軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十話「技能品評会:後篇」

トリア暦三〇一八年四月二十一日。

デーゲンハルト・グラブシュらウェルバーン支部の鍛冶師たちが作った武具の品評会が行われている。

兄ロドリックの剣の披露、そして、祖父と父の鎧の説明が行われた。

硬化の魔法が掛けられたミスリル製の板に、特殊な処理をした地竜の革を貼り付けられた板金鎧と同じ構造のパーツは、名工ウルリッヒ・ドレクスラーの剣を防ぎきった。

その事実に会場のドワーフたちは声を失い、大勢いる商人たちも同様に言葉を失っていた。商人たちはウェルバーンの鎧が新たな商売のネタになると計算し始めている。

防具の確認が終わったところで、「最後にお二方の剣を見ていただきます」と司会のジョニーがいい、デーゲンハルトが再び舞台の中央にやってくる。

祖父と父を手招きし、剣を抜かせる。

「見ての通り、アダマンタイトの魔法剣だ! いずれも火属性が付与されておる。もちろん、硬化の魔法も掛かっておる……」

デーゲンハルトが簡単に説明すると、先ほど兄が試し斬りした標的と同じものが舞台の上に持ち込まれる。

「まずはマットに試し斬りしてもらう。マット、頼む」

父は小さく頷くと、魔法を纏わせる前の剣を高々と掲げ、観衆に見せる。そして、標的に向きを変えると、オレンジ色の炎を纏わせていく。

身長百九十センチほどで厚い胸板を持つ父が炎を纏った剣を構えると、村人たちから歓声が上がる。父はその歓声に応えることなく、一気に剣を振り下ろす。

兄の時とは異なり、金属同士がこすれるような音はするものの、鉄でできた人形を見事に斬り裂く。

ウルリッヒの顔に驚愕の表情が浮かんでいる。理由は何となく分かるが、今は聞かずにイベントを進めていく。

「ご領主様、ありがとうございました」というジョニーの言葉に会場は拍手が沸く。

祖父の試し斬りも見事に終わり、会場に溜息が漏れる。

試し斬りは終わったが、まだすべての披露が終わったわけではなかった。

「この剣には二つの属性が付与されておると言った! 実際にはもうひとつ属性を付与している」

デーゲンハルトの言葉に「三属性じゃと!」とドワーフたちが騒ぎ出す。

「お静まりください! 今から支部長が説明します!」というジョニーの叫び声が響くが、中々収まらない。

ウルリッヒが「鎮まれ!」と一喝すると会場に静けさが戻る。

「デーゲンハルトの説明とやらを聞かせてもらおう」とウルリッヒが言うと、デーゲンハルトは満足げな笑みを浮かべて小さく頷き、「では、説明する」と言って父から剣を受け取る。

「確かにこの剣だけでは二属性しか付与できておらん。しかしだ」と言って言葉を切り、父から鞘を受け取る。

「この鞘に木属性の自動修復を付与している。剣を鞘に収めた状態で金属性の硬化の魔法が切れ、木属性の自動修復が効くように調整してあるのだ!」

デーゲンハルトの秘策の一つが、鞘に自動修復の魔法を付与することだった。本来、金属性と木属性は反属性と呼ばれ、互いに反発し打ち消しあう。

これを同時に付与するには、ゲールノートやウルリッヒが持つような特殊な技能が必要とされていた。

デーゲンハルトは硬化の魔法は剣を抜いた状態でしか必要なく、自動修復は常時作用させる必要は無いということに気づき、剣を鞘に入れた状態で自動修復が作用する仕組みを考えた。

原理は非常に簡単で、剣を抜いた状態では 柄頭(ポンメル) にある魔晶石と 剣身(ブレード) にある硬化の魔法の魔法陣を接続して魔力を供給し、鞘に入れた状態では鞘に刻んだ魔法陣に魔力を供給するスイッチをつけるというものだ。発想の転換と言えばそれまでだが、今までそういった考え方をする者はいなかったらしい。

