軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第5話 呪い

騎士様の言うエリクサーと力のある聖魔法使い……って事は、テオの言う大聖女の事だよね。

探すって言っているけど、エリクサーの作り方なんて作業場にある錬金術の本には書いてない。ダンジョンの宝箱から出るのかな? 聖女は何人かいるけど、大聖女はいないってお客さんから聞いたよ。

「エリオット様、その呪いはどんな魔物にやられたんですか?」

スタンピードって、ダンジョンから魔物があふれて来るんだよね……って事は、呪いを掛けた魔物はダンジョンにいるんだ。

「初めて見る魔物でした。全身が黒くて蝙蝠の様な翼がある大きな人型の魔物で、何とか倒しはしたが、誰もその魔物を知らなかった」

「全身黒で蝙蝠の翼つきの魔物。しかも人型……俺も聞いた事がないな。う~ん……」

倒された魔物は国の研究所に運ばれて調べられた結果、大陸の北にある帝国の文献に、良く似た魔物がダンジョンの深い階層にいると書かれていたそうです。

「テオ殿、正式に確認出来たわけではないので、魔物の名前は公表されませんでした」

「そうですか……」

テオが、ダンジョンの深い階層にそんな魔物がいるのかと唸っている。翼があるって事は飛べるの? 2本足で歩く真っ黒の大きな魔物……気持ち悪そう。

「完全に痛みが消えるテオ殿のポーションは本当に有難い。買いに来られない時もあるので、テオ殿のポーションをまとめて買わせて欲しいのです」

騎士様は第一騎士団の副隊長さんで、痛みがひどくなってからは事務方の仕事をしているけど、魔物討伐の遠征に同行して王都から離れる事もあるそうです。

「ああ、それは構わないですが、材料の関係で沢山は作っていないんです」

「やはりそうでしたか! テオ殿は特別な材料を使っているのですね!」

いえ、違います。自家製ポーションは、テオが持って帰って来る薬草の分しか作っていないんですよ。商業ギルドで薬草を買うと高いからね~。テオは「いや、えっと……秘密なんで」と、言葉をにごしている。

「騎士様、まだポーションは効いているんですよね?」

「ああ、効いているよ。お嬢さんもエリオットと呼んでくれ」

「はい……エリオット様。私はアリスと言います。ポーションの効果が4日も続いているなら、週に2個あれば足りますよね? それに、この前買ってもらったポーションも残っていますよね?」

1週間は火の曜日から始まって、水・土・風・闇・光の曜日の6日。使っていないポーションを予備として持っていれば、週に2本あれば十分に足りる。

1カ月が5週×2本で、月に10本のポーションを買ってもらえる。うわぁ、良い稼ぎになるよね。

「ああ、そうだね」

エリオット様が優しく微笑んでくれる。

「でしたら……お店の定休日、光の曜日にお屋敷にお届けに行きます。毎週2本届ければ大丈夫ですよね?」

「それは助かるが、アリスは良いのかい?」

休みの日は市場に買い物に行くから、ついでにお屋敷に届ければ良いだけだからね。

「はい。エリオット様が店に来られてポーションを買い占められるよりは、定期的に届ける方が……はっ!」

これは言ってはダメな気がした。

「うっ、エリオット様、すみません……」

「アハハ! 買い占められるのは困るんだね。じゃあ、屋敷まで届けてもらおうか。フフ、アリス、よろしく頼むよ」

怒られなくて良かったけど……ふ~ん。エリオット様が笑うと、そんな顔になるんだ。キラキラしている……その顔で通りを歩くと、お姉さんが寄って来るんじゃないかな~。

「はい、次の光の曜日にお屋敷に持って行きますね。テオ先生! ポーション(薬草)を、お願いしますね~。ふふ」

テオににっこりと笑顔で頼んだら、

「おお! アリスは可愛いな~。了解だ!」

テオは嬉しそうに返事をしてくれたけど、お客様の前で”可愛い”なんて言わないでよ。恥ずかしい……。

エリオット様が帰った後、台所でテオの食事を出した。

「テオ~。エリオット様の相手をしてくれてありがとう~!」

「おう! 頼りになっただろう?」

「うん! とっても助かったよ。テオ、お腹が空いたでしょ?」

食事と一緒にお酒も出した。

「おっ、昼から酒か! アリスは、分かっているな~。いつでも俺を頼ればいいぞ!」

「ふふふ。テオ、ありがと~!」

お酒を出したらご機嫌なテオでした。食べ終えたテオは、もう1回寝ると言って2階へ上がって行った。まだ寝るんだ……。

私は、エリオット様の呪いが気になったので作業場にある薬草の本や錬金術の本を読みなおした。

ここにある錬金術の本は初心者から中級者向けで、ここには『エリクサー』なんて文字すら書いてない。大きな図書館に行ったら上級者用の本があって、そこになら作り方が書いてあるかな? それとも、物語みたいな本の中にしか出て来ない薬だったりして……。

あの呪いは、だんだん広がって命を落とす呪いに思えた。全身に広がって? それとも、心臓に届いたら? そんな気がする。聖女様でも治せなかった呪い……私の聖魔法なんて効果ないだろうな。