軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編11:マルティネスのつぶやき②

週明けの火の曜日、いつものように『テオの薬屋』へ行くと、店の扉に貼り紙がしてあるではないか。

『本日、臨時休業』

はて? 火の曜日なのに『テオの薬屋』が休みじゃと……テオ殿から知らせはなかったが、何かあったのか?

リアムなら何か知っておるかも知れん。

宮廷魔術団の施設に戻り、リアムの執務室に行って聞いてみると、「マルティネス様、テオ殿達は、第一騎士団の手伝いで<リッヒダンジョン>60階の攻略に参加しています」と言いよった!

「何じゃと! 60階の攻略? リアム、わしは何も聞いておらんぞ!」

確か、56階でデーモンが確認されたとは聞いたが……。

「マルティネス様、第一騎士団から"60階を攻略する"と言う趣旨の通知は来ましたが、宮廷魔術師の増員要請もなく、参加する人数は通常のダンジョン探索より少ない4名と書かれていました」

何……60階攻略なのに、騎士団からの増員要請がないじゃと!? しかも、たったの4人とは……いつもは6名から8名で参加しておるのに、どう言う事じゃ……。

「担当のモリスに、確認させに第一騎士団へ行かせましたが、今回の60階攻略部隊は、第一騎士団の少数精鋭で向かうと言われたそうです。宮廷魔術団からは、高ランクの『回復魔法』が使える者を2名と、ダンジョン探索に慣れた宮廷魔術師を2名参加させて欲しいと言われたそうです」

「何じゃと……? リアムよ、高ランクの『回復魔法』の使い手が必要なのは分かるが、何故、少数精鋭にわしが入っていないんじゃ!?」

わしに声が掛からんのは、おかしいではないか!

「……マルティネス様、少数精鋭とは、第一騎士団の精鋭部隊を出すと言う意味で、宮廷魔術団は関係ありません。それに、マルティネス様がダンジョンの攻略に参加しても、楽しくないですよ。基本、弱体異常の回復と魔物の詠唱止めで、上位魔法は使えませんからね」

「ぬぬぬー! リアム、アリスが危ないではないか!」

第一騎士団が精鋭部隊を出すと言うなら、宮廷魔術団からもトップの魔術師を出すべきであろう!

「マルティネス様、アリスの『回復魔法』と『聖魔法』、タロウの『雷魔法』があれば、問題なく60階のワープ・クリスタルに到着するでしょう」

そうかも知れんが! アリスが参加しておると言うのに、何故わしが一緒じゃないんじゃ……。

「リアム! わしもアリスと一緒に、60階のワープを開通したいわ!」

「マルティネス様、60階のワープを開通させたいのは分かります。次回、参加すれば良いではないですか」

「リアムよ、アリスが怪我でもしたらどうするんじゃ!?」

もし、アリスが少しでも怪我をしたら……エリオット、許さんぞ!

◆ ◆ ◆

その日の夜、ダンジョン60階攻略が無事に成功し、参加していた宮廷魔術師達が帰って来たと連絡があったのでリーダーを部屋に呼び寄せた。

「それで、お主はアリスと一緒にダンジョンに入ったのだな? アリスは怪我などしておらんだろうな……何があったか全て話せ」

「はい。マルティネス様、アリスは怪我など1つもしておりませんのでご安心下さい」

ふむ、嘘を言っているようには見えんな。

「そうか」

良かったわい。アリスは自分で治癒できるじゃろうが、可愛いアリスが一瞬でも怪我をするなど許さんわ!

「マルティネス様、アリスはとても優しい方で、皆の事を気遣い夕食を作ってくれました」

「何? お主はアリスの手料理を食べたのか! そうか……先ずは、アリスが作った料理を聞こうかのぉ」

「はい。アリスは、初日の昼に……」

アリスが作った料理を聞き終わる頃、攻略に参加したリーダーを呼びつけたのがリアムにバレたようで、リアムも途中から部屋に来よった。

「マルティネス様、モリスから攻略の話を聞くのでしたら私も伺います」

「リアムは報告書に目を通すではないか」

「それはマルティネス様もですよね。ですが、報告書を受け取るのは明日になりますから、早めに話を聞きたいと思いまして……」

リアムが五月蠅いから言わんが、報告書など文字が細かくて読まんわ。リアムが署名して回して来た書類は、読まんでも問題ないからのぉ。

「モリス、話の続きをどうぞ」

「はい、リアム様。では、56階のセーフティエリアを出発してからの話をします……」

セーフティエリアを出発した後にデーモンが出て来たのか……ん? キラキラした剣は知っておるが、騎士団から『回復魔法』付の魔道具のテストをするなど、わしは聞いておらんぞ?

