軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

§196 32層 3/16 (sat)

『イワツバメの営巣地とはよく言ったものだな』

ブーランジェ中佐は、正面玄関へと上がるスロープの前から、5階建てのマンションを見上げた。

坂の途中に建てられたその建物は、日本ならどこにでもありそうなマンションだったが、普通のそれよりも外国人の出入りが多かった。

『日本には、同じ穴のムジナという言葉があるそうですよ』

『ムジナ?』

『狸のようなものだそうです』

『狸の集まりか。同じ穴のムジナね』

その言葉の本当の意味を知らなかったブーランジェ中佐は、諜報員にはふさわしいと心の中で苦笑した。

そうして、もう一度その建物を見上げて、『まるで、現実に現れたドラゴンの動向を、各国が遠巻きに監視している塔のようだな』と呟くと、乗っていた車のドアを開けて冷たいアスファルトに降り立った。

DGSE(対外治安総局)の連中によると、マンションの向こう側の連中に近づいたものは、どういう訳か日本の政府筋経由で本国へと送り返されてくるらしい。

それがあまりに続いた結果、もはや秘密の諜報拠点というよりも、各国の非公式の出先機関のようになっていて、お互いに監視はしても妨害などは行わないといった暗黙の了解ができあがっているそうだ。

『二人は左右から裏に回れ』

逃げ出したりはしないと思うが、場所は2階だ。ベランダから飛び降りることだってできるだろう。

そう指示を出したブーランジェ中佐は、正面玄関奥の階段から2階へと上がり、201号室の扉を開けて部屋に突入する部下の後ろで、辺りに気を配っていた。

『クリア! 誰もいません』

しばらくして報告を受けた中佐は、訝しげに思いながらも、室内に入り部屋の詳細な捜索を命令した。

玄関には一足の靴も残されておらず、各部屋には生活の痕跡がわずかながらに残されてはいたが、めぼしいものは見つからなかった。

『中佐!』

ベッドルームを調べていた部下の呼びかけに、その部屋へ向かうと、乱れた掛布団の下から黒いしみがついたシーツがあった。

『これは? 誰かの血液か?』

『おそらく』

血液? デヴィッドのか? いったいここで何があった?

