軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26.

無事、エイヴリルたちは勝ち、コリンナの罰金分を稼ぐことに成功した。

ゲームを見届けた観客たちは、勝敗が決まると興味を失ったようで、ゲーム台の周囲から散っていく。サロンにはざわざわとした喧騒が戻り、エイヴリルたちが来たときと変わらない空気が漂い始めた。

そんな中、無事に大金を手に入れたコリンナはディランに駆け寄る。

「ありがとうございますぅ、公爵様! では私からも情報をお教えしますね?」

けれど、媚びるような視線をディランは手を挙げて静止した。

「結構だ」

「え? でも……」

コリンナの言葉は完全に無視だ。

エイヴリルが自分と話しているところを『誰か』に見られたくないと理解しているらしいディランは、視線を前に向けたまま口元を手で隠し、独り言にも思える言葉を漏らす。

「身の安全は保障されているんだな?」

「!」

息を呑んでわからないほどに小さく頷くと、ディランはゆっくりと息を吐いた。

「すぐ迎えに行く。その時はもてなしてくれ」

「!」

それからエイヴリルに一瞥もすることなく、離れて行ったのだった。

(ディラン様……)

何かあるたびに、ディランはエイヴリルのことを真っ青になって心配してくれる。

ランチェスター公爵家にやってきて間もない頃、コリンナの差し金で怪しげな『男娼』が訪ねてきたことがあった。その後、彼は別棟に住んでいたエイヴリルを母屋に呼び寄せた。

そのときの動きからも、ディランはエイヴリルが危険なことに巻き込まれないよう、できることなら屋敷の中においておきたいと思ってくれているのは何となく感じている。

このまま、彼の後をついていけたら、どんなにいいことだろう。今夜ランチェスター公爵家に戻って、これまでの日常を取り戻すのだ。そうするのが正当で、当たり前で、自分を心配してくれる夫のためでもある。

けれど。

(でも、もし私がここで公爵家に戻ったら、ルイーズさんはどうなるのでしょうか)

ロラが彼女を人質扱いしていることが最大の懸念点だが、それだけでなく、ルイーズは中途半端に手を差し伸べられてそのまま捨て置かれることになる。

ルイーズはエイヴリルに『助けてくれ』なんて一言も言っていない。何もかも、エイヴリルが彼女を助けたくて勝手にやっていることだ。

彼女の優しい眼差しを思い出して、エイヴリルは口を引き結ぶ。朧げな記憶の中にある、病気がちだった母の姿が重なった。

(ルイーズさんを置いてはいけません。元気になって……幸せになってほしいです)

貴族サロンはその後も続いた。目的を果たしたエイヴリルは、ロラにそれを悟られないように気を配りつつ、壁の花になって過ごした。

一方のコリンナは途中からどこかへ消えてしまった。きっと、誰か好みの男性を見つけたのだろう。

そう思ったエイヴリルは特に深追いして探すことはせず、サロンがお開きの時間になるのを待ったのだった。