軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 奇妙なチーム編成

組み合わけが発表され、私の傍には二人の男女がいる。

一人は四面体の物体を両手でイジリながら、坊ちゃん刈にした小柄な男と、もう一人は長い金髪をおさげにした大人しそうな女だ。四面体の物体をいじくっている小柄な男は、幼い顔付きからも十代だろう。一方、金髪の女は長い前髪で顏の大部分を隠しており、十代にも見えるし、三十路と言われてもさして驚きはしない。要はよくわからない外見ってわけだ。

「ラムネ。魔導士を志望してる。よろしく」

青髪を坊ちゃん刈にした男は、こちらに振り向きもせずに四面体の物体をいじりながら、そっけなく挨拶をする。

「私は…………キキ、剣が得意……です。よろしく……」

一方、金髪をおさげにした女は消え入りそうな声で自己紹介をしてきた。

「カイ・ハイネマンだ。剣士だ。よろしく頼む」

私がにこやかに微笑みつつ、右手をあげたとき、よく聞きなれた言い争う怒鳴り声が聞こえてくる。

「お前と同じチームなど心底おぞけが走るッ!」

ローマンが不愉快な感情を隠しもせずに、そう吐き捨てる。

「それは私の台詞よっ! 次期当主なんでしょ!? ずっとラムールに引き籠ってりゃいいじゃないっ!」

即座に悪態を吐くルミネに、

「貴様こそ、こんな場所までついてきて、ライラさんに迷惑だとは考えなかったのかっ!?」

ローマンも声を荒げて大声で捲し立てる。

「お姉さまと私はいつも一緒。それが私の幸せであり、お姉さまの幸せなの! あんたの価値基準を押しつけないでくれるっ!?」

「なんだぉっ!」

「なによっ!」

鼻先を突き合わせていがみ合う二人。本当にこいつら期待を裏切らないな。もう分別がない赤子ではない。もっと落ち着いてもらいたいものだ。現にもう一人のチームメイトの茶髪坊主の少年は終始オドオドしているし。

それにしても、ローマンとルミネが同じチームか。単なる偶然といえばそれまでだが、ややりどうにもキナ臭い。

今年からの急な試験内容の大幅な改変も気になる。用心には越したことはない……か。

(デイモス。いるか?)

デイモスとは、最近ギリメカラの眷属となった黒色の骸骨――デイモスリッチのことだ。

(はっ! 御身の傍に)

私の背後の草むらに隠れるように跪く、黒色のローブを着た黒色の骸骨。既にギリメカラの教育により、腐った根性の矯正は済んだ上、それなりの強度となっているとの報告を受けている。

デイモスリッチは聞くところ、生前人間の魔導士だったようだし、こういう裏方には向いていると思われる。というか、ギリメカラたち、討伐図鑑の愉快仲間たちには指示されずとも、こうして姿を隠して現れるなどの配慮など到底無理だしな。逆にあの剣の道のような派手な演出で大騒ぎとなって試験どころじゃなくなっているだろうさ。

かといって最近、私に対する狂信具合が著しく増しているルーカスやオボロの二人に委ねるのもなぁ。確かにメキメキと強くはなっているのは認める。認めるが、あの二人に任せると、正直ギリメカラ以上の悪夢しか思い描けん。

そんなこんなで、デイモスはこの手の隠密系の任務には最適なのだ。

(ライラ・ヘルナーという少女を知っているな?)

(はっ! ギリメカラ様のご命令により、御身の傍に控えさせていただきましたので)

ギリメカラの奴が配下の者を控えさせろと五月蠅いので、我ら人間の常識が比較的あると想定されるデイモスを指名した上で許可したのだ。

(では、お前に頼もう。ライラ・へルナーを守れ)

(はっ! もし、障害があれば排除しても構いませんか?)

(ああ、彼女の保護が最優先で後は全て付録だ。お前の判断で動いてくれ)

(承りました)

(デイモス、期待しているぞ)

背後から骨の擦れる音が聞こえ、

(ありがたき……幸せ)

たっぷりと歓喜に満ちた震え声が聞こえると同時にその気配が消失する。

さて、ではそろそろ動くとするか。あのエルフの女狐が何を企んでいるのかは知らん。だが、それが私の主義に反することなら全力で抗わせてもらう。そう、徹底的にな!

「お前ら、じゃれてないでさっさと行動に移せ。出遅れると不利になるぞ?」

仲良く顔を突き合わせている二人に、有難い忠告をしてやる。

「五月蠅い! 貴様に言われないでもわかっている!」

「そうよ! 出しゃばらないでくれるっ!」

二人が予想通りの台詞を吐き、競って速足で歩き出し、森の中へ消えていく。坊主の少年、も慌てたようにそのあとに続く。

あの二人、危なっかしくてみていられん。この状況ではライラの方が遥かに安心できる。ローマンは従弟で、ルミネはライラの妹のような存在だ。流石に見殺しにするわけにもいくまい。特にこの女狐の意図が読めぬ状況では一定の配慮は必要だろうさ。神眼でも発動して二人を監視しておくとするか。

まったく、この鉄火場のような状況で子守など冗談ではないというに。

私は内心でそんな悪態をついたのだった。