軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

千年の月日 2

「「美味しかったよ〜!!」」

ハルトとルティアが戻ってきた。

相変わらず元気いっぱいだ。

そういえばハルトは、バルティ殿下に人見知りをしていない。

今までだったら、ずっと私の後ろに隠れていたのに。

「聞いてよ! ハルったら、お城の侍女さんが話しかけてくれているのに、ずっと私の後ろに隠れてたのよ!」

「だって、お部屋に行ったら壁沿いにいっぱい並んでるんだもの……」

「まあ……!」

魔導具や魔剣のことになると積極的になるのに……。

成長していくことがとても嬉しいのだけれど、変わらない姿にホッとする。

「みんなの分ももらってきたの」

ルティアは金や銀色の紙で包まれたお菓子を私たちに順に手渡していった。

最後にバルティ殿下の前で立ち止まり、ぺこりとお辞儀をする。

「バルティ殿下のお土産だって聞きました。ごちそうさまです」

「あっ……ごちそうさまです!」

ハルトも一緒にお辞儀をした。

「東の国エデンタールには、美味しいものがたくさんある。いつか遊びにおいで?」

「「はい!!」」

エデンタールは、ロレンシア辺境伯領よりも遠い。

だが、かの場所は海に接していて、大陸の外との交流もあるという。

「それで――魔剣さんのことだけど」

「ああ、何か気になることでも?」

「僕とベルティナ叔母さまで相談したけど……双剣にする以外にないと思いますか?」

ハルトは深刻な表情を浮かべた。

そういえば、ベルティナは魔剣を一本に戻すことはできないと言っていた。

双剣にするしかないと……だが、魔剣はそれでいいのだろうか。

「そうだね。私の見立てでも、現状では一つに結合することはできないと思う。そもそも、折れた部分の上下で素材も違うんだ」

「だって……魔剣さん。え? 煮るなり焼くなりしてくれ?」

「魔剣さん、どうしたの? え? 私たちのどちらかが双剣を使えるようになれば一緒に戦える?」

ハルトとルティアは互いに視線を合わせ、軽く眉根を寄せた。

「「どうする?」」

「僕……魔剣さんと戦いたい!」

「ずるい! 私だって魔剣さんと戦うの!」

「「負けられない!!」」

二人は、どちらが双剣使いになるかで喧嘩を始めてしまった。

まだ、完全に魔剣が治るかも、二人が魔剣を扱えるほどの使い手になるかもわからないというのに。

しかし、今までずっと魔剣と共に戦ってきた旦那様はどんな思いだろう……。

「今から双剣をロングソードレベルに扱えるようになるのは難しいか……んっ? すまない、フィアレイア、そんなに怒らないでくれ」

旦那様の腰には、聖剣フィアレイアが下がっている。

聖剣は先ほどからほとんど輝くことなく黙り込んでいるようだったが、今は拗ねてしまったようにチカチカと光っている。

「さて、修復するにしても魔法回路を再利用して新しい剣を作り上げるに近い。金属を集めなくてはいけませんね」

「ロレンシア辺境伯家の宝物庫に霊鉄はありましたわ」

「なるほど……エデンタールからは、魔銀は取り寄せられそうです。となると、問題は冥鉄か――量は少なくて良さそうだが、手に入れるのは」

そのとき、ガチャンっと音を立てて、ぴーちゃんが作業机の上にのった。

『ピピピピッ!』

バルティ殿下は、呆然とぴーちゃんのアームを見つめた。

「まさか、冥鉄が含まれている?」

『ピピ!』

ぴーちゃんのアームが一本外れて机の上に転がった。

「――これを使えと?」

「「ぴーちゃん!! 手をとっちゃったの!?」」

ルティアとハルトがぴーちゃんに駆け寄った。

「壊れちゃったの?」

「戻せないの?」

二人は涙目になっている。

ベルティナがぴーちゃんの本体をじっと見つめた。

「――元々、脱着可能なパーツのようです」

「そういえば……神代技術搭載型の魔導具は、千年前の神代に作られたパーツを再利用しているんだったね」

「そうなの?」

「うん、特に神代技術搭載蜘蛛型魔道具第三世代改良型はね……冥鉄など現在では採掘できない金属を使った一千年前のパーツのうち、破損していないものを再利用しているんだ。数百年前にはすでに失われてしまった技術と材料……パーツを再利用することで、当時の技術だけでは再現不可能な神代の魔導具を蘇らせようとしたんだよ!」

「……」

「「なるほど」」

ハルトの説明は、今日も相当熱が入っていて長かった。

ぴーちゃんのアームには、新たな採掘が困難な冥鉄が含まれていることと、千年前のパーツが再利用されているという解釈で合っているだろうか。

「アームだけなら辺境伯領の最新技術を使えば、霊鉄を使って作り直せそうですわ」

「なるほど、これで材料は解決しそうです」

曖昧な理解しかできなかった私に対し、ベルティナとバルティ殿下は完璧に理解したようだ。

『ピピピ?』

ぴーちゃんは機嫌よさそうだが、アームが一本ないため、動くのに難儀しているようだ。

「しかたありません、私と一緒にいなさい」

『ピッピッ!』

アンナがぴーちゃんを抱き上げて頭の上に載せた。