『マリアンヌ=マルタンが泊まっているホテルへも人を向かわせろ。アルトゥム・フォラミニスの連中は全員拘束する』

『中佐、それは……』

もちろん彼らに逮捕権などない。彼の部下はそれを心配していた。

『問題ない。我々は穏便に協力をお願いするだけだ。違うかね?』

刺すような眼差しを向けられた部下は、中佐の前職が、GIGN(国家憲兵隊治安介入部隊)だと真しやかに囁かれていることを思い出し、慌てて敬礼して復唱した。

『アルトゥム・フォラミニスが宿泊しているホテルに向かい、協力を要請して全員に留まってもらいます!』

『結構だ』

そこでやるべきことをすべて終わらせた彼は、その足で、向かいにある問題の家屋へと向かった。

芳村と言う男にどのような言葉をかければ、話をさせられるだろうかと考えながら。

◇◇◇◇◇◇◇◇

21層に泊まった翌日の午後、久しぶりに訪れた31層は、以前の暗黒神殿の面影を全く残していなかった。

カタカケフウチョウの羽は、いずこへともなく消え去って、普通の空が広がっていた。

にも拘わらず、階段直下の広場には、相も変わらずモンスターは出現しないようだった。

「もうここがセーフエリアでもいいんじゃないか?」

「油断は禁物ですよ。めったに出現しないからレアって呼ばれるんですから」

「14層に時折現れるユニークみたいなやつか」

14層の渓谷層には、時折、蝙蝠の翼と太い尾を持った巨大な王冠をかぶったハーピーのようなモンスターが現れることが知られている。

渓谷にかかる雲海の中から突然現れるらしい。

「そうです」

そう返事をしながら、三好は、階段の出口がある塔の周りを、反対側に向かって歩き始めた。

「しかし、この床は……まいったな」

31層の床は、黒く滑らかな石畳のようなもので覆われていた。

つまり、石ころがまったく落ちていなかったのだ。

「転移石の材料が、全然見当たりません」

「キメイエスの出たところには、結構ゴロゴロしてたように思ったんだが」

「30層や32層で拾ってきた石でも大丈夫なんでしょうか?」

「ダンジョン内の石ならいけそうな気もするけれど、ダメならダメで、転移石30や転移石32を作ればいいか」

「適当ですねぇ」

塔の外壁には、相変わらず枯れた蔦が絡みついていたが、いくつかは新しい芽を吹いているかのように見えた。

「なんだか蔦が再生してないか?」

「そりゃあ、蔦だって生きてる――って、ダンジョンの中で?」

三好は、はたと足を止めて塔を見上げると、首を振った。

ダンジョンの中で成長する植物は、今のところ俺たちが植えたダンジョンに管理されていないもの以外は存在しないのだ。

「そう言われると、そんな気もしますが、枯れた蔦の下にあった蔦が見えるようになっただけと言う気もします」

「枯れている蔦って、触るだけで崩れてしまうけど、これってリポップしたりしないのかな?」

「いっそのこと、燃やしてみます?」

31層は、この広場を除いて、すべてがボス部屋で別空間だと考えられている。

だから、一気に燃やしてしまえば、広いとはいえ広場のどこかにリポップするなら、それを確認できるかもしれなかった。

が――

「それだけのために、放火魔になるはちょっとなぁ」

そもそもそれを確認したからと言って、別になにかの知見が得られるわけでもないし、ただ好奇心が満たされるだけにすぎない。

むしろ、なんらかの悪影響が起こる可能性の方が大きそうだ。

「やっぱり花園への入り口は見当たりませんね」

ぐるりと塔を一蹴して戻ってきたが、先日あったはずのドアはどこにも見当たらなかった。

またどこかで花園へ続く扉を見かけることもあるだろう。

「じゃあ、ついでに、ボス部屋も攻略していくか?」

「どうしたんです? いつもなら危険は避けるでしょ?」

「いや、31層への転移石があれば、やばけりゃ逃げられるかなーと」

「そうして、転移禁止のボス部屋トラップに引っかかるんですね、分かります」

「分かるなよ」

「第一、そんなことをしたらアルスルズが取り残されちゃいますよ」

そう言われれば、キメイエスのいた部屋は別空間扱いだった。

他の部屋も同じ扱いなら、転移石で影の中のアルスルズを連れて移動することはできないはずだ。

「ああ、そうか」

緊急脱出は便利そうだが、俺たちにとっては意外と使いにくいかもしれない。

「それに、一度入るとロックされるじゃないですか」

「うん」

「アルスルズが残ったままだと、一生開かないドアになるのでは……」

「うーん」

