軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

妖精公園へようこそ!*6

妖精公園は大盛況だった。ソレイラの中心街からでも『ちょっと散歩してくる』ぐらいの感覚で十分に来られる位置だし、予想以上に多くの人が集まってくれた。

妖精達はお祭り騒ぎが好きだから、きゃらきゃらとそれはそれは大喜びな様子。

それから喜んでいるのはやっぱり、子供が多い印象だ。子供達は早速、妖精達と一緒に巨大迷路に挑んだり、キノコのトランポリンでぽよぽよ跳ねたり、花畑で花冠を編んだり、ツリーハウスで遊び回ったり。

うっかりアスレチックから落下してしまう子もいたのだけれど、僕が枝葉を伸ばして助けるまでもなかった。妖精達が慌てて飛びついて、落ちた子供を掴んでぱたぱた頑張って飛んで、軟着陸して一息吐いたら皆で大笑い。妖精が一緒ならちょっと遊びで失敗しても大丈夫。色々なことを勉強するのにはもってこいだ。

大人達はそんな子供達を見守りながらツリーハウスや花のクッションの上でのんびりしたり、ハンモックで子供と一緒にお昼寝してみたり、スイレンのボートでぷかぷかやってみたり……案外、大人達も遊んでいた。まあ、その方が妖精達と子供は喜ぶと思うし、いいんじゃないかな。

それから、宿のコーナーも人気だった。特に、ソレイラに妖精公園が開園するよ、という噂を聞きつけて他の町からやってきた人達は、今日の宿をここに決めたらしい。早速、宿はもう満室になっていた。大人気。

……ちなみに、他の町から来た人の中には純粋な観光目的じゃない人も結構居た。例えば、妖精の魔法の学者さん、とか。彼ら、ソレイラは精霊魔法と妖精魔法の聖地だって、すごい勢いで何かをメモしているんだよ。でも、そんなに熱心に観察したって、僕が描いて出したキノコのテーブルには大した秘密は無いよ!花のランプにも秘密は無いよ!トランポリンで跳ねてる鳥にも秘密は……いや、あるかもしれないけれど。うーん、あの鳥を研究してくれるっていうなら、僕、出資しようかな……。

そうそう、学者さん達は妖精大図書館でも大興奮していた。沢山の蔵書にも目を輝かせていたし、何よりも検索システムが彼らの目を輝かせていた。

まあ、そうだよね。未知の魔法がそこにあるからね……。でもそれはあなた達の研究対象じゃないんだよ!そっちはフェイの作なんだよ!

あと……実は、ちょっとだけ盗難、というか、公園内の植物の持ち出しがあった。

1件目は、ソレイラの子供達。

妖精の力を受けて咲いた花で花冠を作って、それを今日風邪をひいてしまって遊びに来られなかった友達へのお見舞いの品にするらしかったので、妖精と共にGOサイン。ちょっと貴重な花でできた花冠は、しばらくソレイラの民家に飾られることになった。

2件目は、レッドガルドの町の宝石職人見習いさん。

小川に転がっていた宝石の原石を磨いてみたくなってしまったらしくて、近くに居た妖精に直談判して許可を貰ってから持ち帰っていた。

ちなみにこの人、妖精とのコミュニケーションに長けていて、『この石を持って帰っても良ければ、そこに置いた石を僕の手の上に乗せてほしい!』っていうやり方をとったらしい。そうしたら面白がった妖精が、切株の上に置かれた宝石の原石を抱えて飛んできて、見習いさんの手に乗っけていったんだよ。

見習いさんは『磨き終わったら持ってくる』と妖精に約束して帰っていった。妖精達は磨かれた宝石を見られるのを楽しみにしているらしくて、なんだかわくわくしていた。僕もちょっとわくわくしている。

そして3件目は、王都から来た父子連れ。

妖精公園の中の雑木林の中でちょっと変わった薬草を見つけて、それをこっそり摘んで持って帰ったんだよ。

勿論、僕も妖精達もそれには気づいたんだけれど……止めなかった。だって、父子の会話を聞いていたら、どうやら、彼らのお母さんが病気で、妖精の力がある珍しい薬草が必要らしかったので。

ということで、その父子連れはこっそり摘んだ薬草と……更に妖精達によってポケットにぎゅうぎゅう詰め込まれた薬草や花やキャンディーなんかを持って帰っていた。……まあ、こういうこともあっていいと思うんだよ。妖精が『この人にはあげたい!』と思うんだったら妖精の薬草でも花でも、プレゼントしてほしい。

