軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53.結婚式

それから数ヶ月後。

王都の歴史ある教会で、ディラン・ランチェスターとエイヴリル・アリンガムの結婚式が盛大に行われた。

社交があまり得意ではないとされる家柄のランチェスター公爵家だが、それでも招待客は多い。しかも、一年前に中止になった式と比べると倍以上に増えている。

教会の入り口でその気配を感じながら、エイヴリルは微笑んだ。

「一年前との賑やかさの差は、ディラン様が一年間で塗り替えられたランチェスター公爵家の評判そのものですね」

「いや、半分はきみがやったんだがな……」

式の直前に遠い目をされてしまった。

自分がランチェスター公爵家の評判に影響を及ぼしたなんて、どう考えてもそんなことはないと思うのだが、全力で否定するのもどこか違う気がして、エイヴリルはただ笑みを浮かべるだけにしておいた。

今まさに教会に足を踏み入れる二人の会話としてはおかしいだろうから。

しかし今日は快晴である。

頭上には青空が広がり、見上げるとその眩しさに目がくらみそうになってしまう。白亜の教会の入り口に飾られたたくさんの花には蝶が舞い、そこから漂う甘い香りに包まれてエイヴリルは幸せを感じていた。

「一年前の式では、教会の中でディラン様がお一人で私を待っていて、そこへコリンナが入って行ったのですよね。今想像すると、ちょっと笑ってしまいます」

「いくら外見がうりふたつとはいえ、どうして騙せると思ったのか……本当に疑問だな」

「コリンナは私がディラン様に嫌われていてほとんど顔を合わせたことがないと信じきっていたそうですから。ある意味素直なコリンナとしては、当然の思い込みだったかと」

「あの頃には、俺はすっかりエイヴリルに夢中だったというのにな」

「ディ、ディラン様?」

甘く低い声で囁かれて、全身が心臓になってしまったように感じる。一応慣れたとはいえ、不意打ちはやめてほしい。けれど、ディランは何でもないことのように続ける。

「いや違うな。一年どころか、そのずっと前からだったか」

その瞬間、教会の扉が開く。荘厳な雰囲気の礼拝堂は天井が高く、パイプオルガンの音が響き渡っている。

これからディランと歩く道には、天窓のステンドグラスで色づいた光が映し出され、とても美しい。

――今日は公爵様とエイヴリルの結婚式だ。

大切な人が作ってくれたドレスに身を包み、大切な人の母親から贈られたティアラを身につけたエイヴリルは、自分の夫となるディラン・ランチェスターと一緒にバージンロードをゆっくりゆっくりと歩いていく。

一年前には、階段室から見守っていた光景。きっと、今日という日は忘れがたい幸せな日になるのだろう。

それなのに、感動する一方でまた一年前のことを思い出したエイヴリルは、ほんの少し笑いそうになってしまった。しかしどうやらディランも同じことを考えているようだった。

目が合った二人は微笑み合う。

それは、はじまりが契約結婚だったなんて想像すらできない、愛し合う幸せな二人の姿。

列席しているローレンスやアレクサンドラ、自分を支えてくれた皆に見守られながら、エイヴリルはディランに支えられ、誓いの祭壇へと進んでいく。

ここに、エイヴリルのこれまでの人生での家族はいない。でも、これから家族となってくれる人はたくさんいる。

(まさか、私にこんな日が本当に訪れるなんて。とっても幸せですね)

誓いの言葉が終われば、自分を導いてくれる愛する人の手が、エイヴリルの顔を覆っていたヴェールをあげる。

そうして、この始まりの日に永遠の幸せを願うのだった。