軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第25話

「ラルクー!……もう、あの子ったらどこに行ったの?」

白い息を吐いて不満を口に出す。

冬は終わりとはいえ、まだ冷たい空気を吸い込むと顔を撫でた風が肌を刺す。

ストールを羽織ってすっかり日が暮れた外に出ると、メイドと一緒に花を摘む小さな姿を見つけた。

「ラルク!」

名前を呼ぶと、ユリウスに似た青い瞳をこちらに向けたラルクは、ぱあっと笑顔になりその小さい足で走り出す。両手を広げて迎え入れれば、ぽすっと腕の中に収まった。

「ラルク。何をしていたの?」

「かあさま。このお花ラルクからのプレゼントなのです。かあさま、この花すきって、とうさまが。」

小さな手で差し出してきたガーベラを受け取り、サラサラの銀髪を撫でてやれば上機嫌に笑った。

「そうだったのね。ラルクは優しいわね。ありがとう。」

「どういたしまして!」

「ほら、冷えるわ。父様も心配するからお部屋に戻りましょうね。」

そう言って手を差し出すと、冷たく冷えた手がぎゅっと握った。

私とユリウスの間に生まれた第一子、ラルクは先日で三歳になった。可愛らしい顔立ちをした男の子で、ユリウス曰く私に似ているらしいのだが、どう見てもユリウス似だと思っている。

ユリウスはラルクにも大概甘いのだが、最近は私にベッタリなラルクが気に入らないらしく、「僕は仕事しなきゃいけないのに」と拗ねている。

全く、自分の息子にまでヤキモチを妬かないで欲しい。

今日もそんなこんなで、私と同じベッドで寝ようとしたラルクを引き離し、大人げないユリウスはご機嫌だ。

「はぁ、会いたかったエリシア。」

「ふふっ、おかしな人。いつも会っているじゃない。」

私が笑えば、少し不満げにムッとしながら抱き寄せる。

「そんなんじゃ足りないよ。僕は仕事がなければずっと触れていたいくらいなんだよ?」

「息子を寝室から追い出すくらい?」

「そうだよ。自分の息子とはいえ、君の腰にずっと抱きついているなんて、すごく羨ましいよ!」

「あの子はユリウスを真似しているだけよ。」

宥めるために頬を撫でると、気持ちよさそうに擦り寄って「そうかもしれないけど」と言っている。

結婚してからもうすぐ五年経つというのに、ユリウスはいつまでも新婚のような態度のまま。

私が少し体調を崩せばすぐさま仕事を休み看病をし、仕事から帰ったユリウスを出迎えれば熱烈な抱擁が返ってくる。

恥ずかしげもなく人前でもするものだから、屋敷の使用人にとっては日常の光景となっていた。

「機嫌直して。仕事を頑張るユリウスは素敵よ?」

そう言って自分から唇を軽く重ねると、すぐにお礼が返ってくる。そのまま額に、頬に、瞼、鼻、と唇を落としたユリウスは、最後にまた唇に戻って顔を離した。

「仕方ないなぁ。今回は許してあげるけど、いつもこの手が使えると思わないでね。」

少し不満気な顔に「ありがとう」とクスクス笑って答える。ユリウスはそう言っているが、いつもそれで許してくれる。私の考えが分かっていながらも、許してくれなかったことは無いのだ。

可愛らしい様子に、もう一度口付けを送って明日に備えて寝ようと、ベッドまで手を引いた。

横になった私の隣に体を滑り込ませたユリウスは、そっと私の体を抱き寄せた。

「僕の腕の中にいるエリシアが一番可愛い。」

さらりと伸びてきた髪を撫で、微笑む彼に胸が熱くなる。

「ふふ、いつも言うけど、それはなんなの?」

「エリシアは僕のものってこと。」

いつもの疑問を投げかければ、聞き慣れた答えが返ってくる。きゅん、と胸がなって、相変わらず私も彼に弱いと自覚する。

「そう。だったら貴方も私のものだわ。」

「それは嬉しいね。」

へらっと笑ったユリウスの背に腕を回して、落ち着く匂いに目を閉じた。「おやすみなさい」と言い合ってお互いの体温を感じながら眠りについた。