軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鳥さんの策略

冬のある日。僕がいつものように森に行くと……ちょっと、雰囲気が違った。

「ら、ライラ。どうしたのそんなところで」

泉の脇、馬の休憩所の中。沢山の馬に囲まれてあったかそうなそこで、ライラが座り込んでいた。

「ああ、トウゴ。ちょうどよかった。ちょっとこれ預かってて。すぐ戻るから」

そしてライラは僕を見つけると、ずっと抱きかかえていたらしいものを、はい、と僕に渡してくる。

……それは、ライラのひざ掛けに包まれた、人間の頭くらいのサイズの、卵だ。ええと、殻が空色をしているから、これはあの鳥の卵だと思うんだけれど……。

「私のたまごよ」

ライラは、そう、言ったんだよ!

「……えっ!?な、何!?今、なんて言った!?」

「だから、私のたまごだってば」

聞き間違いだと思って聞き直してみたけれど聞き間違いじゃなかった!なんてこった!

ら、ライラってたまごを産むものだったんだろうか!?そもそも、誰との間のたまご!?鳥との間のたまご!?いや、もう駄目だ、僕の頭の中、ぐちゃぐちゃ!

「じゃあ、すぐ戻るからよろしくね。くれぐれも気を付けてよね」

「あ、うん……」

……けれど、本気でたまごの傍を離れるのが心配そうなライラを見ていたら、問い詰めることなんてできないし、僕はたまごを渡されちゃったし……。しょうがないからこのまま、僕はしばらく卵を抱えて馬に囲まれて、ライラを待つことになった。

ああ、本当に、本当に……なんてこった!

それから少しして、ライラが戻ってきた。ライラはどうやら、毛布を取りに行っていたらしい。新しく毛布が一枚追加されて、巣篭りはますます暖かそうな様子になった。

「あの、ライラ。ここでたまご、あっためるの?」

「ええ。駄目?」

「いや、いいけど……」

僕のわがままかもしれないけれど、なんとなく、僕の家から見えないところでやってほしかった。いや、止めないけれど。ライラがここがいいって言うんだったら、止めないけど……。

「あの、ライラ。僕はライラを止めるつもりはないけれど、その、他の人に止められなかった?」

ちょっと気になって聞いてみる。いや、だって、どう見ても異常だよ、これ。ライラは鳥のたまごを自分のたまごだって勘違いしてるみたいだし。いや、ライラが本当にたまごを産んだのかもしれないけれど、そうだとしても、いや、そうだとしたらますます大変なことだよ、これは!

「ええ。だって皆、忙しいから他の人のことなんて構ってられないわよ。それぞれに自分のたまごをあっためてるし」

……でも、ライラから返ってきた言葉は、そんなものだった。

え?あの、皆、自分の、たまご……?え?

ライラが馬に埋もれてぬくもりつつ丸くなって眠り始めたので、僕は先生の様子を見に行く。先生ならこの状況をなんとかしてくれる気がするし……先生までもが抱卵してたら大変なことだよ!

ということで先生の家の庭にお邪魔すると……なんと、たまごが置いてあった!

ころん、と無防備に置いてあるたまごは、見ているとなんとなく放っておけないかんじだ。僕はたまごを抱き上げて、どうしようかなあ、なんて考えていると……。

「ああ、トーゴ!それは僕のたまごなんだ。どうか返しておくれ」

「へ?」

縁側にやってきた先生が、そんなことを言いだした!

先生があんまりにも不安そうな顔でおろおろしているものだから、『多分先生のたまごじゃないよ、これ』とも言えず、どうぞ、とたまごを差し出す。すると先生は大切そうにたまごを抱えた。

「よかった、僕のたまご……もう離さないぞ」

先生があんまりにも愛おしそうにたまごを抱くものだから、僕、何も言えなくなってしまう。ああああ……。

「ありがとう、トーゴ。君はたまごの恩人だ!」

「あ、うん。お役に立てたなら、何より……」

……ああ、先生までおかしくなってるなんて!

