軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

特別閑話

「お土産がある」

「僕にか?」

「そう、トトにお土産がある」

「ほう?」

ビニールハウス内で謎の植物たちに水をやっているトトを捕まえた。

忙しく動き回っていたが、俺のお土産には興味を持ってくれたみたいだ。

ヘラン領から学園に持って帰った物がちらほらとある。

その中にトトへの土産もあった。

彼にぴったりなものだ。結構自信があって選んだ逸品だ。

「これだ」

ポケットから取り出したのは、瓶に入った我が領の温泉水だ。

「水?」

「そうだ。だが、ただの水じゃない。温泉水だ」

「え……なんでそんなものを?」

「飲めばわかる」

「いやだよ。人が体を洗った後の水だろう?」

「違う。流石にそんなものは飲ませたりしない。ちゃんと入浴用とわけてある。これはすごいぞ。いろいろな種類の温泉があるが、こいつはすごい」

「すごいってなんだよ。怖いよ」

「殺菌消毒はしてあるし、空気にも触れさせていないから衛生面は大丈夫だ」

「そういうことじゃない。なんでお土産が温泉水なんだよ。もっと他になかったのか」

「あったが、これは本当にすごいぞ」

「えー」

ほれほれ、と催促しているとトトもあきらめたように瓶を手にした。

「死なない?」

「失礼な」

「うっ、うう」

意を決してトトは瓶の蓋をあけ、こちらをチラチラ見ながら中身を一気に飲み干した。

「どうだ?」

「う、うん?ちょっと変な味したけど、普通かな」

「今飲ませたのは、酵素入り温泉水だ。流行りの、酵素だ」

「いや、知らないよ」

「サプリメント温泉水とでも名付けておこうかな」

「なにそれ?怪しくない?」

「どうだ?体の調子は」

「いや、何もないけど」

「なに?やはり瓶で持ち運んだのがダメだったか……」

「ちょっと!僕で実験しないでくれ!」

うーん、いいお土産だと思ったがそうでもなかったみたいだ。

それにしても今日はいい天気だ。ギャーギャー騒ぎ立てるトトも気にならない、爽快さだ。

「こんな日は、水やりも精が出るな」

「それを君が止めたんだけどね」

「温泉水を植物たちに……」

「少なくとも僕のところではやらないでくれ」

「んまぁ、それはまた今度でいいや。ところでこんな天気のいい日に彼女の姿を見かけないね」

彼女とはもちろんアイリスのことだ。

こんな晴天気に畑に来ないなどありえない。

彼女と言っただけだが、トトもアイリスのことだと理解したようだ。

「来てるよ」

「姿が見えないけど」

「外で穴を掘っているんだよ」

「穴!?……トラップ!?」

野菜だけでなく、獲物まで取るようになったのか?アイリス。それはヒロインとしてどうなんだ!

イノシシなんか仕留める君を見た王子は、百年の恋も冷めてしまわないかい!?

ちなみに捌き方はヴァインに聞くといいと思うよ。

「違うさ。休み前に植えた野菜の収穫だよ」

「収穫か、早いな……」

大事な野菜を摂られないようにトラップか。王子がひっかかると面白いが……さてさてどうなるか。

「変な想像しているようだけど、たぶん違うから」

「アイリスは逞しい女性だからいろいろと想像しちゃうよね。で、穴を掘っている真相は何だい?」

「自分で見てみるといい。きっと君も夢中になって穴掘りを手伝うはずさ」

「ほう?ちなみに俺は温泉を掘り当てたことがる。掘ることに関してはすごいよ」

「はいはい」

トトは自分の水やり作業に戻っていった。

休み前に比べると更に植物が増えていた。いびつなものが多い。

世の役に立てばいいが。

さて、アイリスの方に行ってみるか。

トトいわく、俺も興味惹かれるらしいし。これは期待だ。

ビニールハウスを出ると、確かにザックザックと音がする。

辺りを見回すと土が盛り上がった部分がある。

近づくと、アイリスの綺麗な髪の毛が土を被りながら動いていた。

確かにアイリスは穴を掘っていた。

スコップ片手にそれは満足そうな顔で作業をしている。

「何をしてるんだい?」

「えっ?あ、クルリ」

アイリスはこちらを確認すると、その掘っていた穴の側面をペチペチと叩いた。

叩いた音は土の音ではない。ぴちぴちとしたみずみずしい音だ。

「芋だよ。芋!」

なんとも素晴らしい笑顔で返答があった。

「芋!?」

見るからにかなりのサイズだ。

アイリスの肩まで埋まるほどの穴を掘っているが、芋はまだ土に潜り込んでいる。

いったいこれは芋と言っていいのか?

