軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20話_閑話

「姉さん、なぜここに!?」

久々に会うや否やラーサーは驚愕の表情を示し、大声をあげた。

「なぜって、ここは王都の王城で私の家でもあるのだからいるのは当然でしょ?」

「しかし、兄さんもアニキも2.3週前にはすでに出発しています。

間もなく学園が始まるこの時期になぜマリア姉さんは家にいるのです?」

兄さんもアニキも?変なことを言うようになったわね、この子も。

何か変なものでも見えてるのかしら。

「商人に依頼していたものがなかなか届かなくてね。ようやく今日届いたところだから、やっと学園に戻れるわ」

「商人に依頼?」

弟の疑問に答えるべく、それを差し出した。

「これよ」

「ペンダントですか?この石は宝石には見えませんが」

「そうよ、宝石ではないわ。でも、これは曰くつきの石なの」

「またですか!?マリア姉さんはそういった怪しいものに手を出しすぎです」

「怪しくなんかありません!」

「姉さんは物覚えがよく何でもできてしまうのに、こういった面だけ騙されやすい」

「そんなことはありません」

我が弟ながら見識の狭いことだ。

「で、今度のはなんの効果があるのですか?」

ラーサーがやれやれと言った表情をしている。

「これはね、身に着けていると奇妙な出来事に遭遇することができる石なの」

「奇妙って、それ危なくないんですか?」

「大丈夫よ。私は最強だから」

「はぁ、そんなもののために学園に遅れるのですか。

早めに出発したアニキを見習ってくださいよ」

「ふん、甘いわねラーサー」

「何がです?」

「入学式まであと3日あるのよ。私の騎乗技術があれば余裕で間に合うわ」

「馬車で1週間かかる距離ですよ。そんな無茶な」

「大丈夫、執事に頼んで普段から馬の調教はばっちりよ」

「僕が心配しているのは馬ではありません。マリア姉さんが心配なのです」

「あら」

ラーサーの頭をなでなでして、ウィンクした。

「最強の姉に不可能はないわ」

「はー、もう今後はこんなことしないで下さいよ。

でも、姉さんのそういったところはすごいとも思います。

ひねくれ者の兄さんや、臆病者の僕なんかよりずっと一国の王に向いていますよ」

「じゃあ私がなろうかしら」

ラーサーはドン引きな顔をした。

冗談のつもりだったのだけれど、かわいい弟は本気にしたらしい。

「じゃあ、私も行くわね。お母様にはくれぐれも言わないように」

「わかりました。従者を何人かつけさせます・・・あれっ!?姉さん!?どこです!?」

従者なんてつけられてなるものですか。

彼ら遅いんですもの。

愛馬のホワイトちゃんに騎乗し、疾駆した。

バッグには最低限の食料とお金だけ入れている。

前回は3日で学園までついた。

今回は2日半を狙ってみようかしら。

朝方の出発なため街道にはほかに移動している人物は見当たらなかった。

快調、快調!

この分なら新記録も達成できそうね。

「頑張ってホワイトちゃん」

久々に乗ってもらってホワイトちゃんも嬉しそうだ。

「旅のお方!少し待っていただけないでしょうか」

しばらく走った後、不意に街道沿いから声をかけられた。

馬を止め見てみると、7.8歳くらいの男の子が立っていた。

「何かしら?今、急いでいるのだけれど」

「すみません、急に呼び止めてしまって」

少年は泣き入りそうな声だった。

「旅のお方、無理なお願いだとは存じますが、その馬がどうしても必要なのです。お貸しいただけないでしょうか」

「無理な相談ね」

「お願いします。お金はあまりありませんが、何かお礼を必ず致しますので」

うーん、どうしようか。

「訳ありの様ね。話してみなさい」

「おばあちゃんがもうすぐ亡くなりそうなんです。最後に大好物だった砂糖餅を食べてほしくて、村まで買いに行ったのですが、急いで帰っていたところ足をひねってしまいました。このままじゃ、このままじゃ、おばあちゃんに、ひっく」

少年は言い終わることなく涙を堪えきれなくなっていた。

今ので大体の事情は分かった。

さて、馬を譲ったら確実に遅刻だ。どうしたものかしら。

「馬を貸すだなんて、無理な相談ね」

「そうですか。いえ、いいんです。わざわざ足を止めていただいただけでもありがたい事です。

どうぞ旅を急がれて下さい」

「でも、後ろに乗せて連れていくことは出来ます。それで良ければ」

少年の顔がにこやかに晴れた。

答えはもちろんそれでいいだった。

さてと、これで新記録はお預けか。またの機会にでもチャレンジしよう。

「おばあちゃん!砂糖餅を買ってきたよ」

「おやおや、ありがとうね。わざわざ大変な道乗りだったじゃろ」

「そんなことないよ。おばあちゃんのためだもん」

「私は幸せ者だよ。本当にいい人生だった」

ぐすっ、うん、流れで家に入って来たけれど、助けてよかったわ。

いい孫をお持ちで、おばあちゃん安らかに。

「どうも息子がお世話になりました。最期に母に砂糖餅を食べさせてやることができてよかったです。これはほんのお礼です、大層なものではございませんがお受け取り下さい」

少年の母から、感謝の言葉とお礼の物を貰った。

手渡されたのはガラスの腕輪だ。

安物には違いないが、庶民にとってはそこそこ値の張るものだ。

断るのは悪いので貰っておいた。

「では、私先を急ぎますので」

「はい、この御恩は一生忘れません」

「さぁ駆けるのよホワイトちゃん」

ぎりぎりだ。

意外と時間を食ってしまった。

でも間に合うだろう。去年よりも騎乗技術は上がっているのだから。

「あいや、旅のお方待たれよ!」

街道沿いに走っているとまたもや呼び止められた。

「何かしら?結構急いでいるのだけど」

「ああ、すまない。大したことじゃないんだが」

なら、止めないで下さる?とか思ってしまった。

「その手に持っているガラスの腕輪を見せていただけないだろうか」

これ?どこにでも売ってそうなものだけれど。

右手に着けていたガラスの腕輪を差し出した。

「ああ、やっぱりそうだ。これは昔妻に送った腕輪と同じものだ。なんだかすごく懐かしい気分だ」

奥さんには先に旅立たれたのだろうか?

