軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第4話 情報収集その1

一度宿に戻った私はローゼ、ファフとミュウ、彼女たちの子守りをしていたアンナと修行をしていたザックを連れ、フェニックスの背に乗って目的の地へ向かう。

ほんの数分で到着した場所は――。

「これはマジで何もないな……」

景色は二分されていた。一つは広大な荒野、もう一つが密林。

確かにこんな場所、人がおいそれと住める場所ではない。ここで暮らそうとする奴はよほどの際どいサバイバル大好きっ子か、そうする事情があるものだけだ。

どうやらあの王、本当に事実上領民零の領地の経営をローゼにさせるつもりのようだ。普通に考えればローゼが国王に相当嫌われている。そう考えるべきなんだが、二人の様子からもその可能性はそう高くはあるまい。

第一、もし国王がローゼに王位を譲りたくないと考えているなら、宰相ではなく他の重臣に評価を委ねさせるはずだ。おそらく、宰相を選んだ理由は、適正公平な判断ができることはもちろんだが、あの御仁に不正を指摘できるものなどいやしないこともあるのだろう。

「ならまずは、領民を確保することからだな」

「領民を確保って簡単に言いますが、当てでもあるんですか?」

「いんや、まったく」

私の返答にローゼは大きく息を吐き出すと、

「王都の宿に戻って対策を立てましょう」

そう言い放ったのだった。

王都に戻ると、ローゼが宿を移すことを提案してきた。理由は簡単、ここの宿では人の出入りが多すぎて、ゆっくりと相談ができないからだ。確かに、こんな混雑した場所で、王選の相談など阿呆のすることだろう。他の面子も異論がないようなので、本日は新たな宿を探すことにしたのだ。

求める宿の条件は、二つ。

一つ、我らだけの貸し切りであること。

二つ、私達の話す内容が外部に漏れないこと。

一つの貸し切りの条件はともかく、外部に話が漏れないという条件の宿など、心当たりなどあるはずもない。知っていそうな者に、聞くしかないだろうな。

現在、王都の南西の一角にある人相の悪いゴツイ男たちが出入りする建物の前にいる。

「師父、まさかと思うが、あいつらに聞くつもりか?」

ザックが心の底からうんざりした顔で、一目瞭然のことを私に尋ねてくる。

ちなみに、私が教えるようになってからザックは私を師父と呼ぶようになる。止めるように言っても聞きやしないのでそのままにして放置している。そう。呼び方など所詮、記号。どうでもいいのだ。

「うむ。あ奴らならば、多少、聞き方が手荒になっても、さして問題にならんだろう?」

「それって、手荒にする気、満々じゃね?」

「それは奴ら次第だ」

この世は因果応報。自らの手を血に染めた者は、息を吐くのを止めるまで、己が無様に朽ち果てるのを覚悟しなければならない。

それは、我ら戦士も同じだ。その覚悟がないのなら、武器を捨て、血みどろの道に足を踏み入れず、お天道様の下で生きればよいのだから。

「ま、師父らしいちゃ、師父らしいか」

ザックは首を左右に振り、肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべると、両手をゴリッと鳴らす。

なんだ、散々な言い草だが、お前だってやる気じゃないか。

私も大きく息を吐き出し、奴らに向けて歩き出す。

「おい、止まれッ!」

建物の玄関口まで行くと、チリヂリ頭のゴツイ男と頬に傷のある短髪の優男が、剣先を私の鼻先に向けると凄んでくるので、

「お前らのボスに会わせろ。大人しく従えば何もしない」

可能な限り清々しい笑顔で、通告する。

「あーあ、俺達は優しいからなぁ」

おい、ザック君、両手をバキバキ鳴らしながら言っても、きっと説得力皆無だよ。私のように白い歯を見せて、ニカッと上品に微笑まねばな。

案の定、筋肉の塊のようなザックに頬を引き攣らせ、

「お、おい、殴り込みだぞっ! てめぇら、早く出て来い!!」

ぞろぞろと、ゴツイ数十人の武装した男たちが建物から出てくる。

うーむ、どうやら私の想定していた事態になりそうだな。

私が一歩踏み出そうとするが、

「師父、ここは俺にやらせてくれ。丁度、習得した力を試したかったんだ」

ザックが私の前に出ると、両拳を叩きつけて、魔力を込める。忽ち、ザックの全身は薄色の被膜に包まれた。

ほー、無詠唱の発動も大分自然にできるようになったじゃないか。しかも、あれは硬質化か。

硬質化――全身を絶えず魔力の被膜で覆い、その性質を硬質に変質させた強化魔法の一種だ。いわば、私の細胞レベルで包む【金剛力】とは真逆の発想の魔法。

おそらく、細胞レベルで包むことは、今のザックの技術では不可能。ならば、いっそのこと、全身を覆ってみようという発想だろう。ザックの戦闘センスはやはり、相当なものだと思う。

最後尾の背の高い髭面のスキンヘッドの男は、ザックと私をやる気なさそうに眺めていたが、

「その馬鹿野郎ども、どこの組織か知りてぇ。そいつら、 案山子(かかし) にしたら中に連れてこいっ!」

男たちにそう大声で命じると建物の中へ入っていく。

あの貫禄からして、多分、あの男がここのボスなんだろう。

圧倒的な物量差故だろう。さっきまでの警戒は嘘のように、奴らは余裕の薄ら笑いすら浮かべている。

チリジリ頭の男が、ザックに近づくとその頬に長剣をピタピタと押し当てると、

「ボスの指示だ。大人しく斬られれば死ぬことはねぇ」

得々と愚かな脅し文句を吐く。

「馬鹿が」

ザックは、その押し当てられた長剣を掴む。

「おい、妙な動きをすんじゃ――はれ?」

チリヂリ頭の持つ長剣は根元からグニャリと捻じ曲がっていた。

ザックは、さらにその折れ曲がった長剣の刀身を素手でまるで、粘土でもこねるかのように、押しつぶしていく。

金属が軋む音がシュールに響く中、私達を囲む武装した男たちは皆、無言で微動だにしない。

「バ、バケモノォッ……」

チリヂリ頭の絞り出すような上ずった声に、ザックは口角を吊り上げて、鋭い犬歯を剥き出しにする。

そして、 猛獣(ザック) による蹂躙は開始される。