軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

愛妻弁当と秋の大収穫

秋になれば、春先に植えた野菜の収穫作業を行う。

今年は暑かったり寒かったりで気温が安定しなかったから、作物の育ちは良くない。

まあ、毎年なにかしらあるので、半ば諦めながらの収穫となる。

比較的簡単に収穫出来る根菜類は子供達の担当。

ニンジンを引っこ抜いたり、ジャガイモを掘ったりと一生懸命に働く様子はなんともいじらしい。

お昼時になれば各々の家から持って来た昼食を食べる。

今日はジークが昼食を準備してくれた。

いつも自分で用意しているので、感動してしまう。

ジークは一体なにを作ってくれたのか。どきどきしながら籠を開く。

まず、目に付いたのが皮つきの三つの大きなジャガイモ。きちんとふかしてあり、塩と香草が振ってある。他には串刺しにした細長い腸詰めがドーンと縦に入れられており、ただものではない存在感を示していた。

ジャガイモと腸詰めは先日ジークの実家から送って来たものだ。

籠の端っこには小さな瓶も入っている。中身はキャベツの酢漬け。これもジークの手作りだろうか? お弁当に瓶を入れるとは新しいなと思った。

メインはパン粉を付けて揚げたお肉。上に薄く切ったレモンが乗っている。

以上が愛妻弁当の内容である。

うん。なんていうか、料理に慣れていない元軍人さんが一生懸命作ってくれた感じがいい! 主食がパンではなくて、ジャガイモな所もジークの国っぽい。

手作り弁当は素晴らしく美味しかった。

出来れば作っている所を覗きたかった位に。

そして、午後からまた働く。

収穫した野菜は一か所に集められて、目の肥えたおじさんたちが選別を担当する。

野菜は採れたての状態で出荷となった。

商人から支払われたお金がこの村人からの税として受け取るようになっている。

傷があったり、小さすぎたりと理由があって買い取り不可の野菜も税金代わりなので、皆で分け合いたい気持ちはあったが持って帰るしかない。

今年はジャガイモが不作だった。

ただでさえあまり大きく育たないのに、今年は親指と人差し指を丸めた位にしか成長しなかったという。商人から買い取って貰えなかったジャガイモが大きな袋に二つ分もある。

どういう風に調理しようか考えながらの帰宅となった。

◇◇◇

「おかえりなさい」

「ただいま~!」

庭仕事をしていたジークが立ち上がって出迎えてくれた。

「ジーク、お弁当ありがとね」

「いや、大したものではなかったが」

「いえいえ。全部美味しかったよ!」

普段だったらここでジークにお礼のキスでもしていたけれど、今日は泥だらけなので近づくことさえ許されない。

そんな小汚い夫を見かねてジークが声を掛けてくれる。

「リツ、先に風呂に入るといい」

「え、いいよ。ジーク先に入って。それまで雑草取りしているし」

「いいから入れ。疲れているだろう」

「いいの?」

むしろジークが入った後がいいんだけど! なんてうっかり言ってしまったら変態扱いされるかもしれないので、今日はお言葉に甘えることにした。

体中の汗と泥を落として清潔な状態になってから居間に移動する。

長椅子で寛いでいればミルポロンが蜂蜜レモンジュースを持って来てくれた。

「ありがと~」

いつものようにミルポロンは拳で胸を打ってから消えて行く。

彼女も大きくなったものだと、いつの間にか自分より広くなっている背中を見送った。

本日の野菜の売上について、余り物をどうするか、と考えているうちにジークがお風呂から上がって来た。

隣をぽんぽんと叩けば、腰掛けてくれる。

「野菜はどうだったか?」

「う~ん、ぼちぼち、ってところかなあ」

ジークの国で生産されているジャガイモのように、拳大のものが収穫出来れば実入りも違うだろうに、考えてしまう。

今年は城塞軍人のアールトネン隊長に財政相談をしたので、色々と試したいところだ。

ジークとお喋りしていると、夕食の準備が整ったようで料理が運ばれてくる。