ソレイラの入植者を募った時もそうだったけれど、妖精は本当に、人を見る目がしっかりしている。だから彼らが選んだ人にプレゼントする分には、何ら問題が無いと思う。むしろ、こういう風に、必要な人に必要なものがちゃんともたらされる場所ができるんだったら、僕は嬉しく思う。

……フェイが言っていたことをちょっと思い出す。『技術っていうのは、理不尽による不幸せを無くす為のものだと思う』って。

妖精公園がそういう存在になったらいいなあ。

そういうわけで、妖精公園は大分賑わっていた。

「トウゴおにいちゃん、ありがとう!妖精さんたち、楽しいって!」

「うん。それはよかった。もうしばらくするともうちょっとここの公園は落ち着いた様子になると思うけれど……年に1回くらいはお祭りを開いて、人がたくさん集まるようにすると妖精達は楽しくていいかもね」

「うん!」

アンジェは綿飴をしゅわしゅわふわふわ食べながら満面の笑み。それを見てリアンとカーネリアちゃんもなんだか幸せそうににこにこ。僕としても子供達が笑顔でいるのは嬉しいことだ。にこにこ。……あと、すごく久しぶりに食べた綿飴が、なんだかおいしかった。これにもにこにこ。

広場のベンチに座って行き交う人々を見ていると、本当に色んな人が居る。

綿飴を抱えて分け合っている子供達。妖精カフェ出張メニューのチュロスを齧りつつ話している若い女性達。園内の地図を貼った掲示板を見ながら次はどこへ行こうか相談しているカップル。広場の中心にででんと居座っている鳥。鳥をつつく妖精達。焼き立てのワッフルを売り歩く魔王。そんな光景を眺めてにこにこしている老夫婦……。

……それから。

「あー……おい、トウゴ・ウエソラ」

「あれ、ルスターさん」

ルスターさんも来ていた。その手には焼きたてワッフルがある。魔王から買ったらしい。いや、買わされたのかもしれないけれど。

ルスターさんはすごく嫌そうに僕の名前を呼んで、そのまま黙っている。な、何だろうか。僕は若干緊張しつつ、ルスターさんの言葉の続きを待っていると……。

「親父がテメエの次の絵、楽しみにしてんだ。さっさと描いて献上しろよ」

……そんなことを言われた。

「つまり……遊びにおいで、っていうこと、だろうか」

「貢物を持ってこい、っつってんだよ!」

ルスターさんはなんだか素直じゃない反応をしているのだけれど、まあ、そういうことなら。

「分かった。近々、最近描いた絵を持って行きますね、ってお伝えください」

「……おう」

久しぶりに王都へ行ってこよう。そしてクロアさんの『お父様』のところに行ってみようかな。別件で用事もあるし。

ええと……他にお土産、何を持って行こう。折角だから妖精公園のお土産もちょっと持っていってみようかな。

……ということで、翌週。

「ふふ。久しぶりね。トウゴ君とこうしてお出かけするの」

僕は、クロアさんとラオクレスと一緒に、また王都へやってきた。

「ボディガードしてもらった時も一緒だったけれど」

「あら。あれはお出かけっていうかんじじゃなかったでしょう?」

くすくす笑うクロアさんを見て、ああ、やっぱりこの人すごく綺麗だなあ、と思う。

「王都だからと言って気を抜くなよ。つい先日、ヴィオロン家の者がフェイに突っかかってきたばかりだ。トウゴが狙われないとは限らん」

「あなたも結構な過保護よねえ」

そして真剣な表情のラオクレスを見上げて、やっぱりこの人もすごく綺麗だなあ、と思う。

……別の種類の『綺麗』な2人に挟まれて、僕、どう見えるんだろうか。僕、別に綺麗じゃないからなあ。うーん、相当場違いに見えるんじゃないだろうか……。

「おや、そこの素敵なご家族!揚げ菓子はいかがかな!サクサク甘くておいしいよ!」

……ちょっと悩みながらクロアさんとラオクレスに挟まれて歩いていたら、ふと、そんな声が聞こえた。

あれ、と思って周囲を見回しても、家族連れらしい人達は居ない。……ま、まさか!

「ほら、坊ちゃん!お1つどうだい?いや、1つと言わず、綺麗なお母さんと男前なお父さんの分も合わせて3つ!」

……僕、2人の子供に見えるのか!?