「うん……ところでトーゴ。君ももしかして、温められる必要があるんじゃないのかい?」

「え?えっ?えっ?」

「これは大変だ!僕は何をぼーっとしていたんだ!?師走の寒さの中にトーゴを放っておいてはいけない!さあトーゴ!こっちへおいで!」

「え、あの、先生、ちょっと」

……おかしくなった先生は、僕を引っ張ってせかせかと縁側を乗り越えて、せかせかと和室へ向かっていって……。

「よしよし、いい子だ。しっかりあったまるんだぞ」

僕は炬燵の中にすぽん、と入れられてしまった。……ふに、とした感触があったので何かと思ったら、魔王が既に炬燵の中に入っていた。ああ、魔王は炬燵が大好きだから!

「そして、僕もこうして……これでよし!」

更に、先生は僕の隣にするりと潜りこんできて、2人並んで炬燵の中。炬燵に肩まですっぽり潜って、僕ら、こたつむり。

「寒くないかい?トーゴ」

「あ、うん、寒くはないんだけれど……」

先生は僕と、僕と先生の間にある卵と、更にそこにふにっと潜りこんできた魔王とを一緒に腕の中に抱き込んで、なんだか幸せそうにしている。

……あの!卵どころか僕まであっためなくてもいいと思うんだけれど!

このまま炬燵に取り込まれてしまいたいくらい炬燵は居心地が良かったのだけれど、ライラが大変なことになっていることを思い出して、更に、先生の甲斐甲斐しい抱卵シーンを見て、『こうしちゃいられない!』と思い切って炬燵を出た。

「おや、トーゴ。何処へ行くんだい?」

「ちょっとそこまで」

「そうかい?できればここで温められていてくれると嬉しいんだが……」

……先生と炬燵の誘惑はとっても甘やかなのだけれど、でも、僕は炬燵に戻る訳にはいかない。先生とライラのためにも。

それに……こう、愛おしそうにたまごを撫でたり、甲斐甲斐しくたまごに毛布をかけてやったりしている先生を見ていたら、なんとなく気恥ずかしくなってきちゃう!こういう時には逃げるに限る。すたこらさっさ、すたこらさっさ。

ライラも先生も駄目だったとなると、いよいよ誰かの助けが欲しい。僕は正気の人を探しに、森を歩いてみたのだけれど……。

「あ、トウゴ。悪いな、ちょっとここ、借りてるぜ」

「うん。それはいいんだけれど……フェイ、どうしたの?」

フェイが、木苺の茂みに囲まれた小さな広場で、丸くなっていた。ああああ……。

「いや、たまごあっためなきゃいけねえからさ。この寒い中外に出しといたら冷えちまうだろ?」

案の定、フェイのお腹にはたまごが抱きかかえられている!フェイまで抱卵させられてる!なんてこった!

「あの、フェイ……フェイはたまごをあっためるのが、好きなの?」

「いやあ、全然そういうの、なかったんだけどな。でも、いざ産まれちまうと、こう、なんか可愛くってさ……」

フェイはちょっと気恥ずかしそうにもじもじしながら、たまごを抱いている。フェイの横では火の精が首を傾げているので、多分、火の精は正気なんだと思うんだけれど。

……うう、何故フェイもたまごをあっためてるんだろうか。何があったんだろう。何かは絶対にあったんだと思うんだけれど!

「あの、フェイは何時からこのたまご、あっためてるの?」

「ん?今朝からだな。今朝、たまごが産まれたから……」

どうやら、この状態になっちゃったのは今朝かららしい。ああよかった。昨夜からこのままだったりしたら、流石に皆、風邪をひいてしまうよ。もう屋外がすっかり寒い季節なんだし……。

「ちょっと寒そうだし、毛布出すね」

「ああ、ありがとな!……あったかいなあ。よかったな、たまご」

フェイが風邪を引かないように、と思って毛布を描いて出したら、フェイはそれで自分ごとたまごをくるくる包んで、にこにこ嬉しそうにたまごに話しかけている!ああ!僕の親友が、おかしい!

