軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ショクン、おはようございます」

「「「「「おはようございます、理事長!」」」」」

「うむっ。元気でよろすぃ」

メルはスケートボードを会議室のテーブルに立てかけて、理事長の椅子に座った。

理事長の椅子は特別製で、足を載せる踏み台がついていた。

他の椅子と比べて、座面も少しばかり高い。

単なる子供椅子である。

「さてと、それでは会議を始めるとするかのぉー」

魔法王が席を立ち、職員会議の開始を宣言した。

「議事録は…。いつも通りグノーム(地)先生に、お願いしよう」

「お任せください。校長」

「では最初に、問題点の確認をしよう。プラーナ(風)先生、なにか気づいた点はあるかのぉー?」

「いいえ、ございません」

始業式を目前に控えて、早朝の職員会議が始まった。

「始業式の挨拶や生徒たちに伝えるべき注意事項に、変更はありません」

「本日の始業式には、理事長も参加なさいます。今朝の議題は、理事長のタケウマに絞られるかと…」

「タケウマねぇー。魔法パフォーマンスとしては、良かったのですが…」

「一年、持ちませんでしたね」

「喜ばしいことですが…。初年度生のヤル気を維持するには、新しい刺激が必要となりましょう」

「はぁー。タケウマに、なんぞ問題でもあるんかい?」

精霊教師たちから非難の視線を浴びせられて、メルが動揺を示した。

「妖精女王陛下…。妖精女王陛下は、当魔法学校の責任ある理事長先生であろう。それなのに入学式を丸投げして、ズル休みしよったな…。そんなことじゃから、大事な情報を聞き逃すのであろう」

