軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十八話「魔道剣術士」

リディの部屋で魔法が成功し、俺は“魔道剣術士”となった。

部屋に帰り、オーブではなく、“参照”のスキルで確認すると、魔法の欄に水属性が加わり、レベルが〇となっていた。

レベル:魔道剣術士 二

スキル:剣術二、体術六、交渉三十、計算七十

魔法 :水属性〇

(レベル〇の魔術師か。リディから魔法が使えるようになると、魔道〇〇士になることがあるって聞いていたから、驚きはないけど、レベル〇っていうのが微妙だな。使えるけど役に立たないってことなのかな?)

ちなみに俺はカミングアウトしてから、一人部屋に移っている。

さすがに父上たちも中身がおっさんの俺が、横で寝ているのがやはり気になるんだろう。

俺も夜中に二人がごそごそしていることに気を使わなくていいから、ちょうど良かったと思っている。

(これで弟か妹ができれば万々歳なんだけどな)

そんなことはさておき、リディの部屋から戻っても、まだ魔力は半分以上あった。

(魔法の練習をするか。火は危なそうだし、風は音を伴うな……うーん、イメージしやすいのはやっぱり光だな。灯りの魔道具代わりに光源を作ってみるか)

俺は軽い気持ちで灯りを作ろうとした。

「光を司りし 光の神(ルキドゥス) よ。御身の眷属、光の精霊の力を我に与えたまえ。我はその代償に我が命の力を捧げん。灯れ、 光(ライト) 」

俺は魔力を節約するため、消費電力の小さいLEDライトを思い浮かべながら、呪文を唱えた。

魔法の発動と共に俺の右手の人差し指から、白く眩しい光が現れた。すぐに消して魔力消費量を見ると、予定通り少ない量しか消費していなかった。

(やけにあっさり成功したな。魔力消費量も少ないし、今の光だと何となく、悪の帝国と戦う何とかの騎士の光の剣ができそうだな。“何とかの導きがあらんことを”って感じで……)

このとき、俺は初めて成功した魔法に興奮し、かなり浮かれていた。

MPも最大値八十二に対し、まだ半分以上の四十五であり、少々使っても問題ないと考えていたのだ。

俺は開けてある窓に近づき、

(レーザーサーベルがレーザー銃になったら洒落にならない。空に向けてなら、間違っても問題ないだろう)

俺は指を外に向け、呪文を唱え始める。

「光を司りし 光の神(ルキドゥス) よ。御身の光輝なる力、聖なる光を与えたまえ。我はその代償に我が命の力を捧げん。出でよ、 光の細剣(ライトサーベル) 」

俺は映画を思い出し、更に呪文を少しアレンジしてみた。精霊の力より、神様の力の方が強いだろうと考えたからだ。

俺の予想通り、溶接の光のような強く眩い光が、棒となって現れた。

俺はできたと喜ぶ間もなく、激しい吐き気とフルマラソンを走りきったような激しい疲労感に襲われ、そのまま意識を失った。

どのくらい倒れていたのかは分からないが、固い床の感触で俺は目を覚ます。

(何が起こったんだ? 一体何が……)

混乱する頭を無理やり落ち着かせ、倒れる前のことをゆっくりと思い出していく。

(光の剣を作ろうとしたんだ。一応できたはずだが、すぐに気を失った。もしかしたら……)

俺は慌てて“参照”を使い、自分の状態を確かめていく。

四十五あったMPは僅か一になっており、予想通り魔力切れを起こしてしまったようだ。

(一秒か二秒だったはずだが、物凄い魔力消費量だったんだな。成人した時、MPはどのくらいになるんだっけ? キャラクター作成時に見たはずなんだが……このままじゃ、実用には耐えられないな。おっと、今はそんなことを考えている場合じゃない。体への影響を考えないと……)