「ラオクレスはたまごを連れて歩いているんだね……」

「ああ。下手に触れると壊してしまいそうで怖くもあるんだが、たまごを置いて巣を離れるのも不安でな」

もう僕は驚かない。そう。ラオクレスが抱卵していたとしても、もう驚かない。驚かないぞ。

ラオクレスは卵を抱っこして歩いている。うっかり落とすことが無いようにか、たまごは長い布で包まれつつ、ラオクレスのお腹あたりに固定されていた。赤ちゃんがこういう風に抱っこされている場面を街中で見たことがある。正にああいうかんじだ。

「……あの、ラオクレス。それはラオクレスのたまごなの?」

「ああ。俺のたまごだ」

試しに聞いてみたのだけれど、ラオクレスは如何にも『愛おしい』っていう顔で卵を撫でているばかりだ。あああ、ラオクレスがこういう顔をするなんて!

「自分のたまごを抱く日が来るとは思っていなかったが……実際に抱いてみると、どうにもしみじみと幸福だな。先輩の気持ちがようやく分かった」

しかも幸福感を得ている!ラオクレスのたまごじゃないよ、これ!絶対に!というかそもそも、ラオクレスは本来、ラオクレスのたまごを抱く日なんて永遠に来なかったはずなんだよ!ラオクレスは卵生じゃないはずだよ!

そうして僕は最後の希望、クロアさんのところへ走って行ったのだけれど……。

「あらトウゴ君、こんにちは」

クロアさんは揺り椅子に座ってゆらゆらしながら、そのお腹にたまごを抱えて、たまごごとひざ掛けでぬくぬくしている。ああ、クロアさんまで!

「その卵は一体……」

「私のたまごよ。可愛いでしょう?」

ああああ!クロアさん、クロアさん……!クロアさんまでこうなっちゃったなら、もうおしまいだ!僕にはどうすることもできない!

……と思っていたら。

「……っていうことにしてるのよ。大丈夫よ、トウゴ君。そんな顔しないで?」

なんと、クロアさんはくすくす笑ってそう教えてくれた。

「まあ、私、幻術の類はあんまりかからないものだから。どうやら他の皆は何か、魅了か幻惑か、そういう魔法に掛かっちゃってるみたいだけれどね」

ああ!よかった!クロアさんは正気だった!よかった!本当によかった!ありがとうクロアさん!やっぱりクロアさんは頼りになるなあ!

「よかった……正気の人が居てくれてよかった……僕、もう、どうしようかと」

「あらあら、心配がらせちゃったかしら?ごめんなさいね」

クロアさんはくすくす笑って、僕を抱きしめてくれた。あの、あの、これはこれで落ち着かない!

「それで、あの、クロアさん。これは一体、どうしてこうなっちゃったんだろうか」

落ち着かないので慌ててクロアさんの腕の中から脱出して、様子を聞いてみる。クロアさん以外、皆ああなっちゃってるみたいだから……。

「多分、鳥さんが犯人よ」

……そして、クロアさんがそう教えてくれる。

あの、鳥……やっぱりあの鳥が犯人か!

「どうやら皆、鳥さんの幻術にかかっているみたいなのよね。このたまごを自分のたまごだと思っちゃってるみたい」

ああ、うん……。そ、それにしてもなんで、あの鳥はそんな魔法を?というか、あの鳥、そういう魔法、使えたんだ……。なんだかショックだ。

「鳥さんが持ってきた木の実を食べたら皆、ああなっちゃって……何かしら。鳥さんはトウゴ君の時といい、不思議な木の実をよく使うけれど、あれが鳥さんの魔法なのかもね」

「ああ、そうなんだ……」

よく考えたら、あの鳥も森だもんなあ。僕だって森だし、そうなるとそういう魔法の力を森の力と合わせて、『見つけた卵を自分の卵だと思い込んじゃう木の実』とかも生みだせてしまうのかも……。うう、あの鳥、妙なところで器用なんだから!

「皆を正気に戻すことってできないのかな」

「そうねえ……まあ、できなくはないけれど」

えっ。できるの?

