軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10. テンションMAXヒロイン

無事にルチアローズを取り戻したティアラローズは、ラピスラズリ王国の実家までやってきた。

到着するやいなや、父――シュナウスが舞い上がりながらティアラローズとルチアローズの下へやってきた。

「ティアラ、ルチア、よく来たね! 手紙をもらった当初は焦ったが、無事でよかった……」

シュナウスは安堵しながら、何度も「よかった」と繰り返す。

「アクア様が一緒ですもの。ね、ルチア」

「あー」

ティアラローズの問いかけに、ルチアローズが笑顔で答える。シュナウスは、そんな孫の様子にメロメロだ。

それを苦笑して見つつ、ティアラローズはエリオットとタルモを呼ぶ。

「今回は二人と、数人の騎士が一緒です。アクア様とキースが戻ってくるまでの間、よろしくお願いします」

「ご無沙汰しております。しばらくの間、お世話になります」

「よろしくお願いいたします」

エリオットとタルモが礼をすると、シュナウスは頷く。

「ああ、もちろんだ。部屋は用意してあるから、ゆっくり……と言っても難しいかもしれないが、自由にしてもらって構わないよ」

「ありがとうございます」

馬車の疲れもあり、夕食までは各自部屋でゆっくりすることとなった。

***

「うにゅぅ……」

ティアラローズがルチアローズと二人で部屋に戻ると、ルチアローズが眠たそうに眼を擦った。

「あら、お眠なのね」

お昼寝をさせるために、ティアラローズはルチアローズを抱いて寝室へ行く。すると、すでにベビーベッドが用意されていた。

ルチアローズ用にシュナウスが準備しておいてくれたようだ。

「お父様ったら……」

可愛い孫のために、必要になるかもしれないものは何でも揃えられている。

ベビーベッドにはじまり、数種類のおもちゃに、洋服、庭にはブランコまで設置されているのだから驚きだ。

――さすがにまだ遊べる年齢ではないけれど……。

もう少し大きくなったら、またルチアローズを連れて遊びにこようと思う。

そして屋敷中が、完璧にリフォームされていた。

危ない角は丸みをおびており、段差はゆるやかになっている。さらに階段の前には柵が設置されており、ルチアローズがはいはいをして自由に動き回っても落ちないようになっていた。