ゆっくりと立ち上がろうとするが、激しい頭痛と体の節々の痛みに襲われ、なかなか立ち上がれない。何とか仰向けに転がるが、まるで二日酔い、それも酷い二日酔いのようだと思っていた。

(予想以上にきついな……確かに魔力切れは危険だな。自動的に消えてくれたから良かったが、もし、更にMPを消費していたら、死んでいたかもしれない……)

五分ほど横になっていると、少しだけ楽になる。

もう一度、参照で確かめると、MPが二になっていた。

(五分で一だとすると、一時間で十二か。七、八時間でフル回復する計算だな。さて、ベッドに向かうか)

俺はゆっくりと立ち上がり、ベッドに向かった。

そしてベッドの上によじ登ると、そのまま仰向けになって、今のことを考えていた。

(MPゲージみたいなものがないから、消費量を確認していない魔法を使うのは危険だ。威力を上げすぎたことも原因だろうから、魔法の種類、威力でどの程度の消費量になるか調べる必要があるな。あとはリディに魔法レベルとMP消費量について聞いてみてもいいかもしれない……疲れたな。今日はもう寝よう)

俺は着替えもせず、そのまま眠りに落ちていった。

翌朝、いつもの時間に目を覚ますが、少しだけ疲れが残っており、確認するとMPが全回復していなかった。MPは五十にしかなっておらず、ベッドに倒れこんだのが四、五時間前、日付が変わる頃だったことが分かった。

(昨日の夜、MPが四十五の時はここまでしんどくなかったんだが、五十あるのに昨日の夜より辛い。MPが原因というより、MPの回復を優先したから、体の疲れが取れなかったということかもしれないな。この辺りはリディに聞いても分からなそうだし、下手に聞くと、なぜそう思うのかって突っ込まれそうだし、聞くのはやめておくか)

俺は疲れた体を引き摺りながら、朝の訓練に向かった。

疲れた体で訓練に挑んだが、体の切れ自体は悪くなく、無事に朝の訓練を終えた。

ただ、祖父からは「少し疲れているようだな」と言われ、「魔法の練習も程々にしておけ」と釘を刺された。自分の部屋でやっていたことを言っているのか、リディの部屋でやっていたことを言っているのかは分からないが、これからはMP残量にもっと注意しようと心に誓った。

午後の昼寝を終えると、MPもほぼ元に戻り、体も楽になった。

座学は各属性の話になり、更に専門的になっていく。

ダンとメルの二人は最初から聞くことを諦め、本を読むようになっていた。

座学が終わると、シャロンの魔力を感じる訓練を続け、俺はリディが持ってきた魔法に関する本を読んでいく。

その本は専門書なのか、割と高度な内容で各属性の特徴が詳細に記載されていた。

まず、属性には反発しあうものがある。火と水、風と土、光と闇、木と金だ。これらを反属性と呼び、反属性の魔法を使える魔術師は少ない。つまり、リディのように四属性持ちが普通は最高の魔術師ということになる。

各属性にはそのものずばりの特徴と、それぞれの属性神が持つ象徴としての特徴がある。

火属性は“炎”と、象徴としての“熱”と“力”

光属性は“光”と、象徴としての“再生”と“浄化”

風属性は“風”と、象徴としての“非物質”と“空間”

木属性は“植物”と、象徴としての“変化”と“成長”

水属性は“液体”と、象徴としての“生命”と“循環”

闇属性は“闇”と、象徴としての“精神”と“死”

土属性は“土”と、象徴としての“物質”と“重力”

金属性は“金属”と、象徴としての“固定”と“永遠”

以上が各属性の特徴であり、それぞれの特徴にあった現象をイメージしないと効率が悪いそうだ。

例えば、風属性で物質を召喚する魔法は難しく、逆に土属性で空気を操る操作は難しい。但し、必ずしも不可能ではなく、膨大な魔力とイメージの強さがあれば、逆の属性の魔法でも同じようなことを行うことができる。

