軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五年越しの家族団らん 7

顔の熱が引いたので、再び旦那様と向き合う。

旦那様の子ども時代は気になるが、まだ私たちは出会ったばかりに等しい。

そこまで聞こうとするのは、踏み込みすぎている気がした。

――けれど、子どもたちが関係しているとなれば話は別だ。

子どもたちは、何も持たなかった私にとって唯一とも言える宝物だ。

子どもたちの今後のためにも、魔剣については、確認しておく必要がある。

「――旦那様」

「ああ、話そう……魔剣とフィアーゼ侯爵家について」

旦那様は重々しく口を開いた。

* * *

フィアーゼ侯爵家が、代々騎士団長を輩出している家門というのは、周知の事実だ。

英雄と呼ばれる者は、皆フィアーゼ侯爵家に連なると言われるほどの武の一族でもある。

だが、その理由については外部に伝えられることはなかった。

――物語は建国神話に始まる。

まだ、人間が魔獣の脅威に抗う術を持たなかった頃の話だ。

人々は協力して細々と生き存えていた。

そこに現れたのが、初代国王だ。

彼の隣にはいつも一人の騎士がいた。彼は、与えられた魔剣で初めて人の身でありながら魔獣に勝利した。

不思議な魔剣は、心を持っていたという。

そこから人は生活圏を広げ、一つの王国が出来上がった。

それが、私たちが暮らすウィンブルー王国だ。

「……ロレンシア辺境伯家にも似たような話が伝わっています」

私の生家であるロレンシア辺境伯家は、代々強い魔力を持つ者が多く生まれる。

ロレンシア家の先祖は、人の身で魔獣に抗うために、剣に魔力を込める実験を繰り返した。

そして、最高傑作を初代国王と並ぶ、最高の騎士に渡したのだという。

「二つの話を総合すれば、ロレンシア辺境伯家が最高傑作の剣を渡したのが、フィアーゼ侯爵家の始祖ということになりますね」

「ああ……。俺も、そこまで詳しくは知らなかったが」

「――もしかして、旦那様が持っている剣って」

「ああ、初代から受け継いでいる魔力が込められ、命を授かった剣だ」

建国神話の時代からは、すでに千年以上が経過している。

それほど長い間、一本の剣が折れることもなく受け継がれるなどあるのだろうか。

いや、それこそが魔剣が魔剣たる由縁なのかもしれない。

「――君は、魔力を持たないのだったな」

「ええ、家族たちは皆、強い魔力を持ち、国防に尽力していますが」

どんなに努力しても、家族が私を認めることはない。

魔力を持たない私には、ロレンシア辺境伯家に課せられた国防の使命を全うできないのだから……。

けれど旦那様は違う。

代々騎士団長を輩出してきたフィアーゼ侯爵家の魔剣。

それを受け継いでいるのだから、本来周囲は彼を認めるべきなのだ。

――でも、旦那様は死神騎士と呼ばれ、悪意ある噂を流されていた。

その噂はまるで、旦那様のせいで多くの味方が犠牲になったようにすら聞こえるものだった。

「旦那様は、魔剣に選ばれたのですか」

「……ああ、弟妹たちも強い魔力を持っているが、剣に触れることができたのは俺だけだった。途切れたことはないが、一世代に一人現れるか現れないか……父は触れることができなかった。祖父の後に魔剣に選ばれたのは、俺だった」

もしかしたら、その部分にも旦那様と家族が疎遠になった理由があるのかもしれない。

だが、今話すべきは子どもたちのことだろう。

「ハルトとルティアは同時に選ばれたようですが……」

「双子だからだろうか……剣は一本しかない。俺の知る限りでは、同時に二人が魔剣に選ばれたことはないはずだ」

「そうですか……」

脳裏に疑問が掠める。

ロレンシア辺境伯家は、剣に魔力を込める実験を繰り返していた。

初代国王の片腕である騎士に魔剣を渡した……それは理解できる。

だが、一本しかない剣を渡すことなどあるのだろうか。

私は宝物庫に入れてもらえなかったが、実家であれば他にも魔剣があるのではないか。

だが、それは私の憶測に過ぎない。

「もう昼か……ずいぶん時間が経ってしまったな」

「ええ、子どもたちのところへ戻りましょう」

* * *

子どもたちの下へ戻ると、二人は小さなテーブルの前に向かい合って座っていた。

テーブルの上には、ボードゲームが置かれている。

この国の貴族たちは、軍隊を模したボードゲームで幼い頃から遊ぶ。

執事長に三歳から習い始めた二人の腕は、大人顔負けで、すでに私では相手にならない。

「おや、ずいぶん高度な」

「……でも、いつもと様子が違います」

向かい合った二人の横には剣が立てかけられている。

現在、真剣に盤面を見つめているのはハルト。

ルティアは剣と内緒話でもしているようだ。

「あ〜!! 今まで僕が百戦五十一勝だったのに」

「ふふん!」

「でも、魔剣さんに教えてもらうなんてずるい! 今度は僕が教えてもらう番だ!」

「一回のゲームで聞いていいのは三回までよ」

「わかってるよ!」

二人は魔剣に相談しながら、ボードゲームに興じていたようだ。

「魔剣って……ボードゲームもできるのですね」

「そうだな……」

そんな発見も、双子ならではのことなのかもしれない。

昼食の時間は過ぎているが「もう一回!」と夢中になってしまった二人を止めるのは、少々骨が折れた。