これには一応理由がある。

この世界の剣は西洋の剣と同じで、日本刀の鞘のような刀にあわせた仕様にはなっていない。革か木を二枚重ね合わせたもの、ナイフのシースのような簡単なつくりのものが多い。

これは戦闘が始まると鞘が邪魔になるため、廃棄しても苦にならない安いものが一般的なためだ。そのため、儀礼用の剣以外では鞘に拘ることはなかった。

そのアイデアを聞いた時、なるほどと感心したが、今までなかった理由を聞き、デーゲンハルトの柔軟さに敬意を抱いたほどだ。

「もちろん、鞘と剣身が直接触れているところだけにしか魔法は作用せんが、剣身全体を修復する必要はない。 刃(エッジ) 部分が常時触れておればよいから、それほど難しいものではなかった」

そこまで言ったところで「なるほど」という声が上がる。

すべて終わったところで鍛冶師たちが舞台に上がり、祖父と父の剣を確認していく。

総本部の鍛冶師、特にウルリッヒやヨハン・ヴィルトら武器職人たちは真剣な顔で剣を確認していく。他の支部の鍛冶師たちも兄の剣を含め、祖父たちの防具などを真剣にチェックしていた。

ペリクリトルの鍛冶師ギーゼルヘールは「お前の武具もそうだが、凄まじいものが集まっておるな、この村には」と感心し、「ロックハートに武具を贈ればザックコレクションが手に入るなら、儂らもすぐに取り掛かるぞ」と真面目な顔で言われてしまった。

周囲にいるドクトゥス、フォルティス、プリムスの各支部のドワーフたちもそれに同調し、「儂らも負けん武具が作れるぞ。いつでも言ってくれ」と言い始める。

俺はこの状況に危機感を抱く。

(そもそも、 ロックハート家(うち) が言い始めた話じゃないんだが……これだけの武具を独占すると、各国の騎士や傭兵、冒険者たちから恨みを買ってしまう。何としても、この流れを変えないと……)

匠合長であるウルリッヒに仕切ってもらおうと彼の方を見るが、総本部の鍛冶師たちと話し込み、こちらの状況に気づいていない。

俺が近づいていくと、「お前の仕業じゃな」とギロリと睨まれる。

「何のことだ?」と首を傾げると、「デーゲンハルトの腕であれほどの魔法剣ができるとは思えん。防具のこともあるが、あれは完全にお前の知恵だと分かっておる。剣も何かしたのではないか」と更に睨まれる。

「ああ、確かに魔法陣の改良に手は貸したが? 取り決めに俺が手伝っちゃいけないっていう話はなかったはずだ」

俺がそう言うと槍作りの名人オイゲン・ハウザーが呆れたように首を振る。

「あれは魔法陣を改良したなどというレベルではないぞ。全く新しい魔法陣ではないか」

「そう言われても困るが」と言うと、ゲールノートが「まあよいではないか」ととりなし、「じゃが、あの魔法剣は儂の防具すら斬り裂ける。ウェルバーン支部の連中への注文が殺到するじゃろうな」と真面目な表情で付け加えた。

「もしかして、不味かったのか?」と聞くが、ゲールノートは「問題はない」と答えるが、ウルリッヒは俺の問いに答えず、唸っている。

(もしかしたら、やってしまったのか……俺の知識が武器の性能をとんでもなく上げることになるとすると……いや、今回俺が見つけた魔法陣の改良方法が一般化すると、技術革新が起きるかもしれない。今は口伝に近い形で伝えられているから、劇的な改良はされないが、系統立った理論が広まれば産業革命が起きる可能性もある……)

俺が危惧したのは魔法陣の理論についてだ。恩師であるラスペード教授は魔法陣研究の大家だが、俺のように論理回路を学んだわけでもなく、何となくこの部分がこの機能に関係し、現象を起こしていると理解しているに過ぎない。もし、俺が今回知った理論を論文などにまとめて発表すれば、魔法陣が飛躍的に発展する可能性がある。

(俺はこの世界をできるだけ変えたくない。もちろん、俺が必要な物は作るが、それを広めるのは危険だ。今回は鍛冶師たちの魔法陣の改良だから口伝で伝えられるだけでそれほど大きな影響は与えないはずだ。これ以上は手を出すべきじゃないな……)

