからだ。

一発目の蒼炎の魔法を撃つ。相変わらず喜んでいる。僕はいつもの事ながら一緒に喜ぶ。いつでも楽しい感情になるのは良いもんだ。

念の為、もう一回蒼炎の魔法を撃ってから烈風との併用を試みる。

実験の用意ができた。

僕の横にはヴィア主任が並ぶ。タイミングを合わせて呪文の詠唱を始める。

【焔の真理、全てを燃やし尽くす業火、蒼炎!】

【風は愛、火と 目合(まぐわ) い激しく狂え、烈風!】

蒼炎が的にぶつかり広がる時に蒼炎の周囲に風の流れが現れる。蒼炎を包むような風が、ドンドンと蒼炎と混じり合っていく。通常の蒼炎の半径は3メトルほどであるが5メトルほどに広がる。蒼炎の回転も速くなる。持続時間は1.5倍ほどになった。

確かに烈風は蒼炎のために開発された魔法であった。

僕は魔法が消えたあとを見ながら晩年のソフィア・ウォレールの気持ちに思いを馳せていた。