軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逢い引きかって? そう見える? あ、そう、見えないよね……。

* 続・碧盾女子寮長会議 *

「しかし売り手が不明……真夜中にひっそりやってきてその身元もわからない、というのは怖いですわね」

「議長、こう考えてはいかがでしょうか? 我々は他クラスの醜聞が広がらぬようこの文書を一手に集めており、その一方で、このようなスキャンダルを書き散らす相手を探っているのです」

「副議長、すばらしい提案ですわ。もしバレたらその線で行きましょう。この書き手……『名もなき男爵家の詩人』に、害が及ばないようにせねばなりませんね」

「ええ。『名もなき男爵家の詩人』の文才、恐るべしです。おそらく高学年で高い教養を持ったクラス……」

「それ以上はいけない。詮索はしないでおきましょう。私たちはただ、夢物語を受け取れればそれでよいのです」

「名もなき男爵家の詩人」がまさか、1年生、しかも彼女たちがまったく眼中にない「黒鋼」クラスの女子だなんてことは、思いも寄らないことだった。

いや、たったひとり、

(……そう言えば1年生ならば、統一テストで上位に食い込んだ黒鋼クラスの女子生徒がいたような……)

1年碧盾クラスの、三つ編みの女子生徒——ソーマに授業で助けられた彼女だけは一瞬、ちらりと、そんなことを思った。

「ねえ、マテュー……最近変じゃない?」

ぱちりとした大きな目が愛らしい、黄槍クラスのフランシスがマテューに言う。

「あ? なにがだよ」

「なんていうか、女子たちの僕たちを見る目が、変わった……っていうか」

「意味わかんねー。女なんて気にもしてないからわかるかよ」

「そ、そっか……ごめん」

フランシスはそれで引っ込んだが、違和感は消えなかった。

だからひとり、ぽつりとつぶやいた。

「なんか今までは『憧れ』とか『あわよくばお近づきに』みたいな感じだったのに……温かく見守られてるような感じなんだよな……。そう、母親とか姉みたいな視線? それに僕がマテューに話しかけると、やたらと声援があがるような気がする……」

* ソーンマルクス=レック *

ちょっとした資金稼ぎのめどがこれで立った。ルチカに期待していたのは、兄のトッチョに俺の授業をまとめたペーパーを毎日作っていた、という点、つまり「文章を継続的に書ける力」なのである。

あとはほんのちょっとの腐女子力なんだが……うん、意外な才能だったな! 俺の地元にいたミーアもたいがいだったが、ルチカは顔を真っ赤にしながら、

「こ、こんなことでソーマくんのお役に立てているのでしょうか……?」

と聞いてくるのが可愛い。トッチョの妹にしておくのはもったいない。俺の妹になるべき。はぁ〜〜〜可愛い妹とか末っ子にとっては夢のまた夢なんだが?

それはともかく。

定期配信する「裏ロイヤルスクール・タイムズ」は、新聞の 見た目(ガワ) でカモフラージュしながら、ちょっとした刺激を女子生徒たちに届けようというものだ。これってむしろ善行ではなかろうか? 想像の世界で傷つく人間はいない。登場人物は全員架空の人物だしね。うん、架空架空。それでわずかばかりお金をいただいてバチが当たるはずもない。

黒鋼クラスきってのショタ少年であるオービットの商会にツテがあって、格安で紙や印刷材を手に入れられたのは大きい。せこせこクラス内で内職すれば、内職者へのアルバイト代を払いつつも利益がしっかり出る。最初は手書きで進めたけど、売れ行きがいいとわかって木版印刷——つまり版画みたいなもんだな。あっちに切り替えたが、今のところ手書きの模写と比べても効率はトントンってところ。木版はその後の増刷が簡単だけど、証拠が残るからなぁ……。手書きに戻すか。

とりあえずこの 事業(・・) は毎週収益が出るのが大きい。お金ってのは定期的に回ると安心感が出るんだよな……ほんと、ルチカ様々やで。

バレて大事になるまでは続けよっと。

「——それで、いつまで俺もいたらいいのかな……?」

「まだ、ですもの。あと2時間は」

「いや日が暮れるから」

お金稼ぎについていろいろと思いを巡らせていた俺は今、ベンチに座ってぼけっとしている。

今日はド平日。

座学の授業が終了した放課後、「師匠、修行を」と毎日言ってくる修行お化けをどうやってかわそうかと思っていたところ、桃色の髪を持つ、精巧な作り物かと思ってしまうくらいの美少女——リエルスローズ嬢に声を掛けられたのだ。

——わたくしとのお約束、お忘れではありませんよね?

ネコのことである。いつになったら捕まえてくれるのかと。はい、すみません……という感じでトボトボと彼女についていくことになった俺だったが、背後では黒鋼男子たちによる、

——は? なにあれ?

——ソーマ、てめぇええ!

——絶対許すな、あいつを。

などなどの恨みがましい声の大合唱。できることなら代わって欲しいくらいなんだ……この子は確かに美少女なんだけど、俺の年齢ストライクゾーンよりも大幅に下だし、話聞かないし!

ともあれ俺は見事、白猫をつかまえた。ハハッ、こんなもの「 空間把握(ホークアイ) 」と「 生命の躍動(ライトインパクト) 」の組み合わせで力技で行けましたよ。うん。二ケタ回数以上失敗して身体中に擦り傷作ってからだけどね……。

そんなこんなで俺がキャッチしたネコちゃんを抱きしめ、例の、人通りの少ないベンチでリエリィが頬ずりしているのである。

「でもリエリィがひとりで楽しんでいるなら俺要らなくない?」

「……ソーマさんも、触りたい?」

「そういうことじゃないから、わざわざ、渋々差し出さないで。俺帰りたいからむしろ」

「でも誰か来たら教えて欲しいですもの」

あー、そういうことかー。監視役ですかー。ていうかそれくらい精神的に無防備にネコを堪能しているのですかー。

ネコもかれこれ1時間くらい抱きしめられ、頬ずりされ、なでられ、アゴをさすられ、最初は抵抗し、途中からは快楽に屈し、そして今は目のハイライトが消えてなすがままである。……ごめんな、時々ちらっと俺を見るなよ。捕まえて悪かったよ。今度なんか食わしてやるよ……。

でもこのネコ、きれいなんだよな。白い毛並みもこの世界のネコにしては珍しいし、目の色は赤と青のオッドアイである。すげーな異世界。オッドアイのネコかよ。

「さて、ソーマさん」

スッ、と背筋を伸ばして不意に真顔になるリエリィ。

「キルトフリューグ様から大事な話を言付かっていますもの」