軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 最初のリベンジ

まず今後の行動方針を決めねばな。

しょせん私のギフトは【この世で一番の無能】。なんせ、つい先ほどまでは己が強者であることに一定の自負があったが、カイ・ハイネマンの記憶が戻った今、それが幻想であるのは疑いがない。

第一、妄想の中で勝利しただけで世界一の剣豪になどなれるわけなかろう。まさに井の中の蛙。無謀に突っ込んで死ぬところだった。

【 神々の試煉(ゴッズ・オーディール) 】とかいう大層な名前のダンジョンも今から思い返してみると大したことはなかったな。何せ無能者の私がクリアできてしまったくらいだ。ダンジョンの中では最も難易度が低いのだろうさ。

うむ。この世界はあのダンジョンほど甘くはあるまい。四大魔王、勇者に龍種、この世界はとびっきりの強者で溢れている。記憶が戻る前の私なら戦いたいとか思っていたんだろうが、生憎、そんな気はさらさらない。というか、ほんの少し前まで命を懸けた戦いに気味が悪いくらい渇望していたんだろ? いやいや、ヒクわ! ドン引きだわ!

とにかく、慎重に行動するにこしたことはない。討伐図鑑の魔物たちは極力出さない方が良いだろうな。一定以上の強さを持つファフはともかく、フェンと九尾はまだまだ未熟だが、私と行動を共にしたがる。当分の間は、討伐図鑑の中での生活を厳命しておくことにしよう。

行動指針が決まったところで、これからどうしようかね。念願のハンター資格でもとっていっそのこと世界を見て回る旅にでも出かけてみるか?

いや、その前にこの危機を切り抜けるのが先決か。私達三人(?)を取り囲む獣の群れをグルリと見回す。

「もう逃げるのおしまいかぁ。まあ、お前のような見るからに雑魚っぽい奴にしてはよくやったよ。実際、あの霧が立ち込めてきたときはマジであせったからな」

樹木の奥から獣たちに守られるように黒色のローブを着た優男が姿を見せる。

うん? ちっとも強そうにはみえないぞ。カイ・ハイネマンの記憶では相当強いはずなんだけどなぁ。ま、実際に戦ってみればわかることか。

「ん? 仲間がいたのか? そっちの女は少し幼いがいい女じゃねぇか、幼女趣味の変態どもには大人気だろうよ。奴隷商に高く売れそうだなぁ」

欲望たっぷりの顔でねぶるようにファフニールを見る赤髪の男。

「ご主人様、ファフ、こいつ気持ち悪いのです。殺したいのです!」

ファフニールは嫌悪を隠そうともせずに私に進言してくる。

「まてまて、まだこいつには聞きたいことがあるんだ」

いつものようにファフの頭をそっと撫でて機嫌を宥めながら言い聞かせる。

確かこの男、計画がどうとか言ってたし、聞き出す努力くらいしなければな。それにファフは今の私にとって身内同然。そんな危険なことさせられるか。

「なら吾輩がやろう。人間の分際で少々、生意気である。なーに、殺さねばよいのであろう?」

チキン魔人――アスタロスが純白の手袋をした両手をゴキリと鳴らせて一歩前に出る。お前、弱いのに根拠もなく突っ込むなよ。

「いや、私がやろう。こいつらがどれほどのものか知りたいからな」

「どれほどか知りたいってマスター……こんな雑魚どもを、であるか?」

アスタロスは何かけったいな生き物でも見るかのような視線を向けながらも尋ねてくる。

失礼な奴だな。それにしても、雑魚か。確かに、あのダンジョン内の魔物同様、脅威には全く感じないな。どうも最近、敵の強さの判断が鈍くなっている。

能力向上のため、最近はずっと【封神の手袋】により、己の能力を制限しながら修行を実施していた。そんな生活を数万年もの間、送っていたせいだろう。今の私は相手の強さを量る能力が以前と比較し、著しく低下しているきらいがある。もちろん、大雑把な強弱の判断はつくのだ。具体的には、弱い、少し弱い、とても弱い、話にならないくらい弱い、羽虫同然に弱い、のような塩梅には。

だが、それも魔物ではなく対人相手だと自信はまったくない。なにせ、約10万年近く、人とのかかわりなど皆無だったものでね。知らぬものは量りようがないのである。

ともあれ、舐めてかかれる相手ではないのも確か。全力でいかせてもらおう。

【雷切】をアイテムボックスから鞘ごと取り出す。

「テメエら、この状況がわかってんのかっ!? それとも、恐怖で頭おかしくなっちまったか?」

取り囲んでいる黒豹たちは、総勢40を超えている。ダンジョン前の私の記憶としてはまさに絶体絶命なのだろう。だが、やっぱりだ。まったく脅威に感じんね。試しに小手調べでもしてみるとしよう。

「【 真戒流剣術(しんかいりゅうけんじゅつ) 一刀流】、一の型、死線」

これは、私にとって最も身近で息を吸うような基本の技。

私の言霊に黒色の獣どもに線が走る。刹那、バラバラの肉片となって地面へと落下してしまう。

「へ?」

赤髪の男は大きく目を見開き、バラバラの肉片となった黒色の獣どもを茫然とみていた。

アスタロスのいう通り、雑魚だったわけね。もっとも、この世界は危険。油断は禁物だな。特にあのダンジョンに入る前までの私は、迂闊な行動が目立っていたし。

「さて、お前は計画がどうこう、言っていたな。話してもらおうか?」

獲得した本の中にはご丁寧に拷問の本もあった。私が読んだ本はファフが読みたがる傾向があったから、アブノーマル系はファフの教育に悪いので読んではいない。だが、今後はその手の本も積極的に目を通しておくべきかもしれん。

ともかくだ。拷問のやり方は知らんが、徹底的に痛めつければ吐くだろう。ほら、私にはいくつかの回復手段がある。確かに、【 超再生(パナケイア) 】は自己にしか使用できないが、他にも迷宮で発掘した超高性能ポーションなど色々あるのだよ。色々な。

「く、くるなぁっ!! 化け物めぇ!!」

短剣を抜いて震える手でブンブン振り回す赤髪の男の両腕を【雷切】の峰で叩き折る。

皮膚を骨が突き破って明後日の方へ向く両腕に、赤髪の男は絹を裂くような絶叫を上げる。その悲鳴を合図に、私は尋問を開始したのだった。