まさに、至れり尽くせり。

ルチアローズを寝かしたところで、部屋にノックの音が響いた。

「ティアラ様~! 私です、アカリです~!! 手紙をもらって参上しましたっ!」

「アカリ様! どうぞ」

元気いっぱいな声の持ち主、アカリ・ラピスラズリ・ラクトムート。

艶やかな黒髪に、ぱっちりした黒色の瞳。可愛いピンク色のドレスに身を包んだ、このゲームのヒロインだ。

今はメイン攻略キャラクターのハルトナイツと結婚し、ラピスラズリで暮らしている。

アカリは部屋に入ると、「ルチアちゃんは!?」と室内を見回した。

「ルチアはお昼寝中なんです。起きたら遊んでくれますか?」

「ああっ、残念! 起きたらいっぱい遊ぶわ!!」

お土産に新しいおもちゃも持ってきたのだと、アカリはカラフルな積み木を取り出した。

「わあ、可愛い」

丸、四角、三角、月、星、お花の形などがあって、見ているだけでも楽しい。これならば、ルチアローズも大喜びしてくれるだろう。

「でしょう~! 早く一緒に遊びたいですね」

「ええ」

つみきを一度片付け、ティアラローズは紅茶とケーキを用意する。

そしてお茶をしながら、フィラルシア王国であったことを、アカリに話した。

「ええええっ、地下にドワーフが!? うわあぁぁ、会いたい!」

ティアラローズの話を聞き終えると、アカリは瞳をキラキラと輝かせた。どうやら、ファンタジー要素にテンションが上がったらしい。

「しかも、精霊のシルフとノームにまで会ったなんて!!」

「わたくしが会ったのは、シルフ様だけですよ」

「ああっ、そうでした。でも、シルフに会えるだけすごい。いいなぁ、私も会ってみたいなぁ」

地面に穴を掘れば、エルリィ王国に行けるかな? なんて、アカリがとんでもないことを言っている。

「さすがにそれはちょっと……」

「冗談ですよぅ」

苦笑したティアラローズに、アカリが頬を膨らめる。いくらなんでも、そこまで馬鹿なことはしません! と。

――アカリ様だったら本当にやりそうなんだもの……。

思い立ったら即実行! というスタイルで、さらに無謀と思えることも平気でやろうとしてしまう。

そのため、冗談かと思ったらガチだったということが多々あった。

「でも、ちょっと勿体ないですね」

「え?」

アカリの言葉に、ティアラローズは首を傾げる。

「ノームと、ドワーフの技術ですよ。昔から、最高の武器を作るのはドワーフって決まってるじゃないですか」

しかも、その上位に位置するノームという存在までいるのだ。

「もし本気で武器を作ったら、どんなものが出来るんですかね。興味ありませんか? ティアラ様」

「争いごとは得意ではないので……」

「えぇぇ……」

ティアラローズの返事に、アカリはぶーたれる。

「武器は男のロマンですよ」

「わたくしたちは女ですよアカリ様……」

「そうとも言いますね」

ぶんぶんと剣を振り回す動作をしながら、アカリは「伝説の剣―!」と叫ぶ。

「でも、アカリ様が剣を使っているところなんて見たことがありませんよ?」

アカリは魔法で戦うので、武器を持つということがない。そもそも、魔法で戦うならば剣より杖の方がいいのでは……と、ティアラローズは思う。

「それはそうなんですけど……これを機会に、魔法剣士にジョブチェンジするのもありじゃないですか?」

「このゲームにジョブ設定はありませんよ」

「そうだったー!」

ガーン! と、アカリがショックを受ける。

「ちぇ、格好いいと思ったのになぁ。ノームの剣なら、勇者にだってなれそうなのに」

「あまり無茶をすると、ハルトナイツ殿下が心配しますよ」

アカリと結婚して以降、かなり振り回され気味のハルトナイツ。このままでは、彼の胃に穴が開いてしまいそうだ。

「はぁ~い。とりあえず、ルチアちゃんが無事でよかったです。もし何かあったら、私が国を滅ぼしに行くところでしたよ~」

「さらっと恐ろしいことを言わないでくださいませ」

冗談か本気かわからない。

アカリは笑いながら、ケーキをもぐもぐしている。

「……でも、嘘じゃないですよ。私、自分の親友の子どもを傷つけられて笑ってられるような人間じゃないですから」

「アカリ様……。ありがとうございます。わたくしの周りは頼もしい人ばかりで、とても恵まれていますね」

じわりと、ティアラローズの目頭が熱くなる。

「私もアクア様もいますし、何があっても絶対に大丈夫ですよ! 売られた喧嘩は全部買いますよ!」

だから心配無用だと、アカリが胸を張る。

すると、寝室から「ふえぇぇ」とルチアローズの声が聞こえてきた。ちょうどお昼寝から目が覚めたようだ。

「ルチアちゃん!」

アカリがぱっと表情を輝かせて、「会いたーい」とにこにこ笑顔になった。

ルチアローズを連れてきて、ティアラローズたちはラグマットの上へ移動した。ここなら、ルチアローズとつみきで遊ぶことも出来る。

「アカリお姉ちゃんが、ルチアにプレゼントしてくれたのよ」

「あー?」

目の前にカラフルなつみきを置かれたルチアローズは、興味深そうにじっと見つめている。どうしたらいいか、考えているのかもしれない。

しばし観察したのち、ゆっくりと手を伸ばして星のつみきを手に取った。

「あー!」

おもちゃだということがわかったようで、ルチアローズは嬉しそうにつみきを掴んで腕を振る。それだけで、十分楽しいようだ。

「わー、ルチアちゃんとっても上手! アカリお姉ちゃんとも一緒に遊んでね」

「あう~」

アカリがお花のつみきをルチアローズに差し出すと、嬉しそうに掴む。そのまま持っていた星のつみきとぶつけてカンと音を立てた。

「ん~、まだつみきで何か作ったりは難しいですかね」

「さすがにそれは無理ね。今みたいに、持って遊ぶくらいじゃないかしら」

「成長が楽しみですね」

「ええ」

しばらくつみき遊びを楽しんだ。

***

夜になり、ティアラローズはルチアローズと二人でベッドへと潜る。

アカリはゲストルームに泊まっていて、タルモは護衛、エリオットは休んでいる。そのほかにも、屋敷の周りを数人の騎士が見張っている。

やっとルチアローズと一緒に過ごせると思ったら、今度はアクアスティードがいない。

「アクアのいない夜は、慣れないわね」

今頃どうしているだろう。

ちゃんとご飯を食べているだろうか。怪我は? あまり荒っぽいことになっていなければいいのだけれど……と、アクアスティードのことを心配する。

早く帰ってきて、抱きしめて、キスをしてほしい。

そんな風に考えてしまうのは……寂しいからだろうか。

「……っ、駄目よ、アクアはルチアのために頑張ってくれているのだから。わたくしだけが、こんな我儘みたいな……」

ティアラローズがしっかりしなければとぶつぶつ呟くと、隣で寝ていたルチアローズが起きてしまった。

「うぅ?」

「ごめんなさい、ルチア。起こしてしまったわね」

「あーう」

大丈夫だよと言うように、ルチアローズは笑顔を見せる。

そのままくるりと寝返りを打って、うつ伏せ状態になった。ティアラローズの方へずりずり這って、小さな手で触れてきた。

「ルチア……」

頬に触れるルチアローズの感触に、ティアラローズは頬を緩める。

「ありがとう、元気づけてくれているのね」

「きゃーう」

にこにこ笑うルチアローズを抱きしめ、「もう大丈夫よ」とティアラローズは笑顔を見せる。

「わたくしたちは、パパのことを信じて待っていましょうね。キースも一緒だし、マリンフォレスト最強の二人が揃っているのよ」

不安になってしまうけれど、正直この二人組に勝てる相手がいるところは想像できない。

むしろ、怒りに任せてキースが大暴れしないかということの方が心配だ。キースはとても、ルチアローズのことを可愛がってくれているから。

「さあ、もう寝ましょうルチア」

「あー」

ティアラローズはルチアの髪を撫で、落ち着いた声で子守歌をうたう。ゆっくり眠れますように、と。

「花のゆりかごを揺らして、いい子いい子にお眠りなさい♪」

「あー……」

子守歌を聴いたルチアローズは、すぐに眠ってしまった。

ティアラローズはその可愛い寝顔を眺めながら、アクアスティードたちの無事を祈った。