そう言われてみれば、確かにその可能性はある。

取り残されたあいつらが、最終的にどうなるのかなんて実験のしようがないのだ。

「やってみる訳にもいかないか」

「死んじゃったらどうなるのかを調べるのと同じですね」

試しておきたいのはやまやまだが、取り返しがつかないからなぁ……

「そう言えば、先輩。31層にDPハウスって建てておくんですか?」

以前確かにJDAにそんな許可を貰ったような気がするけれど、転移石が出回れば宿舎としてのDPハウスは不要だろう。

21層を拠点にしてもいいし、1層へ戻ってもいい。

「転移石が出回っちゃうと、意味が薄いもんな。ともかく今回は無理だろ」

何しろDADの荷物を運んできたのだ。同時にDPハウスまで建てたりしたら、どうやって持ってきたのかが問題になる。

さすがにホイポイが2個あるってのは無理がある。

「じゃあ32層ですね」

三好が、塔の上りの階段と下りの階段がならんで口を開けている部分をのぞき込んだ。

下りの階段は、ぐるりと螺旋を描きながら、闇の中へと消えている。

「初32層だな」

「前回はいきなり1層へジャンプしちゃいましたからね」

そうして俺たちは、32層への階段を下りた。

そこは、空気からして何かが違っていた。大きな木の元には木漏れ日にあふれた空間が広がり、まるで平穏をたたえた湖のようだった。

「こりゃあ……」

広がる枝のところどころに、ヤドリギらしきボンボンが、まるで緑の惑星のように浮かんでいた。

「世界樹ってやつですかね?」

「おいおい、まだ32層だぞ? こんなところで世界樹が登場したら、この先どうするんだよ」

「心配するところが変ですよ、それ」

俺たちは、しばしその場にとどまりながら、広がる枝の行く末を目で追いかけていた。

「 創世記(ジェネシス) を信じるなら、ここはエデンの園ってところかな?」

「やめてくださいよ。 先(・) 輩(・) がそんなことを言って、もしもこの木に実がなったりしたらどうするつもりなんですか」

「そりゃ、みんなまとめて神にでもなるしかないだろう」

旧約聖書の創世記に登場する生命の樹は、エデンの園の中央にあって、その実を食べると永遠の命を得るとされている。

エデンの園の中央には、もう1本、善悪の知識の木が生えていて、その実を食べたアダムとイヴがエデンを追い出される物語が失楽園だ。

つまりその子孫である我々が生命の実を食べてしまえば、神と同じ存在になるという訳だ。

「原罪(*1)を得た我々が、それに懲りずに、これからセーフエリアで知恵をむさぼろうかってところなんですよ?」

「ケルビムと炎の剣を設置されないように気をつけなきゃな」

「セーフエリアにモンスターは出ないってことですから、そこは平気に違いありません」

「実際のところ、フレイザーっぽいし、ここで登場するのはぜひディアナさんでお願いしたいね。現代ファンタジーに毒されていただいて、エルフさんでもOKだけどな」

「確かに森の人が出てきそうな雰囲気はあります」

「それって、オラウータンが出てくるんじゃないの? で、DADの区画はどこだ?」

「ええっと……あっちですね」

三好が地図を見ながら移動した先にあったDADの区画は、32層の入り口からほど近い、北東側にあった。

「あちゃー、鬼門ですよ、鬼門」

「アメリカさんはそんなことを気にしないだろ。陰陽道でも日本だけの考え方だし。あるとしたら――俺たちが鬼だぞっていう当てこすりかな」

「最初に下りてきて場所を確保したのはサイモンさんたちですよ。そんなことを考えているとは思えません」

「言えてる。ただ人のいない方向へ進んだだけだろうな。おっと、ここだ」

その場所には、白線が引かれ、区画を表すコーンにUS-DADと書かれているだけで、他にはまだ何もなかった。

周囲も区画ごとに白線が引かれているだけで、JDAが常駐しているのは世界樹の反対側なので、今のところ、ここには誰もいなかった。

「んじゃ、誰もいないうちに配置するか。方向の指定ってあったっけ?」

「位置まで指定されました」

三好はタブレットでそれを確認しながら、ホイポイを取り出した。

誰も見ていないんだから、無視していいような気もするが、「壁に耳あり障子にメアリー。様式美ってやつですよ、先輩」とそれを投げて、施設を取り出した。

音もなく取り出されたその施設は、ユニットハウスとは言えなかなかの大きさだ。内部に据え付けられている発電ユニットだけでも結構な重さだが、問題なく〈収納庫〉に収まっていた。

