軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

インタビュー・ウィズ・俺(数秒)

新聞部なんてあるんだな。でも学園新聞なんて見たことないんだけど? と思っていると、横からオリザちゃんが教えてくれる。

「白騎や蒼竜、黄槍のゴシップを集めて、碧盾に売ってるんだよ。間違ってもアタシたちが取り上げられたりはしない」

「あぁ……書かれる相手としても、読まれる相手としても、俺たちは見られてないってことね」

「アタシはツテで読んではいるけどね。こないだの統一テストのことなんて完璧にスルーだよ」

「え?」

「あっははは。記事になると思ってたの? アンタも意外とウブなところがあるね」

いやそうじゃなくて俺が驚いたのは……オリザちゃん読んでるんだ? ってとこなんだわ。いわゆるタブロイド紙みたいなもんだよね? オリザちゃんって結構ウワサとか好きなのねえ……。

そういうこと言うとケリが飛んでくるから言わないけど。

「——俺は関係ねぇよ。話はフランシスに聞け」

新聞部に話を聞かれ、生徒たちにも囲まれているのは1年黄槍クラスのマテューたちだった。レッドアームベアを倒した帰りに見かけたけど、あのときはこっちも疲れ果てていてろくすっぽ観察もできなかったな……。

ふーむ。じっくり見つめた俺。

なんていうか……容姿って公平じゃないよな!!

背も高くて顔もイケメンで家は金持ちとかどうなってんだよ?

マテューがインタビューを拒否ると、彼よりも頭ひとつぶん背が低く、金髪碧眼の少年がキラッキラのうさんくさい笑顔を振りまいて答えている。

「ま、あんなモンスターは僕らの手に掛かればちょろいってもんだよね! ひとりで討伐したというか、僕らはチームなんでね、こうして5人全員で表彰されたってわけ!」

「フランシスさん、コメントありがとうございます! 皆さんの仲間同士の強い絆を感じますね!」

「ねね、これって……新聞のトップ記事になっちゃうかな?」

「もちろんです。冒険者ギルド、 黄槍華騎士団(ブルームイエロー) の双方から感謝のメダルを贈られた生徒なんて、前代未聞ですよ。ジュエルザード王子殿下もことのほかお喜びだとか」

「よかった! 1年は白騎クラスばっかり注目されていたからね……これからは僕らもどんどん目立っちゃうかもよ~?」

フランシスが言うと、「そうだな」「マテューもそうだし、俺たちもまぁ、ちょっとフツーじゃねえっていうか?」「少々物足りねーとは思ってたんだよね」とかなんとか仲間が言っている。

ま、なんかよくわからんけど俺たちには関係ない話だな。

獣肉持ってるし目立つとアレだからちょっと迂回して進むかな——とか思っていたんだが。

「では実際にレッドアームベアを討伐したときのことを詳しく教えてくれませんか?」

……ん? レッドアームベア?

「なんていうか、僕らは5人全員がエクストラスキルを使えるからね。それに我が家に伝わる武器があれば、クマの1頭や2頭はすぐに倒せるっていうか?」

「すばらしい……!」

「いや~。これから騎士になろうという僕らからすれば、レッドアームベア? でしたっけ? 大騒ぎしすぎなんだよね。この国の治安はやっぱり騎士が守る。その先頭には、この『栄光の世代』でも筆頭となるべき黄槍クラスのマテュー、そして僕たちがいる」

