軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第40話 1年生③ リカルド様との噂

お昼休み、朝のリカルド様とのやり取りを、ロレンツ様が知っていた……なぜ? 1年生の騎士科も魔術科と同じ階にあるから話が伝わるのが早いのかな? それでも早すぎる。

「アリス、大変だったね。『風の貴公子』に、一緒にお茶が飲みたいって言われたんだって? みんなその話ばかりしているよ。今頃、普通科まで話が届いているんじゃないかな~」

「ええっ、違いますよ。そんな意味で言われたんじゃないですから……普通科まで? ロレンツ様、怖いことを言わないでください」

普通科のクラスは建物の2階にあって、授業で一緒になることは無く、食堂もキッチンを挟んで利用スペースが分けられているのに……。

リカルド様はレオおじいちゃんを尊敬していて、宮廷魔術師になる為に認めて欲しいだけですと説明した。

「フフ、アリス。どちらにしてもロレンツ殿の言う通りだよ。貴族って情報収集が命だからね~。明日には、3年生まで噂が流れているかもね」

「ミハエル様まで……からかわないで下さい」

「アリス、俺のクラスにまで話が回って来たぞ」

「ええっ! ユーゴのCクラスまで……?」

ユーゴは騎士科のCクラス。このクラスは警備兵希望の庶民ばかりなのに何で……あぁ、リカルド様がそれだけ有名人ってことなのね。はぁ……。

「リカルド様も、もう少し配慮して欲しいわね。『僕もアリスのお茶を飲んでみたいな』だなんて……取り巻き以外の令嬢も聞いているのに」

ソフィア様がいらない敵まで作ってしまうじゃないとブツブツ言っている。その通りですよね……本当に困る。

「そうそう! あの言葉の後、アリス、令嬢たちに睨まれて……みんな怖い顔していたよね~」

「うん……」

本当に怖かったと、ミアの言葉に何度も頷いた。

「ソフィア嬢の言う通りだね。特に、取り巻きの令嬢達は手が付けられないから厄介なんだ。アリス、危ないと思ったら逃げるんだよ」

「ミハエル様……はい、逃げます」

リカルド様の取り巻きの令嬢方と一緒の授業になるのは、週2回ある魔法の演習の授業だけ。火の曜日にレオおじいちゃんが迎えに来たら、土の曜日だけだけど……食堂で見かけることもあるからね。

「ミハエル様、私がアリスを守りますから大丈夫ですよ」

「私も守るからね! アリス、私から離れないでよ」

「うぅ……ソフィア様、ミア、ありがとう」

◇◇◇

今日は、2週間に1度の相談役の先輩との面談の日で、3年の先輩が1年の教室まで来てくれるんだけど、ウィルバート様から驚くことを言われた。

「アリス、『風の貴公子』から求愛されているんだって?」

「なっ、なー!? されていません!! ウィルバート様、変なことを言わないでください!」

思わず立ち上がって否定した。お茶の話が全く違う話になっているじゃない!

ちゃんと真実を伝えないと! ウィルバート様に、レオおじいちゃんじゃなくて……マルティネス様が魔法の演習の授業に来て、凄い魔法を見せてくれた。それを見たリカルド様が、マルティネス様から教えを請いたくて一緒にお茶を飲みたいと言ったのだと話すと、ウィルバート様のメガネが輝いた。

「なっ、何だって! 1年の魔法の演習にマルティネス公爵が来られたのか! 『風の貴公子』が興奮するのも頷けるよ」

「えっ……?」

「私もその授業に参加したい! アリス、魔法の演習はいつあるんだい?」

「えっと……ウィルバート様、3年生は1年の授業に参加できないと思いますよ」

「1年生の黄色いリボンを付けて行くから大丈夫だよ……そうだ! ミハエルと変われば良いよね?」

「ウィルバート様……」

直ぐにバレると思いますよ。

その後、ウィルバート様は、デイル伯爵領のゴーレム討伐でのレオおじいちゃんの武勇伝を語り始めた。

「マルティネス公爵はデイル領に到着するなり、休憩も取らずにゴーレムの討伐に向かわれたんだよ! そしてね、山の中に現れたアイアンゴーレムを1人で倒されたそうだ。アイアンゴーレムをだよ! 素晴らしいよね~」

それは、エリオット様達と一緒に連携を組んだって聞いたけど……ウィルバート様は、大きな声でニコニコと話されているから訂正しない方が良いよね。

「そうですね……」

「それにね、アリス。この国でマルティネス公爵ほどの強力な魔法を使える方は、他にはいないんだよ。しかも、マルティネス公爵はね、4属性全て使えるんだ! 炎と風魔法の強さがずば抜けていて、水も土魔法も普通に使えるって凄いだろう!?」

「4属性も……知りませんでした。凄いですね」

「ああ、マルティネス様は凄いんだよ! それでね……」

火と風魔法しか見てないな~。ウィルバート様の話を聞いていたら、ミハエル様が来られた。

「兄上……なんで兄上ばかり喋っているの? アリスの相談を聞くのが、兄上の役目だろう」

「うん? ミハエル、アリスと一緒にマルティネス公爵の偉大さを語り合っていたんだよ。あぁ、お前も参加するかい?」

ウィルバート様は、ニコニコしながらミハエル様を誘っている。

「いや、何で……今は、アリスの話を聞く時間だよ?」

ミハエル様が申し訳なさそうに私を見るけど、別に気にしなくて良いですよ。ウィルバート様に相談事なんて……あった!

「あっ! ウィルバート様、私、相談したいことがあるんです」

「うん? 何だいアリス」

ウィルバート様はメガネを少し持ち上げ、何でも話を聞くよと言ってくれた。

「実は、リカルド様の取り巻きの令嬢方が睨んでくるんですけど、どうすれば良いですか?」

「ああ~、そういうのは良くあるよ。そういう令嬢達には、何を言っても効果はない。相手にしなくて良いからね」

「うん。アリス、兄上の言う通りだよ。前も言ったけど、逃げるのが1番の対処法だよ」

「逃げる……」

出来るかな。