「ずっ、ズル休みちゃうわぁー。わらし、歯ぁー抜けて大変ヨ!」

「まぁーた。そうやって適当なことを言って、ごまかす」

「ほんまやて…。ほれっ、見てみぃ…」

そう言ってメルは、四本の前歯が抜けた隙間から、チロチロと舌を突きだして見せた。

「コホン…。面白かったので、入学式の件は不問としよう」

魔法王が、鷹揚に頷いて見せた。

「賛成」

「賛成します」

「わたしも…」

「皆さんに同意する」

魔法王を筆頭に、精霊教師たちはメルの捨て身ギャグを否定しない。

これ以上、おかしな真似をされたら堪らないからだ。

であるならば、ここは穏便に流すの一手だ。

精霊たちは、フレッドやアーロンと立場が違う。

メルは彼らの女王陛下なのだ。

魔法王などは、妖精女王陛下の教育係を任されているので猶更だ。

メルの操縦は非常に難しい。

頭ごなしに叱れば、より強烈な捨て身ギャグを開発してくるに決まっていた。

廊下を全裸で疾走とか、想像したくもなかった。

TS幼女の捨て身は、危険すぎた。

こと躾に関しては、妖精たちも頼りにならない。

妖精たちは子供の味方で、言うなればメルの分身みたいなものだった。

そんな訳で、職員室には事なかれ主義が蔓延していた。

暗黙の決まりは、メルの悪ふざけに付き合わないことである。

笑わず、叱らず、受け流す。

その上に、大人であれと誘導する。

精霊教師たちは、大人のスルースキルを試されていた。

「ところで理事長。タケウマによるパフォーマンスですが、新しい技は…」

「しょんなモン、にゃぁーわ。思いつきましぇん!」

メルは正直に白状した。

もうネタは尽きた。

色々と魔法はあっても、タケウマと関係ない。

空に浮いて見せても、タケウマの技とは呼べない。

「それは不味いですなぁー」

「生徒たちは、魔法タケウマを特訓していまして…。これまでに理事長が披露した技は、とっくに習得されています」

「今ではタケウマ先生を負かすなどと、でかい口を叩く生徒まで現れる始末」

「このままでは、理事長としての威厳が損なわれますぞ!」

「イゲン…?」

メルが小首を傾げた。

「ヴルカン(火)先生が仰っているのは、生徒たちから舐められて馬鹿にされると言うことです!」

アクエ(水)先生が、メルにも分かるように説明した。

「あわわわっ…。なんでしゅとぉー!」

いきなりのピンチである。

メルは真面目モードに切り替わった。

精霊教師たちの勝利だった。

◇◇◇◇

「テステス…。マイクのテスト中ニャ…。あーっ、あーっ。それでは、ラヴィー先生どうぞ!」

ミケ王子が、ハンドマイクをラヴィニア姫に手渡した。

「やふぅーっ!みんなぁー。元気だったぁー?」

「「「イェーイ!」」」

魔法学校の校庭に、歓声が響く。

「ラヴィーちゃーん!」

「頑張れェー」

「ありがとぉー。それじゃ新入生のみんなに、理事長先生を紹介するヨォー!」

ヒゲ眼鏡のメルが、ラヴィニア姫に紹介されて演壇に立った。

「新入生のみなしゃん。入学、おめでとぉー。魔法学校で、楽しく魔法を学んでねぇー!」

「「「「「はぁーい!!」」」」」

大歓声だ。

新入生たちは、ウキウキである。

ご飯は美味しくて、寝る場所もフカフカ。

雨に降られても濡れず、怖い大人に脅かされる心配もない。

そのうえ、生きるために役立つ魔法を無料で教えてもらえるのだ。

これまで辛い生活をして来た子供らにすれば、魔法学校は楽園に等しかった。

そんな新入生の中で、浮かない顔の生徒が存在した。

「おかしな眼鏡を着けていますけど、あれは間違いなくエルフっ子ですよ」

「うん。魔法学校の理事長先生がメルちゃんって、本当でしたね」

言わずと知れた、ルイーザとファビオラの二人である。

わだかまりは解消したと思うのだけれど、気まずさは残る。

「なんで魔法を自慢したかなぁー」

「やっぱり、そこですよねぇー」

どうにも恥ずかしい。

「タケウマぁー」

「タケウマ先生!」

「タケウマで、勝負だ」

「センセー。新しい技は、ないんですかぁー?」

初年度生たちが、興奮して騒ぎ立てる。

「しーっ。セイシュクに…」

メルは両手を上げて、生徒たちが静まるのを待った。

「あーっ。校長先生から、初年度生のみんなが頑張り屋しゃんだと聞かしゃれました」

「おれたち頑張ったヨォー」

「タケウマ、上手になったぞ!」

「勝負だ。勝負しよう」

もう、大騒ぎである。

「やかぁーし。おまぁーらと勝負なんぞ、しぇんわ」

又もやメルは両手を上げて、生徒たちが静まるのを待った。

「みなしゃんの技は、新入生たちに教えて上げてくだしゃい。初年度生のみんなが、タケウマ先生の代わりをしゅるのです」

「……オレたちが」