二つ以上の属性を同時に使う複合魔法については、理論上は可能だが、技術として確立されていないそうだ。

理由としては二属性の精霊に同時にイメージを伝える呪文が存在しないことがある。呪文の形式ではまず対象の属性神の名を唱えることから始まるため、二つ同時というのは難しいそうだ。

実際に二つの神の名を唱えて魔法を発動すると、全く発動しないか、発動してもイメージ通りの魔法にならない。力を与えてくれる精霊が混乱するというのが、定説になっている。

極稀に無詠唱魔法の得意なものが複合魔法を使えるとされているが、それについても複合なのか、単属性を複雑に変えたものかの判断がつかないため、複合魔法の存在は証明されていない。

(良くある水と火で水蒸気爆発っていうのは無理ってことか。まあ、小説に出てくる水蒸気爆発のほとんどが、理論を無視しているんだけど)

余談だが、水蒸気爆発は界面接触型と全体反応型がある。

オープンな空間で起こりうるのは界面接触型だが、水と高温の微細粒子が接触することによって起きる。微細粒子は相対的に大きな表面積を持っているから、水との接触で急速に水にエネルギーが伝わり、水が急激に沸騰する。水が沸騰すると一気に体積が膨張するため、この体積膨張分のエネルギーが爆発という形に変わる現象だ。

つまり、水に火を突っ込んでも、ただ水が沸騰するか、火が消えるだけだ。炎の針を数百万本打ち出せるような高度な技術を持っていれば別だが、それほどの技術があるなら水蒸気爆発などというコントロールの効かないエネルギーを使わず、そのまま打ち込んだほうが確実に敵にダメージが与えられるような気がする。

(もし、水蒸気爆発を使うとしたら……まだ、火属性魔法が使えもしないのに先走っているな。複合魔法はともかく、全属性使えるっていうのは、あまり大きな声で言わないほうがいいかもしれないな)

今日も夕食後、魔法の練習をすることになった。

今日からは祖父にも父にも言ってあるので、堂々と外で魔法を使う。

「魔力は溜まっているわね。それじゃ、できるだけ魔力を使わない魔法をやっていきましょう。最初は自分で考えてみて」

リディの使える木属性魔法に挑戦するが、簡単な魔法が思いつかない。

(木属性だから、思いつくのは種から芽を出させる、葉を大きくする、木の枝を動かすくらいだな。象徴である“成長”っていうのはイメージできないな)

俺が種の芽を吹かせると言うと、

「結構難しいところからチャレンジするのね。最初は今ある草を伸ばすことからやってみましょう」

リディは庭の草に手をやり、呪文を唱えていく。

「森の作りし偉大なる 木の神(アルボル) よ。生命を育む精霊の力を、我に与えたまえ。我が命の力を代償に捧げん。 伸びよ(グロウアップ) 」

暗い庭で見ると、彼女の手から淡い緑色の光が出ているような気がし、その光が当たったところの草がゆっくりと伸びていく。

(凄いな。これができれば不作なんて起きないんじゃないのか?)

俺が驚いていると、彼女はニコリと笑って、「次はザックの番よ」と立ち上がる。

俺は頷いてから、ゆっくりと草に手を当て、同じように呪文を唱えていく。

イメージは微速度撮影の映像。草が伸びていく様を思い浮かべていると、ゆっくりと草が立ち上がってくるように見える。更に魔力を込めると、少しずつだが、草が成長していくのが分かる。

十秒ほどで五cmくらい伸びたが、魔力の消費量は四十ほどだった。

(思ったより消費量が多いな。これでは農業には使えないな。強いて言うなら、特殊な薬草なんかに使うくらいだ)

俺が自分のステータスを確認していると、後ろからリディの呆れた声が掛かる。

「またできちゃったの? ほんと、教え甲斐のない生徒だわ……まあいいわ。で、魔力はどのくらい減ったの?」

「半分くらいだな。この小さな草を伸ばすのにこんなに魔力を使うんだな」

俺の感想にリディが反論する。

「当たり前よ。本来、ゆっくりとしか伸びない草を精霊の力を使うとはいえ、無理やり成長させるんだから。これは 木の神(アルボル) の 理(ことわり) を犯すもの。だから、魔力の消費が多いのよ」