おおっ、というどよめきと、碧盾の女子からは「マテュー様!」「フランシス様!」「かっこいい!」という黄色い声援が上がる。

インタビューをしているキャスケット帽をかぶった女子生徒は、くいっとメガネの位置を直した。緋色のスカートを見るに緋剣クラスなんだろう。

「ちなみにレッドアームベアの死体はどうされましたか?」

「死体? そんなもの放っておくよ! 汚らしい」

「おや……ということは肉を食べていない、と?」

「当然! モンスターの肉を喜んで食べるのなんて黒鋼クラスくらい——とウワサをすれば影だね、あんなところにいるじゃないか」

げっ。

彼らの視線が一斉にこちらを向いた。

一応、台車に載せた獣の死体には布をかぶせてあるのだが、鹿の足が一本はみ出している。それを見た女子生徒が「きゃぁっ!?」と叫び声を上げた。

「おいおいおい……マジかよ。金がないからって獣を狩るとか、野蛮すぎじゃね?」

「どうしてジュエルザード王子殿下はあんなクラスを放置しているのかしら……」

「騎士ではない。絶対にあり得ない」

「見てよアレ、ひどい格好……」

とかなんとか言いたい放題である。一日中森にいたんだから格好がひどいのは認めるけど。

……うん、それに疲労困憊のクラスメイトたちは一部をのぞいてどんよりした顔ではある。

すると新聞部の帽子の子が、こちらにやってきた。

「ちょうど良かった! モンスター(・・・・・) を実際に食べている黒鋼クラスの方々に聞きたかったんです! どうですか? 美味しいですか?」

ずずい、と聞かれ、

「え? あ、いや、そりゃ畜産の食肉のほうが美味いよ? でも、獣肉には独特の味わいが——」

「なるほど! コメント、ありがとうございます! 食べたくないけど仕方なく食べているということですね!」

「へ?」

さらさらさら〜っとメモを書かれ、帽子の子は去っていった。

えぇ~……。

それを機に、俺たちを汚物でも見るような目をしていた生徒たちも去り、黄槍クラスの連中も去っていった。

「————」

マテューが、俺をじろっと見てから、背を向けて歩いていく。

「お前さぁ、もうちょっと考えて……」

「発言しろよバカ……」

トッチョとオリザちゃんが 左(L) と 右(R) から呆れたような声を!?

* ロイヤルスクール・タイムズ *

『去る5月18日、サウスロイセン州州都冒険者ギルドには戦慄が走った。「辺境の死神」とも呼ばれる、極めて凶悪極まるモンスター「レッドアームベア」が州都南東に広がる大森林で目撃されたのだ。

この大森林は我が校の最も近くにある森林地帯であり、高学年の生徒ならば演習でも利用するために親しみがあるだろう。

冒険者ギルドは我が校にも危険が及ぶかもしれないと考え、連絡を取ってきた。しかしその心配は無用であった。

なぜならば我が校は、誇りあるクラッテンベルク王国の騎士を養成する学校。その武勇は、冒険者ギルドのレベルをはるかに越えているからである。

黄槍クラス1年生の5名は、すでに森林地帯で「レッドアームベア」と会敵していた。マテュー=アクシア=ハンマブルクを始めとするこの5名は入学時点ですでにエクストラスキルを使用できる水準まで武技を高めており、高い連携精度もあいまって「レッドアームベア」を見事に撃破した。

つまるところ、冒険者ギルドが情報を把握した時点で、すでにその脅威は騎士の剣によって払われていたのである。

これに感銘を受けたサウスロイセン州州都冒険者ギルドは、黄槍クラス1年生5名に感謝のメダルを贈呈することとし、白騎獣騎士団から連絡を受けた 黄槍華騎士団(ブルームイエロー) からも同様のメダルが贈られることとなった。冒険者ギルド、騎士団の双方から感謝のメダルが贈られることは極めて異例で、1年生がこれを達成したということは特筆すべきことだろう。「栄光の世代」ともウワサされる今年の1年生の実力は、そのウワサを現実に変える可能性を持っている。

一方、同じ1年生でも黒鋼クラスは貧困に窮し、モンスターを討伐し、その血肉を食しているともっぱらの評判だ。記者が危険を冒して取材を試みたところ、「味はマズイが食わなければ生きていけない」と肩を落としていた。黄槍クラスとは雲泥の差であり、今後の事態改善が望まれる。

今回メダルを贈られた黄槍クラスのメンバーは以下の通り。マテュー=アクシア=ハンマブルク……』