「さすが大型バス20台は伊達じゃないな」

とは言え、発電ユニットだけでもそれに近い重さがあるはずだ。

「いい加減限界を調べておかないとまずい気もするんですけどね」

「そうは言ってもな……」

それを確かめるのに適当な場所と物は、ちょっと思いつかなかった。

「ほら、騒ぎになる前に撤収するぞ」

突然コンテナハウスが出現したんだ、話題にならないはずがない。

32層のインフラとの接続は俺たちの考えることじゃないし、それがなくても先行して持ち込むくらいだ。スタンドアローンで動作するようになっているだろう。

「え。受取り貰わなくていいんでしょうか」

「誰に貰うんだよ。ほっときゃいいだろ」

「ええー? 預かったカギって誰に渡せばいいんです?」

「JDAの現地駐在員にでも言付けておけばいいさ」

「泥棒とかいませんかね?」

「ここにか? それ以前に、この建物を盗んでいけるのは俺達だけだろ……」

俺はそう言いながら、携帯を取り出してサイモンに電話をかけた。

コール4回でそれに出た彼に、配送が終了したことを伝えると、驚いたような反応の後、事後の手続きについて教えてくれた。

「32層のJDAの待機所にいる駐在員に向かわせるから、カギを渡しておいてくれだとよ」

「了解です」

DADの駐在員を待つ間に、俺はバックパックからロザリオのケージを取り出した。

「さあロザリオ。33層への入り口を見つけてくれよ」

そう言って彼女を自由にすると、ロザリオは数回その辺りを小刻みに飛び回った後、突然、速く高く飛び立った。

「あ、おい!」

「どうしました?」

遠く、世界樹の枝の先に一瞬だけ掴まってこちらに2回首を縦に振ったロザリオは、そのまま北に向かって飛び去った。

「ロザリオが逃げちゃったぞ?!」

「なんだかあれは、まーかせてと言っていたような気がしませんか? 先輩、なにか言ったんですか?」

「いや、33層への入り口を見つけてくれと……」

「それですよ、きっと」

俺たちはしばらく彼女が飛び去った方向を見ていたが、どこへ行ったのか分からないため追いかけることもできず、彼女が戻ってくるのを待つしかなかった。

「まあ、用事がすんだら戻ってくるか」

「その間に、ちょっと探検してみませんか?」

「そうだな」

ほどなくやってきたDADの駐在員は、そこにいつの間にか建っていたコンテナハウスを見て、ことのほか驚いた後、俺達からカギを受け取って、施設の初期設定を始めたようだった。