(森の守護者のエルフの言葉だね。確かにそうだよな。でも、人間に使ったらどうなるんだろう? 細胞レベルの成長を促すなら、動物には適用できそうにないが)

「この魔法もそうだけど、どの属性にも威力を上げる裏技のようなやり方があるの。今はまだ早いけど、そのうち教えてあげるわ」

(裏技か。早く知りたいけど、今のMPじゃ話にならない。今は基礎を鍛える時だ)

その後、風を起こす魔法を使い、俺のステータスには、水、光、木、風の四属性が記されるようになっていた。

翌日からは他の属性の魔法の訓練も行い、すべての属性がステータスに記されるようになっていた。

シャロンの魔法の訓練の方だが、あまり芳しくない。

最初こそ、すぐに魔力を感じられたが、その後はなかなかうまく感じることができないようだ。

(気負いもあるのかもしれないな。シャロンは真面目だから、がんばろうとし過ぎているのかもしれない……まあ、四歳で魔力を感じられるだけでも凄いことみたいなんだが)

俺はリディにある提案をした。

「リディが一緒だと感じられるんだよな。要は体の中にあるという感じが掴めればいい。そういうことであっているか?」

「そうね。大体のところは。でも、体の中に何かあるなんて、普通は感じないわよ」

「ちょっと試していいか? もちろん安全な方法だ」

俺はリディに概要を説明し、リディもそれを了承した。

翌日の午後、シャロンの魔力を感じる訓練が始まる。

俺は温かい飲み物と、井戸でよく冷やした冷たい果物を用意した。

「ちょっと、変わったことをしてみようか。まずはこの温かいお茶を飲んで」

シャロンは俺のいうことに素直に頷き、温かいお茶をふぅふぅいって飲み始める。

飲み終わったところで、

「今、おなかの中が温かくないかい? 手を当てて魔力を感じてみてごらん」

彼女は俺に言われるまま、手をかざして魔力を感じようとする。

だが、まだ良く分からないのか、「分からない」と呟く。

俺は次に冷たい果物――スモモのような果物――を彼女に渡す。

「これにかぶりついて飲み込んでごらん。今度はその冷たいのが、どこに行くか感じながら」

小さく頷くとかわいい口で果物にかぶりつく。

そして、柔らかい実の部分をコクンと飲み込んでいく。

俺が「今、どこにいる?」と聞くと、「ここ」と胸の辺りを指差す。

「じゃ、もう一回魔力を感じてごらん。今度はゆっくりと、さっきの果物がおなかに入っていくの思い出しながら」

シャロンは真剣な表情で胸の辺りからへそに向かって手をかざしていく。

途中で何か感じたのか、少し表情が変わるが、やはりうまくいかなかった。

しかし、その後、リディと一緒に試してみると、一人でも魔力を感じることができるようになっていた。

シャロンは「できた! ザック様! できたよ!」と嬉しそうにはしゃいでいる。

俺は「よくやったね」と頭を撫で、「あとは何度も練習だ」と忘れないように反復練習をさせる。

その後、二人になった時にリディがむくれていた。

少し口を尖らせ、

「ああ、何か嫌になっちゃうな。結局、あなたの方が教えるのもうまいなんて」と俺を睨む。

「はいはい。そんな顔をしないの。今のも俺のはただのヒントであって、分かるようになったのはリディのおかげなんだから」と宥めるが、

(本当にこういう姿を見るとかわいいんだよな。これが“ギャップ萌え”って奴なのか? よく分からんな……)

九月も半ばに入り、シャロンの魔力を感じる訓練が終わった。

そして、メルの剣術士レベルも二に上がっていた。