スープは鍋ごと食卓に置いてから皿に装われる。そのまま置いて行くのでおかわり自由となっていた。

本日のスープの主役はキノコ。夏に採って乾燥させていたキノコが入っている。

皮をパリっと焼いた鶏肉の香草焼きに、魚のオイル漬けと葉野菜のサラダが並べられた。

机の真ん中に置かれた大皿は、ジャガイモのグラタン。

その隣に山盛りになった揚げたジャガイモが添えられる。

「今日もごちそうだね。いつもありがとう」

ルルポロンにお礼を言えば、にっこりと微笑み返してくれた。

ジークが小皿にグラタンを取ってくれる。

自分は棚の中から酒を取り出して、奥様のグラスに注いだ。

「では、いただきますか」

「そうだな」

精霊に感謝の祈りを捧げてから、食事を始める。

スープの中に入っているのはカンタレッリ、毒キノコだ。生食しなければ大丈夫だと言われている。

胡椒のようなぴりっとした風味があり、コリコリとした食感があって美味しい。乾燥させたことによって旨みもぎゅっと凝縮している。

じっくり煮込んだと思われる澄ましスープはやや薄味の上品な味わいだった。さすがはルルポロンと心の中で称賛を贈る。

鶏の香草焼きはナイフを入れたらじわりと肉汁が溢れる。皮はパリっと香ばしく焼かれ、お肉も柔らかい。香草の風味が食欲を刺激してくれる。

魚のオイル漬けのサラダはパンに載せたら美味しそうだと思ったが、残念ながら今日の食卓にはない。揚げたジャガイモがパン代わりになるかもと一緒に食べてきたら、葉野菜のシャキシャキとカリカリに揚がったジャガイモが合うことが判明した。さらに魚を乗せたものは酒が飲みたくなった。非常に美味である。

グラタンのジャガイモは皮つきのまま刻まれて入っていた。

収穫したばかりのジャガイモはあつあつホクホクで甘みがある。表面の焼き目の入ったチーズもカリッとしていて美味しい。

秋の恵みが並んだ夕食は素晴らしいものばかりであった。

夕食後、長椅子に座っているジークへ夜のお誘いをした。

「ジーク、遊んで~」

今日はちょっとだけ疲れているので、単純な遊びがしたいと思ってカードを持って来る。

机の上にカードを裏返しで並べ、バラバラにして同じ数字を二枚一組で当てるだけという遊びをした。

暗記するのはジークも自分も得意なので、最終的には早い者勝ちみたいな勝負になってしまう。

勝負をする時は毎回負けた人への罰を決めてから行っていた。

皿洗いだったり、床磨きだったり、お菓子作りだったり。

「今日はどうする?」

「リツはなにがいい?」

「そうだな~」

なにがいいかと聞かれても、仕様もないものしか思いつかない。

「ジークは?」

「そうだな、負けた方がおさげの三つ編みにするとか」

「うわ、それはえげつない!!」

ジークはまだおさげにするほど髪の毛は伸びていないが、実家から送られてきた付け毛があるという。

「これ、ジークが負けても何も痛まないじゃん!」

「いや、三十代のおさげはかなりキツいだろう」

「そんなことないよ。絶対可愛いって!」

「……」

なんだか話をするうちにジークのおさげ姿を見たくなってしまったので、腕まくりをしてゲームに挑む。

――結果。

「うわ、負けた」

見事な惨敗。

やっぱり疲れていたからか、注意力が散漫になっていたのかもしれない。

勝利したジークから、櫛とリボンを手渡される。

「どうしたの、このリボン」

「兄がふざけて送ってきたやつだ」

ベルベットの手触りの良い、薄紅色のリボンだ。

もしかして、これで髪の毛を結べと言うのだろうか。念の為に聞いてみれば、そうだという返事をしてくれるジークリンデ。

仕方がないので、渋々左右に三つ編みを編んでから、仕上げにリボンで飾ってどうだとジークに見せた。

「ねえ、気持ち悪いでしょう?」

「いや、いい」

いいわけないじゃんと呟き、両手で顔を隠して羞恥心に悶えることになった。

◇◇◇

このようにして、ジークと二人の夫婦生活は穏やかに過ぎて行く。

春夏秋冬物語 完