俺たちはそのまま、セーフエリアの外周に向かって探索を開始した。

すでにマップは作られているし、存在するモンスターの詳細なども分かっているため、比較的気楽なものだった。

「セーフエリアの境界ってどうなってるんだ?」

「なんだか雰囲気で分かるそうですが、一応目印も作られて……あ、あれですね」

三好が指さした先には、緑の葉をつけた60cmくらいの高さの木が植えられたいた。

「なんだあれ?」

「榊の木だそうですよ。それが大体100m間隔で21本植えられているそうです」

「はぁ?」

確かに榊は、神と人の領域の境界を表す木だ。しかし、これって、わざわざ上から運んできて植えたのかな? 他にやることがあるだろうに、実に日本っぽい。

一応どこまで掘れるのかを実験した後はあるようだし、ついでにD進化の論文を読んだ誰かが植樹の実験をした可能性はある。だがそこで榊を選ぶのはかなり意味不明だ。

「お社でもあるのか?」

「あるそうですよ。小さいのが建てられているそうです」

「実に日本的だな」

「徒然草にだってあるでしょう? 寺・社などに忍びて籠りたるもをかし、ですよ」

徒然草の15段には、旅先でやることが列挙されているのだが、その中の一節に「お寺や、神社にお忍びで引きこもっているのも面白い」とあるのだ。

わざわざ32層まで下りてきた挙句に、社に籠ってみる人がどのくらいいるのかは謎だ。

「え、そんなに大きな社が?」

「残念ながら籠るのは無理ですね」

まあそうだよな。あれだけ物議をかもした区分け作業だ。言ってみればさほど意味のない寺社が区画に割り込むのは難しいだろう。

小さなお社が作られただけでも驚きだ。

「しかし21本か。セーフエリアは円形なんだろ? ってことは半径が……」

「なんと333メートルだそうですよ」

「さすがだ」

俺は思わず感心した。つまり直径は666メートルだってことだ。徹底してる。

「外周部は、HDDのトラック上に配置されたセクタのように、内周部は矩形領域に分割したそうですよ」

「ダンジョン管理課も区分けには苦心したんだろうな」

「そのころ、鳴瀬さんにクマができてましたからね」

「クマったねー」

「言うと思いました」

外周を歩いていると、ちらちらと黒い犬のようなヒョウのような何かが、障害物の陰からちらりちらりと見えていた。

セーフエリアを信じるなら、ここから遠距離攻撃で倒すだけで経験値を得られるが、さすがにあまり近づいてきたりはしないようだ。一撃で倒すのはかなり難しいだろう。

「こんな下層にヘルハウンドがいるのか?」

「あれは双頭らしいですよ」

「総統?」

「フューラーじゃありません。頭が二つあるそうですよ」

「なんだそれ?」

「オルトロス(仮)ってやつですね」

「ひゅー。31層でキマイラもどき、32層でオルトロスって、エキドナの子供たちシリーズか? ケルベロスやヒュドラも出てきそうだな」

「31層のキメイエスは、デーモン系だからエキドナとは関係ないと思いますけど、ヒュドラの代わりにジャイアントリーチと名付けられたモンスターは32層に居るみたいです」

「頭がひとつのヒュドラみたいなものか」

「それってただの蛇じゃないですか。蛇的な要素はありませんけど、丸呑みされるそうですよ」

「丸呑み?! って、そういう情報が出回ってるってことは、丸呑みされた奴がいるわけ?」

「丸呑みされたのは、ポーターだったらしいですけど」

「そんなサイズなのかよ!」

「会いたくないですよねー」

「会いたくないな」

どうやらそいつは、南側の湿地にいるらしい。

32層は、南に湿地が、北に乾燥地帯があるのだ。

外周をぐるりと一周してみたが、ロザリオは帰ってこなかった。

「こりゃ、泊まりかね?」

「他の層に移動するわけにもいきませんから。ドリーは――」

「出せるわけないだろ」

「ああー、シャワーがー」

ダンジョンの最深部で文明の利器に毒されているような軟弱なセリフを吐く三好に、つい吹き出してしまったが、俺も人のことは言えない自信がある。

「それだけならこっそり21層へ転移して使って来ればいいさ」

「そっか。じゃ、テント張って視界を遮りましょう!」

「はいはい」

仕方なく、世界樹の下、31層への入り口とは反対側の平地にテントを設営して、タープの下に椅子を出して腰かけた。

どこかの区画が、探索者のテントエリアとして確保されているはずだが、どこだか分からないし、現時点では文句を言うものもいないだろう。

午後も半ばの日差しが、世界樹を通してタープの上に木漏れ日の模様を描いている。

「妙に気持ちいいな」

「清廉なセーフエリアの効果ってやつでしょうか」

「さあな。なんにしろ、しばらくは腰を落ち着けるしかないだろ」

「しばらく待ってれば、きっと戻ってきますよ」

何もやることがなくなった三好は、タブレットを取り出して鳴瀬さんに現状を連絡してから、ネットニュースを巡回していた。

俺はと言えば、31層への転移石を作る材料になる手ごろな石を探して歩くことにした。

その時、DADの施設の方から、発電機のタービンが回る高周波がかすかに聞こえ始めた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

32層で石ころを拾い、31層で人目を避けつつ転移石31を作り続けていたが、その間に31層を訪れた探索者はゼロだった。

通信環境が整った結果、上と下を繋ぐ人員がすべて不要になったため、リソースが32層の出口探しに集中しているからだろう。

手持ちの石がなくなり、32層へと戻った俺に、三好が慌てたような様子で声をかけてきた。

「せ、先輩! これ! これ!」

「なんだ? ロザリオが戻って来たんじゃないのか?」

「違いますよ! これ見てください!」

三好が差し出してきたタブレットには、『議員の皆さんは本当に優秀?』と書かれたサイトが表示されていた。