軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

03話『さらばインテール王国よ』

インテール王国の王城を出た俺は、そのまま城下町を歩いていた。

行き先はもう決めている。国外だ。殿下にそれを伝えると猛反対されそうだったので、王城で話している時は敢えて黙っていた。

「ここからだと……エーヌビディア王国が近いか」

港町から出ている船に乗れば、すぐにエーヌビディア王国に着く。

できるだけ早いうちに、とにかく陛下の権力が及ばない場所へ逃げたい。

なにせ『星屑の灯火団』のメンバーたちは、皆、一癖も二癖もある馬鹿ばかりである。制御さえできれば最高の成果を持ち帰ってくれるのだが、残念ながらユリウスに彼らの手綱を握ることはできないだろう。

彼らを制御できなければ――凄惨な被害が生じる。

後になってその責任を押しつけられては堪らない。

だから、とっとと外の国に逃げたいのだ。

「いらっしゃーい! 最新の魔道具が売ってるよー!」

露店の方から店主の声が聞こえる。

そう言えば、そろそろ魔道具を新調しておきたい。必要な分は既に持っているが、魔道具はデリケートな代物であるため、冒険など荒っぽい活動をすると、破損したり調子が悪くなったりするのだ。この辺りで新しいものに交換した方がいい。

「通信石はあるか?」

「ああ勿論だ。値は張るけどな。……ひとつ二万ゼニーだぜ」

高価だが、相場通りだ。

「じゃあ六つくれ」

「六つ? ……ああ、さてはお客さん、勘違いしてるな」

店主は苦笑して言った。

「通信石はひとつで百人分の連絡先を登録できるんだ」

「百人分?」

「ああ。だから一つで十分足りる――」

「じゃあ八つくれ」

「……は?」

店主は目を見開いて驚いた。その様子を無視して俺は金を出す。

登録したい連絡先の数は七一〇人だ。他国の通信石は、ひとつで一二〇人分の連絡先を登録できるから、てっきり六つで足りると思っていた。

「ま、毎度あり……」

購入した通信石を腰に巻いたポーチの中に入れる。

動揺したままの店主と別れ、俺は港町へ向かった。

「さて……次は船に乗る手続きを済ませるか」

城下町と港町は近い。しかし時刻は既に正午を回っている。

多分、今日は船に乗れないだろうから宿泊することになるだろう。だったら宿を予約するためにも早めに港へ着いた方がいいと思い、俺は馬車を借りることにした。

港町に着いた俺は、すぐに船の乗り場へ向かった。

「エーヌビディア王国へ行く船に乗りたいんだが、まだ席は空いているか?」

窓口に行き、新聞を読んでいる受付の男に声を掛ける。

「ああ、席は空いているが……実はちょっと問題が発生していてな。暫くの間、乗船には制限が設けられている」

「制限?」

「エーヌビディア王国へ向かう途中の海域に、クラーケンっていう大型のモンスターが発生したんだよ。そのせいで今、船に乗っていいのは、A級以上の冒険者か、公的機関の任務で今すぐに海を渡らなくちゃいけない者に限られているんだ」

クラーケンは危険なモンスターだ。

その制限には納得するが……。

「なら問題ない。俺はA級冒険者だ」

そう言って俺は、懐に入れていた冒険者カードを取り出し、男に見せる。

冒険者カードとは、所属している冒険者ギルドで発行される身分証明書のようなものである。そこには登録者名の他、冒険者としての等級も記されていた。

「ほぉ~……見かけによらず凄いんだな、お前」

「よく言われる」

陛下には馬鹿にされたが、A級冒険者とは本来なら十分賞賛に値する身分だ。

こういう制限を乗り越えることができるのも、A級の特権である。

「よし、席を確保しておいた。出発は三日後だから、遅れるなよ」

「ああ。……あ、ちょっと待った」

踵を返す寸前、俺は男に改めて声を掛けた。

「海図を見せてくれないか? クラーケンが出る海域を知りたい」

「知ったところで意味はないと思うが……まあいいだろう。ちょっと待ってな」

暫く待つと、男がカウンターに海図を広げる。

「ここに、クラーケンが出たみたいだ」

男が指をさして、クラーケンがいる場所を教えてくれた。

(……この海域なら、ギリギリ 笛(・) の音が届くな)

万が一のことを考え、その対策を練る。

取り敢えずクラーケンが出てきてもなんとかなる算段は立てられた。

「ありがとう、助かった」

「おう。何だか知らねぇが、役に立ったならよかった」

窓口を離れた俺は、三日ほど寝泊まりするための宿を探すことにした。

港町だけあって宿は沢山ある。折角なので美味しい海鮮料理が出る宿にしよう。