「ダンジョン攻略後、エリオット副隊長から、魔道具のテストについては軍事機密だと箝口令が出されたので、マルティネス様、リアム様、ここだけの話でお願いします。その魔道具なのですが……」

何、エリオット達がマンティコアの『麻痺』もデーモンの『毒』も受けなかっただと……『回復魔法C』の効果がある魔道具か。誰が作った魔道具じゃ。

リアムを見ると、腕を組んで眉間を中指で押さえておる……お前も聞いておらんのか。

まさか……。

◆ ◆ ◆

翌日、宮廷魔術団の施設にテオ殿とアリスがわしを訪ねて来た。タロウは店番をしているそうじゃ。

「レオ様、昨日は連絡もなく店を休んですみません」

「レオおじいちゃん、火の曜日なのに休んでごめんなさい。60階の攻略が……あんなに時間が掛かるとは思っていなかったんです」

アリスが、宮廷魔術団の施設まで顔を見せに来てくれたのが嬉しいわい。

「フォフォ、指名依頼なら仕方がなかろう。アリス、茶を淹れてくれんかのぉ」

「はい。レオおじいちゃん、今回、上質肉で干し肉を作ったんです。良かったら味見してください」

アリスがそう言って、バッグから出した小袋をくれた。

「ほお~、アリスが作ったのか、嬉しいのぉ。フォフォ」

これがリーダーの言っておった干し肉か……後でゆっくりを味わおうかの。

しかし、60階のワープ・クリスタルまで、たったの3日で攻略したとは……アリスが淹れてくれた茶を飲みながらダンジョンの話を詳しく聞こうとしたら、又、リアムが来よった。

「マルティネス様、失礼します。テオ殿とアリスに聞きたい事がありまして……」

リアムがそう言って、2人に『回復魔法』付の魔道具のテストの事を聞いておる……うむ、その話はわしも聞きたかった。

「リアム様、それはアリスがタロウの誕生日プレゼントに作った『聖魔法』付きのネックレスで、俺とアリスもお揃いで付けているんですよ。これです……」

テオ殿がそう言って、首につけている白い石のネックレスを摘まんだ。ほお~、それはアリスが作ったのか!

「見た目は、普通のネックレスですね……」

普通じゃと? リアムよ、ネックレスからアリスの優しい魔力を感じるではないか!

「はい。リアム様、今回、エリオット様からダンジョン60階攻略の依頼を受けたんで、アリスがエリオット様達にも同じ効果のネックレスを作ったんですよ」

テオ殿が、今回60階まで魔物から弱体を受けても、ネックレスの『聖魔法』が発動して弱体異常を治したと言う。う~む、良い魔道具じゃ……わしも欲しい。

「『回復魔法』じゃなくて『聖魔法』ですか……」

「はい。リアム様、タロウは『回復魔法』を覚えていて、ある程度の弱体は自分で治せるんです。だから、アリスはタロウに『聖魔法』のネックレスを作ったんですよ」

タロウが『回復魔法』を使えるのは、スタンピードの時に中央広場でアリスとタロウが治療していたから知っておる。

「はい、テオの言う通りです」

ニコニコとアリスが答える。

タロウが『聖魔法』を使えないから、『呪い』や『病気』を治せるように『聖魔法』を付加したネックレスを作ったと……いいのぉ。

アリスに、わしにもネックレスを作って欲しいと頼んでみたら、お世話になっているから第一騎士団に納品する前に作ってくれると言う。フォフォ、嬉しいのぉ。

リアム、 羨(うらや) ましそうな顔をするでない! そうじゃ……アリス、わしもアリスとお揃いの白いネックレスにしてくれんか?

「レオおじいちゃんもお揃いの白ですか? ふふ、分かりました」

フォフォフォ、アリスは可愛いのお~。

【番外編完結】