軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百九十六話 最後の戦いⅡ

「やはり二手に分かれてきたか……くそ、面倒な……」

クリュウ将軍は舌打ちをした。

水利争いを発端として、両国はついに戦争状態に突入した。

そしてクリュウ将軍の予想通り……ロマリア王国は兵力を二つに分けた。

一つはアルムス王とバルトロ・ポンペイウス率いる主力と思われる兵力。

騎兵二万、歩兵八万。

合計十万の大軍だ。

バルトロ・ポンペイウス以外の将軍として、ロン、グラム、そしてアルヴァ王国の王であるムツィオ王も確認されている。

この主力軍はファルダーム王の国を通り……

真っ直ぐ、北上してきている。

もう一方はアレクシオス・コルネリウス、ロズワード率いる別働隊。

こちらは二百隻の船と、騎兵一万、歩兵四万の合計五万。

海上から半島の沿岸部の海域を西回りに航行していることが分かっている。

つまり……

ロマリア王国の戦略はアレクシオスか、バルトロのどちらかでクリュウ将軍を抑え込み……

その間にもう一方が北アデルニアの主要拠点を奪う。

ということだろう。

もしくは挟み撃ちにして包囲殲滅を狙っているのかもしれない。

「各個撃破が最善……か。しかし……」

問題はどちらから撃破するか、である。

少しでも遅くなれば……敵中に孤立することになる。

クリュウにとって悩みどころなのは、防衛戦争に於ける最大の利点である地の利を生かせないことだ。

というのも……

アデルニア人たちの反乱が各地で多発しているからである。

加えてバルタザール派のロゼル貴族たちも不穏な動きを見せていた。

「となると……守りは愚策だな」

クリュウは決断した。

「予想通り、って感じだな」

クリュウ将軍も我々と同様に兵力を分けた。

一方を俺たち主力に向け、もう一方をアレクシオスに向けた。

「報告によると……俺たちが今対峙している敵兵力は歩兵十万、騎兵三万らしいな。となると、アレクシオスの方に向かったのは歩兵五万、騎兵二万か」

俺とバルトロが対峙しているのはクリュウ将軍率いる主力。

合計十三万。

こちらは十万なので、その兵力差は三万だ。

アレクシオスに与えた兵力は五万であり、そちらに向かっているのはおそらく七万ほどなので……

どちらに対しても兵力が上回っている状態だ。

「うーん、やっぱり兵力の分散は下策だったんじゃないか?」

「いえ、陛下。そうでもありませんよ。兵力と兵数は違います。アレクシオスの方にはクリュウ将軍がいない、それだけで十分ですよ。あいつならば勝てます」

「……俺の知らない間に随分と仲良くなったんだな」

バルトロとアレクシオスはそこまで仲が良いとは言えなかった。

だが……よく分からないが、知らない間に急接近したようだ。

まあ、仲が悪いよりはいいと思うけどさ。

「というか、よく見ると……あれ、戦象じゃないか? 大昔、痛い目にあった……」

俺はロゼル王国軍の中に混じっている……

毛むくじゃらの生き物を指さした。

そう、この世界にはマンモスがまだ生き残っているのである。

いや遺伝子的に本当にマンモスか分からないけど。

何にせよ、ロゼル王国はマンモスを戦に使う国だ。

「あれは大した戦力ではありませんよ、機動力では騎兵に負けますしね。落ち着いて対処すれば大丈夫です」

「……まあ、一度打ち倒した敵なのは事実だが」

とはいえ、怖いモノは怖い。

「さて……問題はここが我らが同盟国、ファルダーム王の国の内部だということだな」

「ええ、参りましたね」

「……参りましたですまないだろ」

元々我々はロゼル王国内部で戦う予定だった。

その方が国土に損害が出ないし……なによりロゼル王国ではアデルニア人の内乱が頻発している。

ところが……想定以上にクリュウ将軍の進軍速度が速かった。

結果、ファルダーム王の国での決戦となってしまったのである。

「ファルダーム王、怒ってたぞ……」

「負けられない戦い、ですね」

ファルダーム王の国はロゼル王国の事が嫌いだ。

だが同じくらい我が国のことも嫌いなはずである。

風向き次第では寝返る可能性がある。

というか、俺たちが負けたら高確率で寝返るだろう。

クリュウ将軍に国土を蹂躙されるよりは、頼りないロマリアを切り捨ててロゼルに媚びを売ろうという選択肢になる可能性は高い。

「陛下、作戦通りにお願いしますね」

「ああ、分かっているよ」

ロマリア連邦は右翼に騎兵を一万五千、左翼に騎兵を五千配置した。

そして中央に重装歩兵七万、その後方に予備兵力として一万を配置した。

バルトロは中央、アルムスは右翼騎兵、ロンは左翼騎兵、グラムは後方の予備兵力をそれぞれ率いている。

これに対してロゼル王国、クリュウ将軍は右翼に騎兵一万五千、左翼に騎兵一万五千を配置して……中央に歩兵十万を配置し、その最前列に戦象二十頭を並べた。

両翼を信頼できる将軍に任せ、そして中央を自らが指揮した。

斯くして……

今後数千年の歴史を大きく左右することになる、シエネの戦いが始まった。

まず初めに動き始めたのは……

ロマリア連邦軍である。

「全軍!! 俺に続け!!!」

アルムスはそう叫ぶや否や、右斜めに向かって突撃した。

国王自ら率いての突撃ということもあり、士気は高い。

そして……

「中央も続け!!」

「左翼も続くぞ!!」

バルトロとロンもアルムスに続くように、右斜めに軍を動かした。

クリュウ将軍はその動きを見て……

「……斜線陣か? そう簡単に包囲されてやるほど、甘くは無いぞ?」

すぐに自軍左翼に指示を飛ばす。

ロゼル軍左翼一万五千がロマリア軍右翼騎兵一万五千に向かって、突撃する。

「はああああ!!!」

アルムスは剣を振るい、襲い掛かってたロゼル騎兵を叩き斬る。

アルムスの奮戦もあり、ロマリア軍は最初はロゼル軍を押し込んだが……

徐々に勢いを殺され、完全に動きを止められてしまう。

「まあ……ここまでは手筈通り、だな」

アルムスは敵兵を切り裂きながら……

笑みを浮かべた。

さて、次に攻勢に移ったのはクリュウ将軍である。

「右翼騎兵……突撃せよ!!」

クリュウ将軍の指示でロゼル軍右翼騎兵一万五千が、ロマリア軍左翼騎兵五千に突撃した。

「くそ……やはり数の差が大きい!!!」

ロンは必死に応戦するが……

三倍の兵力差は覆しがたい。

ロマリア軍左翼は大きく押し込まれる形になった。

「さて……隠し玉だ。戦象部隊!! 突撃開始!!!!」

クリュウ将軍の指示で……戦象二十頭が唸りを上げて突撃した。

これに対処するのはバルトロである。

「落ち着いて対処しろ。足を狙え」

ロマリア歩兵は爆槍を戦象の足元に向かって投擲する。

的が大きいこともあり、あっさりと足に突き刺さってしまう。

そして……

爆発した。

足元が爆発すれば、さすがの象も倒れ込んでしまう。

一度倒れれば……あとはこちらのものだ。

「やれ!!!」

「未だ!!」

「化け物を殺せ!!!」

次々と投槍が象に突き刺さり……

ハリネズミのようになってしまう。

戦象はあっという間に無力化された。

「やはり……戦象程度は簡単に無力化されるか」

「当たり前だ……この程度、余裕よ」

二人は決して戦場に顔を合わせているわけではなかったが……

間違いなく、『会話』をしていた。