……いや、でも、クロアさんができるのにやっていないっていうことは、きっと、すごくコストがかかるとか、そういう……。

「魔法を解くこともできるとは思うのだけれど、面白くて」

……あ、うん。そっか。まあ、うん……面白い、かなあ?新鮮ではあるけれど。ううん……。

「それに、必要だから鳥さんがそうしてるんでしょう?きっと」

「まあ、あの鳥のことなので」

「なら少しくらい協力してあげてもいいと思うのよね。私達、森に住まわせていただいているわけだし」

そういうかんじがほとんど無いけれど、あの鳥は森の精霊だもんなあ。確かにそう考えると、鳥のお願いは聞いてあげても……いや、でも、何もこんなやり方をしなくたっていいと思うんだよ!

……ということで、直談判しにいくことにした。鳥に。

「ねえ、ちょっと、あのさ。皆に抱卵させなくてもいいと思うんだけれど」

鳥の巣まで行って、そこで早速訴えてみたんだけれど、鳥は、キュン、と鳴きつつ首を傾げるばかりだ。全く以て問題だと思っていない顔だ!

「大体、君、自分で産んだ卵は自分であっためた方がいいんじゃないかな」

もうちょっと言ってみるけれど、やっぱり鳥は首を傾げていて……更に、僕のマフラーの裾を嘴で咥えて、くいくい引っ張って巣の中に連れ込もうとする。

「あ、ちょっと待って!引っ張らないで!」

ライラから貰ったマフラーを駄目にされるわけにはいかないから、大人しく巣の中に連れ込まれて……そこで。

「……もしかして」

僕は、そこに残っていたらしい卵1つを、ころん、と抱かされてしまった。そして鳥は、満足気。いつものことながら。そう。いつものことながら!

「君、あの……もしかして、僕が現実との行ったり来たりで森に居ないから、他の人に幻術掛けて、卵をあっためさせてる……?」

恐る恐る聞いてみたら、鳥は元気よく、キョキョン、と鳴いて返事をしたのだった。

……非常に納得がいかないのだけれど、どうやらうちの鳥は元々、僕に卵を温めさせるつもりでいたみたいだ。けれど、僕が最近、森と向こうとの行ったり来たりで居ないものだから、それで、森のみんなに1つずつ卵を温めさせている、らしい。1人1つなのは多分、それぞれの魔力量が僕と比べると少ないからじゃないかな。当然、精霊と人の子の間には魔力量の差があるので……。

……多分、一気に卵がいっぱい産まれちゃったのがこの抱卵事件の原因だと思うんだよ。今回、卵が6つもあるみたいで、最初に僕があっためた時の2倍なわけだし。だから鳥は人の手を借りることにしたんだと思う。

まあ、そういうわけで……そういうわけで、しょうがない。このままだと、皆が抱卵させられ続けてしまうし、そうなると皆の体調も心配だ。今は冬で、なのに皆なんでか屋外で抱卵しようとするものだから!

それに、もし鳥が『やっぱり抱卵させるには魔力が足りないな』って判断したら、皆に例のものすごく美味しくない木の実を食べさせてしまうかもしれない。あれ、食べると魔力が妙なことになって熱が出てとっても辛いから……そんなことをさせるわけにはいかないんだよ。

ということで。

「あ、あの、ライラ……」

「ん?どうしたのよ、トウゴ」

「ライラの卵、僕もあっためても、いい?」

「えっ」

……僕は、皆のたまごを回収することにした。

「……ちょっとだけよ?」

「うん。ありがとう」

ライラからたまごを受け取って、僕はお腹に抱き込む。抱卵歴はこの森で鳥の次に長い僕なので、まあ、慣れたものです。

「じゃあクロアさん、よろしくお願いします」

「はいはい。じゃあ、ライラ。ちょっと私の目を見てくれる?」

そしてライラはクロアさんによって、魔法を解いてもらう。……すると。

「……ん?あら?」

「よし、解けたわね。ライラ、気分はどう?」

クロアさんの解呪が成功したみたいで、ライラはきょとん、としてから、きょろきょろ、と辺りを見回して、そして、僕が卵を抱いているのを見つけて……。

「……わ、私、なんで抱卵してたわけ!?」

案の定、混乱し始めてしまった!まあ、そりゃあそうだよなあ。まあでも、正気に戻ってくれたみたいなのでよかった、よかった……。

……こうして僕は1つずつ卵を回収してはクロアさんにお願いして、皆を正気に戻してもらった。

鳥はなんとなく不服気な顔をしていたけれど、『卵は自分であっためるか、せめて僕に抱卵させるかどっちかにして!』と強くお願いしておいた。だって、皆が『自分のたまご!』って卵をあっためてるのは、その、なんだか気まずかったから……。