「でかくない?」

「大きいよ。しかも収穫も早くて、すごいよね!」

「うん、すごい!」

誰かさんも芋が大好きだが、アイリスも芋が大好きなようだ。

「スコップはまだある?」

「あるよ」

こうしてトトの言う通り二人で芋を掘ることになった。

「トトの野菜凄いね。私人生で一番感激してるよ」

「俺も感激してる。早く全長を見てみたいな」

掘っているとすごく楽しかった。

黙々とした作業がなんだか心地いい。

「どうしよう。一生かけても食べられないような芋だったら」

どんな芋だ、それは。まるで宝くじを開ける前のような気分だな、アイリスさん。

「このスコップはあまりよくないな。こんど先っちょを改良したのを作ろう」

「はーい、是非お願いしまーす」

疲労がアイリスのテンションを上げているようだ。

純粋にスコップの改良を望んでいる面もあるだろう。

「ねぇ、芋とったら何か作ってあげるね」

「ああ、楽しみにしているよ」

「ほかにもアークとかも呼んであげようか」

「そうだね」

エリザ譲も呼んであげたいね。きっと喜ぶと思うよ。彼女芋が好きだから。

掘って、掘って、掘りまくり、昼までには掘り終えた。

見事に芋収穫成功だ。

「大きかったねー」

「ああ、手ごわかった」

「疲れたでしょ?先に収穫したトウモロコシがあるよ。みずみずしくて、いかにも甘そうなんだー」

「へぇー、もしかしてそれもビッグな野菜かい?」

「もちろん!とってくるね」

水できれいに洗われた、黄色いつるつるの肌をしたそいつがやってきた。

アイリスの言う通り、みずみずしくて甘そうだ。

そして何より、大きい。

アイリスはトウモロコシをその体に抱きしめて持って来ている。

どうやって食べるんだろうか。

「一個が大きいから、これを三人で分けて食べよう。トトが言うには生で食べられる品種らしいから、生でいこう!」

「嬉しそうだね。昼はトウモロコシ単品か。それも悪くない」

「トトを呼んでくるね」

手渡されたトウモロコシを受け取り、嗅いでみた。

甘い香りが強い。重さもずっしりとあり、中身が詰まっているのがわかる。

力仕事のあとなので、お腹はペコペコだ。今にも噛り付きたい気分になってくる。

これはなかなかいい野菜だ。俺もちょっとだけビック野菜にはまりそうである。

「クルリ、先に食べていよっか」

アイリスが戻ってくると、そう告げてきた。

「まだやることあったみたいだな」

「うんうん、全て終えたらしいけど、お腹の調子がすぐれないからトイレに行くって。だから先に食べていようか」

「ははは、あいつお腹弱そうな顔してるからなー。どうせ、試作中の変な植物でも口にしたんだろ」

「うーん、トトの野菜は新鮮なんだけどね。それに自分の植物にもしっかりとした管理をしているって言ってたけど」

「食べよ食べよ。このトウモロコシいい香りがするんだー!」

「うん!私ももう我慢できないよ」

こうして二人で噛り付いた。

でかいチーズにかぶりつくネズミはきっとこんな気分なのだろう。幸せだ。

ネズミも案外幸せな思いをしているのかもしれない。

「おいしいね」

「うん、本当においしい。トトのやつ、やっぱり凄いな」

「うん、天才だよ。いつかお礼をしなくちゃ。そういえば、トトにお土産があるとかって言ってなかった?渡したの?」

「ああ、渡したよ。温泉水」

「温泉水?」

「そう、温泉水……。あ……」

すまぬ!!!!