ここは深く聞かないでおこう。

「なんだか、あの頃の気持ちが蘇ってくるようだ。金はなかったが、愛はあった。二人の熱い気持ちだけで他には何もいらないあの日々。お腹もすいてたし、ひもじい思いもいっぱいした。でも、幸せだったなー」

「ステキな奥さんだったのね」

「ああ、でも今はもういない。二人の思いは冷めてしまった別れたんだ。妻は今日、船で異国の地に行くと聞いている。金輪際会うこともないだろう」

「そう」

なんだか、悲しいお話ね。

聞かなきゃよかったわ。

「もう一度会いたいな。昔の気持ちを思い出した今なら・・・。

メーデイアともう一度会いたい。しかし、船はもう出発か。私の足では到底追いつけはしまい。

メーデイアよ、いろいろ迷惑をかけたな。異国の地では元気で過ごすんだぞ」

オジサンの目から一粒の涙が垂れたのが見えた。

なんで見ちゃったのかしら私。

んーー、遅刻か。

もう、いいわ!!

「乗りなさいオジサン!港までとばすわよ!」

「お嬢さん」

「さぁ」

「はい!」

「メーデイア、君に伝えなければならないことがある!」

「いまさら何よ。あなたと私はもう終わった仲なのよ」

「そんなことはない。今日、昔お前に送った腕輪を見た。その瞬間昔の気持ちをすべて思い出したんだ」

「そんな、今から私異国の地に行くのよ」

「頼むメーデイア、行かないでくれ。

昔は何も持っていないかった。でも君がいたから僕は幸せだった。頑張ってお金を貯めて君に腕輪を送ったあの頃の純粋な気持ちを思い出したんだ。お願いだ、行かないでくれメーデイア」

「・・・、あなたこれを見て」

「これは!!あの時僕が送った腕輪じゃないか。まだ持っていたのか!?」

「これだけはどうしても捨てられなくて。持ってきちゃったの」

「メーデイア」

「あなた」

ぐすっ、夫婦の愛が戻ったのね。オジサンを連れてきたよかったわ。

夫婦末永くお幸せに!!

「旅のお方ありがとうございました。これからは夫と二人で頑張っていきます。

これは異国の地で生活費に変えようと思っていた銀の鍵です。お礼にお受け取りください」

手渡されたのは銀でできた謎の鍵だ。

こんな高価なものを貰ってよいのだろうか。

まぁ、夫婦が幸せそうなのでいいかしら。

「では、先を急ぐ身ですので」

「ありがとうございます」

「さぁ、駆けるのよホワイトちゃん」

遅刻は確定した。

後はどれだけ傷口を浅くするかどうかね。

迷惑をかけるわ、ホワイトちゃん。

「もし!旅のお方!」

無視無視。

「またれよー!」

何かしら、本当に急いでいるだけれど。

馬を止めた。ホワイトちゃんもいらだっているように思う。

「何かしら!!」

「えっ、い、いや」

「はやく!」

「ああ、その手に持っているものを少し見せてもらえないだろうか」

手に持っていた銀の鍵を差し出した。

「やっぱりだ。これはかつて人々に恐怖を与えた吸血王を封じ込めるための銀の鍵。

曾祖父の代より探し求めて、100余年。ようやく見つかったか」

「あげるわ」

「いいのか?なんという幸運か」

男は鍵を受け取ると、その場に膝をつけ泣き崩れた。

「はは、祖父様よ、父様よ、歴代先祖様よ、私をお笑いください。念願の封印の鍵を見つけたというのに、私は封印の時に間に合わないようです。明日の日が昇るまでに古の洞窟まで徒歩で行くだなんて無理な話だ。俺はいつも肝心なところで抜けているんだ。なんて愚かな男なんだ」

男は頭も地面につけて、こぶしを振り下ろしている。

「先祖に顔向けできぬ」

なぜ聞いてしまったのか私!!

「・・・乗ればいいじゃない」

「えっ?」

「っ乗ればいいじゃない!!」

『お前はかつて我の身を封じたあの伯爵一族のものか。またしてもあの一族に封じられるとはな』

「ああ、そしてこれが最後の封印の鍵だ。お前はこれで永久に封印される」

『我が野望がああああああああ』

「先祖様、我が一族の悲願がここにかないました。これで私もようやく解放されます」

泣けないわね。

助けなきゃよかったわ。

「旅の方、この伝説の剣はもう俺には必要ない。どうか受け取ってはくれないか」

これは本当にいらないわね。

男の顔を見るとすがすがしい晴れやかな顔だった。

一生かけた役目が終わったのだ。ここは受け取っておくべきなのだろう。

「では、先を急ぐ身ですので」

「ああ、旅の者よ、そなたはこの国の恩人だ」

「さぁ、駆けるわよホワイトちゃん」

もう声をかけられても止まるもんですか。

絶対に止まらない!!

「旅の方!」

しかし、条件反射で止まってしまった。

まずいわね、体が覚えだしてきているわ。

「その腰につけた剣は、かつて賢者とよばれし」

「乗るんでしょ!?どうせ乗るんでしょ!?さっさと乗りなさい!!」

「は、はい」

「目的地はどちら!!」

「え、エレノワール学園」

「・・・、あらステキ」