そんなことを考えていると、ウルリッヒが 徐(おもむろ) に口を開いた。

「儂の魔法陣も改良できるのか? ゲールノートの魔法陣も……」とボソボソという感じで聞いてきた。

「できないことはないが、魔法陣の説明をしてもらえればだが」

「後で相談させてくれ」と言った後、「ウェルバーン支部の割り当てについて相談するぞ!」と深刻な表情からいつもの陽気な表情に変える。

総本部の鍛冶師たちが車座になって集まり、ウェルバーン支部のザックコレクションの分配量について相談を始めた。祖父たちの武具に目を奪われていた各支部の鍛冶師たちもその会議に興味津々といった感じで覗き込んでいる。

ドワーフたちに囲まれていた祖父と父はようやく解放されると安堵の表情を浮かべている。

匠合長であるウルリッヒが「さて、これほどの物を見せられたのじゃ、渡さぬという話はなかろう。あとはどれほどの量を渡すかじゃが……」と言うと、ゲールノートが「儂らの分が減るのか……仕方ないのじゃが……」と搾り出すように呟いていた。

総本部の鍛冶師の一人が「そうは言っても、ほとんどザックの手柄ではないのか?」と疑問を呈し、それに同調する「確かにそうじゃ」という声が上がる。

「しかしじゃ。他の者が手を出したのならともかく、知恵も借りるなという決まりはないんじゃ」とウルリッヒがいうと批判的だった鍛冶師たちの声は消えていく。

「年に一樽。これが限界じゃ」とウルリッヒがいうと、「それはないだろう!」とデーゲンハルトが抗議の声を上げる。

「俺たちは総本部の親方たちに負けんものを作った! そうだろう!」

その言葉に総本部の鍛冶師たちは黙って、それ以外の鍛冶師たちは「確かにそうじゃ」と言いながら頷いていた。

「それなら、たった一樽ってことはないはずだ! 三年物のスコッチで俺たちは譲歩したんだ。だがな、ザックコレクションは譲れん!」

しかし、その言葉に同調するドワーフはいなかった。総本部のドワーフは自分たちの分が減ることになるため当然だが、各支部のドワーフたちも将来の自分たちの取り分が減ると思い安易に頷けなかったのだ。

ウルリッヒたちは唸ったまま言葉を発しない。重苦しい時間が流れていく。

仕方なく、「部外者だが、意見を言ってもいいか」と俺が沈黙を破る。

ウルリッヒが「部外者とは言えんじゃろう。で、何じゃ?」と発言を許可してくれた。

「当面の間、ウェルバーン支部の取り分は鍛冶師ギルドの取り分の一割ということにしたらどうだ? 少しずつだが、ザックコレクションの出荷数は増えていくんだ。それにあと二年もすればウェルバーンでもスコッチが作られるようになる。出荷までは五年ほど掛かるが、いずれにせよ、その間の話だろう」

今年三〇一八年のザックコレクションの出荷数は十五樽を予定している。来年はもう少し増える予定であり、本数にするより比率にした方が年々増えていく。更に言えば、ザックコレクション用の樽は大きさがまちまちだ。

三年物は熟成期間を短くするため、小型の樽であるクォーター樽で統一しているが、長期熟成酒であるザックコレクションは大型のバット樽やホグスヘッド樽などを使っており、単純に本数で決めにくいということもある。

「だが、一割ということはないだろう! 俺たちの作った武具はウルリッヒやゲールノートに引けはとらんはずだ」

「確かにそうだが、この先もずっと同じかと言えばそうでもないと思うが? ウルリッヒ、そうだろう?」

「ああ、後で相談にいこうと思っておったのじゃが、よい機会じゃ」と言って立ち上がる。

「ラスモア村を蒸留器の技を覚えるだけではなく、更なる腕の向上の場にしようと考えておる! これはジョニーが提案してきたんじゃが、儂もそれがよいと思っておる」

俺は何となく予想していた。新工房の設備が過剰すぎることが気になり、建設の指揮を執ったジョニーに鎌をかけてみたところ、それらしいことを漏らしたのだ。

「つまりじゃ! アルスからだけではなく、各支部から選抜した親方クラスがここで学ぶんじゃ!」

「何を学ぶんじゃ?」という声が上がるが、ゲールノートがウルリッヒに代わり「魔法陣の改良をするに決まっておる。デーゲンハルトたちの魔法陣を見てみよ! あれほどの威力を出せるようになったのじゃ! ザックの知恵を借りれば、ここ数百年停滞しておる技術の向上を目指せる!」と答えた。

