軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07話『龍と契りを結んだ国』

クラーケン討伐から三日が経過した頃。

七日に渡る船旅は終わりを迎え、目の前にはエーヌビディア王国の陸地が見えていた。

「ネット」

船が港に近づく中、メイルが声を掛けてくる。

「約束通り、礼をさせてもらおう。今日の予定は大丈夫か?」

「ああ、終日空いている」

「よかった。なら案内したい場所がある」

予定は空いているというか、空けておいた。

本当なら待ち合わせしている相手がいたが、相談の末、彼女と会うのは明日に変更したのだ。

「あ、あの、メイル様。よろしいのですか? 他国の冒険者を、城に招くなど……」

「彼は私たちの恩人だ、問題ないだろう。それにルシラ様は冒険者が好きだ」

騎士たちが何やら会話している。

騎士や城といった単語を耳にして俺は苦笑した。どうもここ最近、そういったものと縁がある。

「メイルたちはどうしてインテール王国にいたんだ?」

「ただの使いっ走りだ。そちらに滞在している我が国の貴族を、数日ほど護衛していた」

インテール王国に、エーヌビディア王国の貴族が足を運んでいたらしい。

それは知らなかった。

「無事に着いたな」

メイルが呟く。

船が港に到着して停まった。

「ようこそ。龍と契りを結んだ国、エーヌビディア王国へ」

龍と契りを結んだ国、エーヌビディア王国。

この国は建国の際、大いなる龍の力を借りたと言われている。それまで、この辺りの土地は作物が育たず干からびていたそうだが、龍の加護によって大地は潤い、資源に恵まれたそうだ。

モンスターの中には、知性を持ち、人と対話できる種類もいる。

龍はその代表例であり、非常に強い力を持つモンスターだ。歴史を紐解けば、人間と龍は時に争い、時に協力していたことが分かるが、建国を支えた龍はエーヌビディア王国の例しかない。

「壮観だな」

「ふふ……そうだろう、そうだろう! ここはいい国だぞ!」

母国を褒められて嬉しかったのか、メイルは楽しそうに笑みを浮かべた。

エーヌビディア王国の建物は、インテール王国と比べて規模が大きい。そのような文化が根付いているのだ。観光客を楽しませるためか、あちこちに龍の飾りや置物が見える。港町にしては華やかな景色だ。

「ちなみにこの町には、あの伝説の冒険者パーティ、『 七燿(しちよう) の 流星団(りゅうせいだん) 』も立ち寄ったことがあるんだ」

「え?」

メイルの発言に、俺は思わず疑問の声を発した。

「おい、なんだその反応は。まさか『七燿の流星団』を知らないわけではあるまいな?」

「あ、ああ。流石にそのくらいは知ってるが……」

知らないわけがない。

冒険者パーティ『七燿の流星団』――それは恐らく、この世界で最も有名な七人の冒険者だ。

難攻不落のダンジョンを踏破したり、世界を脅かしていた大型モンスターを討伐したり、前人未踏の土地を開拓したりと、その冒険者パーティが成し遂げた偉業を挙げれば枚挙に暇がない。

名実ともに、最強の冒険者パーティと言えば『七燿の流星団』である。

それは最早、世界共通の常識となっていた。

同じように……『七燿の流星団』が、一年前に解散した事実も、世界中の人々が知る常識だ。

「その『七燿の流星団』が……この町に寄ったのか?」

「そうだ! と、胸を張って言いたいところだが……厳密には、近くを通り過ぎただけだ。しかし相手が『七燿の流星団』ともなれば、それだけでも誇らしい気分になれる」

「ああ……成る程。そういうことか」

少し情報の食い違いがあったようで困惑していたが、納得した。

冒険者パーティ『七燿の流星団』の名声は凄まじい。パーティが暫く滞在したというだけで、その町が観光名所となることもある。きっとこの港町もそうした経済効果を狙い、メイルが話したような売り文句を国民に広めたのだろう。

「エーヌビディア王国にも、有名な冒険者パーティは幾つかあったよな?」

「ああ。一番有名なのは『白龍騎士団』だろうな。ネットも名前くらいは知っているだろう?」

「勿論だ」

冒険者パーティ『白龍騎士団』。

エーヌビディア王国出身であるそのパーティは、冒険者にしては珍しく、全員が騎士甲冑を身に纏っている。主にダンジョンの攻略や、モンスターの討伐で名を上げたパーティだ。

「『白龍騎士団』は冒険者のパーティだが、この国の騎士たちにとっては憧れの的となっている。特に、団長のレーゼ=フォン=アルディアラ様は、S級冒険者である上に、元貴族という立場もあって、気高くて美しいと評判だ。……かく言う私も、彼女に心酔している」

「メイルは、その団長とやらに憧れているのか」

「ああ! 『七燿の流星団』に並び、この世で最も尊敬する一人だ! 私もいつか、あのような騎士になりたいと思っている!」

本当にその団長のことを尊敬しているのだろう。

メイルは興奮気味に言った。

「ネットがいたインテール王国にも、有名な冒険者パーティは幾つかあるのではないか?」

「まあな。でも最近の話題となれば、やっぱり勇者パーティだと思うぞ」

「勇者パーティか……そう言えば丁度、我々がインテール王国を発つ時に、勇者パーティも旅を始めたみたいだな」

メイルもインテール王国の勇者パーティについては多少知っているらしい。

「しかし、今でこそ世界各国が勇者パーティを派遣しているが……私はてっきり、『七燿の流星団』がそのまま魔王を討伐するかと思っていた」

メイルが呟く。

きっとそう思っていた者は少なくない。それだけ、『七燿の流星団』は強かった。

「一年前に解散して以来、『七燿の流星団』は世間に顔を出していない。今頃、彼らは何をしているのだろうか……?」

「さぁな。……まあ好き勝手に生きてるんじゃないか?」

「いいや! きっと国の要職を任されていたり、或いは極秘任務を遂行したり……とにかく、私たちでは想像もつかないことをしているに違いない!」

メイルは少し夢見がちな性格らしい。

「インテール王国の勇者パーティはどんな感じなのだ? やはり国が直々に選定した以上、相当な強者なのだろう?」

「……どうだろうな。確かに強さだけなら、多分、どの国の勇者パーティよりも優れていると思うが……」

小さな声で言う俺に、メイルは不思議そうな顔をする。

「号外! 号外だよー!」

その時、目の前を新聞売りが通り過ぎた。

俺はポーチから硬貨を取り出して、新聞売りに近づく。

「一部くれ」

「はいよ!」

受け取った新聞をすぐに読む。

隣にいるメイルが、覗き込むように顔を新聞の方へ近づけた。

「なんだ、これは……?」

一番大きな見出しを目にして、メイルが驚く。

「あーあ……だから言ったのに」

そこには、でかでかとした文字でこう書かれていた。

――インテール王国の勇者パーティ、街を破壊する。