まあ、そういう訳で今、僕の周りには卵が6つ、ころころしている。毛布で作った巣の中、ゆたんぽやカーネリアちゃんのフェニックスと一緒にぬくぬくしているので、抱卵としては問題ないはずだ。

……まあ、卵と僕と鳥は、問題ないんだけれど。

「うううー、なんか、魔法が解けたってのに、まだ、うずうずするわ……」

ライラがそわそわうずうず、落ち着かなげにしている。

「あー、ライラもか?俺もなんだよ。うー、なんかこう、腕が寂しいっつうかよお、なんだ?なあ、これ、なんだ?」

どうやら皆、後遺症があるみたいだ。鳥は鳥でも森の精霊だから、幻惑の魔法がとても強かったらしい……。鳥がまだちょっと不服気なのとも関係があるかもしれないね。きれいさっぱり解いてよ。全くもう。

「だ、駄目だわ!なんか駄目!なんか抱っこしてなきゃ落ち着かない!」

そうして遂に、ライラがうずうずの限界に達してしまった!

「アンジェーっ!悪いけど抱っこさせて!」

「だっこしてくれるの?わあ、うれしい!」

ライラは丁度通りがかったアンジェに抱き着いて、そのままアンジェを抱き上げて膝の上にのせて、ぎゅ、とやり始めた。……ちょっと見てて落ち着かない!

「うおおーっ!俺もだ!俺もなんか生き物抱っこしてえ!くそ!悪い、カーネリアちゃん!抱っこさせてくれ!」

「まあ、フェイお兄様ったら!うふふ、いいわ!私、卵の役をやってあげるわ!」

フェイはカーネリアちゃんを抱っこし始めた。ああ、僕の親友がおかしなことに……。

「ふふふ。じゃああなたはリアンに協力してもらえばいいわね」

「……なんで俺はラオクレスに抱えられてるんだよ」

「……すまん。許せ」

そしてリアンもラオクレスに捕まってしまった。ラオクレスもうずうずしてたんだなあ。リアンを抱っこした途端に落ち着いた顔になってしまった……。

「……トーゴ」

「あ、うん……どうぞ」

「すまない!助かったぜトーゴ!よし!」

そして僕は抱卵していながらにして先生に抱きしめられています!ああ、卵が卵を温めていることに!なんてこった!

……先生が『どうやら卵はすぐに孵るようだ!』みたいな文章を書いてくれたおかげで、卵はその日の夕方に無事、孵った。

ただ……出てきたのが鳥の子じゃなくて、苗木だったんだよ。

「これは何の木だろう……」

「気になる木、というやつかもしれないぜ、トーゴ……」

しょうがないから苗木、植えた。僕も森なので、この苗木がどこにあるべきかは苗木を見た瞬間に分かったんだよ。

……鳥は『これでよし』みたいな顔をしていたので、多分これでいいんだと思うけれど。多分、鳥なりにこの森のメンテナンスを行った結果がこれなんだと思うけれど。もしかすると、皆から貰った力で森を活性化させて、森の循環をよくしようとしていたとか、そういうかんじなのかもしれないけれど。

「ねえ、鳥。次からは皆に抱卵させないでね……」

お願いしてみたけれど、鳥は相変わらず、首を傾げて、キュン。

……ああ、もしまた皆が抱卵し始めてしまったらどうしよう。まあ、この鳥のやることだから、心配しても無駄なんだけれど……。

「鳥だからしょうがないのかなあ……」

「まあ……鳥さんだしなあ、しょうがない」

僕も先生も、あきらめの境地で鳥を見上げる。鳥はすっかり冬毛でふわふわになっていて、丸いこと丸いこと。そしてなんとも、小憎らしいこと!

抗議の意を込めて鳥をつついてみるけれど、さふっ、と羽毛に指が埋もれてしまうばかりで鳥にはまるでダメージが無い。

ああ……鳥だなあ!

つくづく、こいつ、鳥!もう!