ここまで来たら俺も腹を括るしかない。それに鍛冶師たちは口伝でしか技術を伝えないから、魔法陣の理論が大きく拡散することはない。

鍛冶師たちにとっても俺一人だけが秘伝の魔法陣を知るだけだから、俺を信用できれば技の秘密が漏れる心配をしなくてもすむ。もちろん、俺を信用できない鍛冶師は立候補しなければいいだけなので、ここに来る鍛冶師は必然的に俺を信用した者だけになる。

(やはり、この村に鍛冶師ギルドの出張所ができることになったか……これでよかったのかもしれないな。これでロックハート家をラスモア村から引き離そうという 輩(やから) はいなくなる。つまり、無理に領地を与えて引き抜こうとすれば、鍛冶師ギルドを敵に回すことになるからな……まあ、結果オーライってことにしておくか……)

結局、新工房は鍛冶師ギルド直属の研修所という位置付けで、蒸留器の製造を学ぶ“ 蒸留器(ポットスチル) コース”と魔法陣の改良を行う“ 熟練者(エキスパート) コース”が設けられることになった。

この研修所の所長にはベルトラムが就任し、彼と彼の妻ミーナが蒸留器コースの講師となる。俺が魔法陣の改良の指導を行うことになった。そのため、ギルドから“ 特任(スペシャリティ) 師範(マスター) ”という役職を与えられ、鍛冶師ギルドの正式な一員となった。

詳しい取り決めは今後行うが、エキスパートコースは親方クラスの鍛冶師が約一ヶ月間滞在し、自らの魔法陣を改良することになる。

但し、あまりに人数が多いと俺の負担が大きすぎるため、コースの定員は三名とした。更に武具を作る相手が同行することを条件にし、ロックハート家に贈呈することを禁じた。これはロックハート家に優秀な武具が集中しているという批判を防ぐためでもある。

いずれにせよ、どのように人選するかは関知しないが、恐ろしい競争倍率になることは間違いない。

■■■

四月二十日の歓迎の宴の席で、カウム王国の王妃、カトリーナ・ブレントウッドはシャロン・ジェークスと歓談していた。

「……鍛冶師方は本当に楽しそうですね。よいことです」と王妃がいうと、シャロンは「ええ、本当にそう思います」と相槌を打つが、僅かに表情を曇らせた。

王妃はその表情の変化を見逃さず、「何か心配事でも?」と軽い気持ちで尋ねる。シャロンがザックのこと、つまり恋愛のことで悩んでいると思ったからだ。

しかし、シャロンの口から出た言葉は全く別のことだった。

「この村が危険かもしれません……ザック様は魔族が再び侵攻してくるのではないかと心配しておられます」

その言葉に王妃は「本当ですの!」と僅かに声のトーンが上がるが、すぐに落ち着きを取り戻し、「どういうことか話していただけませんこと?」と説明を求める。

シャロンは「勝手にお話しするわけには……」と口篭るが、王妃が「私の胸だけに留めておきます。この村が大変なことになるのであれば話すべきですよ」と話を促す。

シャロンは「そうですね」と言い、覚悟を決めたかのように顔を上げ、説明を始めた。

「ザック様は十一年前のオーガとオークのことと、昨年のオークの襲撃は鬼人族が主導したものだとお考えです。今回はトーア砦に何も起きませんでしたが、別の場所で何かが起こるのではないかと心配されています……」