「タケウマ先生の代わり…?」

「そうでしゅ。キミたちは、シェンパイになったのでしゅ!」

メルは初年度生たちを讃えて、拍手した。

「やる。おいら、タケウマ先生の代わりに教える!」

「わたしも…。わたし、女の子に教えるよ」

「おーっ。任せろ。すげぇー技を教えてやるぜ」

「あんたってば、バカー?基本から教えて上げなきゃ、ダメでしょ」

「そうだぞ。自慢する奴は、嫌われるぞぉー」

なかなかに、よろしい。

盛り上がり過ぎないように、お調子者を諫める生徒も現れたようだ。

「メルちゃん。よい学校になったね」

「うん。ミケしゃんたちも、手伝ってくれたし…。とっても嬉すい」

「ニャァー。ボクらは、充分に楽しんでるニャ。ケット・シーに、気づかいは要らニャイ」

ミケ王子が、メルの腕をポンポンと叩いた。

「皆さーん。とても大切な、お話があります。少しだけ、お付き合いください」

ラヴィニア姫がマイクを握って、声を張り上げた。

「初年度生の皆さんが、妖精さんたちと仲良くしてくれたので、この魔法学校にたくさんの妖精さんたちが集まるようになりました。ありがとぉー」

「うぉーっ」

「仲良くするぅー」

「私こそ、ありがとぉー」

ラヴィニア姫は手を上げて、話を再開した。

「ところが、余りにも妖精さんたちが集まり過ぎてしまったので、皆と遊べない子が出てきちゃったの…」

「えーっ。そんなの可哀想だよ」

「ラヴィー。どうすればいいの?」

「仲間外れは、ダメだ!」

生徒たちの動揺は激しい。

初年度生たちは、既に妖精との共存関係を作っていた。

そんな自分たちが、仲間外れの妖精を作り出していたのだ。

心の底から無念である。

「そこで理事長先生が、あぶれてしまった妖精さんたちを集めて、素敵なドラゴンを作って下さるそうです」

ラヴィニア姫の発言に、生徒たちがシーンとなった。

ドラゴンはない。

それはあり得ないだろう。

そもそも、ドラゴンって存在するの…?

そう生徒たちの顔に書いてあった。

「ちっとも信じておらんね…」

メルはハンドマイクを持ち直した。

「おまぁーら、ちとタケウマ上手になったからって理事長なめんなよ!タケウマはぁー、マホォーの入口じゃ。わらひが、でっかい夢を見しちゃる。今から目にするんは、おまーらが学んどるマホォーの先にあるものじゃ…」

「まじか…?」

「これで、なんも起こらんかったら、メッチャ恥ずかしいぞっ!」

「理事長センセイ、意地を張らないで…?」

「オレたち、タケウマ先生を舐めたりしていないから。ムチャすんな!」

「なかったことにしてください。私たち、何も聞いていません」

初年度生たちの訴えを耳にして、メルが小鬼の顔になった。

「うっせぇわ!」

メルは一声叫び、天に両手を突き上げた。

「精霊召喚…。おいでませ、ドラゴン×4…!」

地面が隆起し…。

辺りに霧が立ち込め…。

焔が噴きあがり…。

つむじ風が吹き荒れた。

光の柱が、天に伸びる。

四本の柱が、天まで届く。

爆音とともに、稲妻が踊った。

「まじか…?」

「うひやぁー!」

「何、これェー?」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ…!」

生徒たちの多くが、校庭にしゃがみ込んだ。

「ドラゴン、ドラゴン、ドラゴン…!」

「メルちゃん、かっけぇー!」

「いいぞぉー!」

メルを応援しているのは、チル、セレナ、キュッツの三名だった。

共に修羅場をくぐった戦友たちは、信頼度が違う。

メルはチルたちの英雄だった。

そして…。

地竜、水竜、火竜、風竜の四頭が、メルにクリエイトされて姿を現した。

「ほっ、本当にドラゴンが…!」

「理事長センセイ、半端ない」

「かっ、かわいい」

「えーっ。ドラゴンなのに、怖くない」

「こいつら、可愛いな…」

邪妖精から創造された邪霊ではないので、穏やかなドラゴンたちである。

「ふっ…。わらひを敬え!」

「すっげぇー」

「理事長センセイ、万歳!」

「ねぇねぇ、ドラゴンたちと遊んでいい?」

「そんなの良いに決まってんじゃん。こいつら、遊んで欲しかった妖精さんたちだぜ」

生徒たちは、恐る恐るドラゴンに近づいて行った。

この調子なら、すぐに仲良くなれるだろう。

メルの目的は、魔法学校でドラゴンの存在を定着させるところにあった。

「うーむっ、よい腕じゃ。第一段階は、問題なく成功と言えよう」

「うひゃぁー。魔法王さまに褒められると、わらひ嬉すいわ…。照れるぅー」

「さぁーて、本番が楽しみじゃ!」

「うひゃひゃ…。本番の方が、簡単じゃけぇー。わらひに、お任せください」

本番で召喚されるドラゴンたちは、ミッティア魔法王国と闘うための邪霊だった。