シャロンは昨年のオークの襲撃も、大規模な侵攻作戦の陽動ではないかという推論を述べた。

「ザックさんはどこが狙われるとお考えですの?」と王妃が問うと、「分かりません」と俯き加減で答える。そして、「ですが……」と口篭る。

王妃が先を促すと、「きちんと聞いたわけではないので私の想像になるのですが」と前置きした上で話を始めた。

「ザック様はアクィラのどこかに抜け道があるのではないかとお考えです。その証拠に、アクィラの麓に偵察の拠点を作られましたし、緊急連絡用の狼煙台もたくさん作られました。恐らくですが、ザック様はアクィラの麓を抜けてペリクリトルに向かうのではないかとお考えだと思います」

王妃は僅かに驚きの表情を浮かべる。

「そこまで準備をされているのですか。確かにここの防壁もザックさんが作られたと聞きましたが……もう少し詳しく教えていただけませんこと」

シャロンは頷くと説明を続ける。

「……魔族もトーア砦の守りが強化されていることを知っていると思います。ですから、トーアではなく、どこかにある抜け道を通って西側の町や村を襲って、こちらを混乱させようとしているのではないでしょうか」

王妃は「そうね。考えられるわ」と呟く。

「そう考えると去年のオークの群れの行動も何となく分かってきましたわ……」

王妃の考えは次のとおりだった。

昨年起きた開拓村へのオークの襲撃は魔族が試験的に行ったもので、どの程度の距離をどの程度の速度で移動できるか確認するものではないか。そして、ティセク村近くに鬼人族の 操り手(テイマー) がいなかったのは充分なデータを採取できたため、本国に報告に戻った。そのため、テイマーを失ったオークが野生に戻り、偶然ティセク村を襲撃したのではないかと考えたのだ。

「……そう考えると辻褄が合いますわね。そうするとトーア街道やアルス街道が危険ということですね……」

王妃は小さく唸ると、「バルベジーに戦力を集中したほうが良さそうね」と呟く。

「カティさんに、いえ、王妃様にお願いがあるのですが」とシャロンが小さな声で訴える。

「カウム王国の町や村は王国の騎士団が守ってくれます。ですが、ここは自分たちで守るしかないんです。先代様もザック様も自分たちで守るとおっしゃるのですが、もし、大軍が押し寄せてきたら……ですから、王国の騎士団に守っていただきたいのです」

シャロンの真摯な表情に王妃は頷きそうになるが、「ですが、ここは帝国領です。王国軍を入れるわけには」と小さく首を横に振る。

「一つだけ方法があります」とシャロンが言うと、「どのような方法ですの」と王妃が前のめりになる。彼女にとってもこの村を失うことは大好きな酒を失うことと同義であり、何としてでも守りたいと考えていたからだ。

「ここに鍛冶師ギルドの施設を作るんです。カウム王国は“鍛冶師ギルドの要請”に従って施設を守りに来るということにすれば、帝国も何も言えないと思います。もちろん、事前に取り決めておく必要はあると思いますが」

王妃は小さく頷き、「そこまで考えていらっしゃるということは腹案があるのでしょ?」とにこりと笑う。シャロンは「はい」と答え、

「新しい工房を鍛冶師ギルドの研修所にしてはどうかと思っています。ウルリッヒさんにはジョニーさんから話してもらうつもりですが、認めていただけると思っています」

「それなら大丈夫ですわね。帝国にはシーウェル侯爵様を通じて、“鍛冶師ギルドの施設を守る”ために緊急派兵ができるように工作しますわ」

そう言って笑うと、「それにしてもシャロンさんも策士ですわね。それともザックさんのお考え?」と尋ねるが、その目は笑っていなかった。

シャロンは曖昧に笑みを浮かべるが、答える前に「楽しそうじゃないか」というウルリッヒの声が割り込んできた。

王妃が「ええ、とても有意義なお話をさせていただきましたわ」と言うと、「どんな話じゃ?」とウルリッヒが興味を示す。

「女同士の話ですわ」と王妃がはぐらかすと、「何じゃ、酒の話じゃないのか」と言って笑い、再び鍛冶師仲間のところに戻っていった。