軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百六十二話 第二次アデルニア人解放戦争

我々ロマリア軍は北ギルベッド王の国から真っ直ぐ進み、ロゼル王国の中規模都市を陥落させた。

城壁もさほど高くなく、堀も浅かったため大した労力もなく簡単に落とすことができたのだ。

中規模都市、とはいえ最前線の都市。

食糧がそれなりに蓄えられていた、ロマリア軍は腹を満たし、休憩することができた。

これから道路を伸ばし、直結させればロゼル王国への最前線都市となるだろう。

しかし……

「このレベルの都市がいくつもあると考えると、気が重いな」

「やはり、決戦で一気に敵軍を殲滅するのがもっとも楽で手早いですね」

バルトロは俺の考えに同意するように頷く。

やはり、一つ一つ攻城戦で落としていくのは辛い。

「とはいえ、一先ずこの辺り一帯は我が国の領土になったわけだ。これで目的は果たしたな」

「バルタザール将軍が大人しく我々にくれるとは思いませんがね」

そりゃあそうだ。

それに、できればもう少し領土を削り取りたい。

「バルトロ、任せたぞ?」

「分かっていますよ。お任せください」

ロマリア軍が都市を落としてから三日後、ようやくロゼル王国本国からバルタザール将軍が到着した。

これだけロゼル王国の動きが遅れたのには理由がある。

それは油断だ。

ロマリア王国が自国に対して、軍事行動を取ることはない。

と頭から思い込んでいたのである。

しかし、無理もない。

形だけロゼル王国とロマリア王国は敵対していたが、しかし裏では繋がっていて、仲もそこそこ良かった。

その上、ロマリア王国担当の外交官もロゼル王国で、「ロマリア王国に敵意は無い」と吹聴していたのもある。

そして……

反ロマリアだったマーリンを追い出した手前、ロマリアが危険……つまりマーリンが正しかったと、誰も言い出すことができなかったのだ。

諸々の事情を考慮すれば、突然のロマリアの侵攻にロゼル王国は十分に対応出来ていると言える。

少なくとも、ギルベッド王の国やファルダーム王の国よりは随分と動きが速い。

混乱しながらも、冷静に現実を見つめ、対処に動くことができたのは賞賛に値する。

「将軍閣下!! 街道を真っ直ぐ進んだ平原に、ロマリア王国が布陣しています。数は歩兵が五、六万前後。騎兵が五千から八千前後が確認できました」

「伏兵が隠れられそうな地形はあったか?」

「いえ、大平原でしたので……遮蔽物になるような地形は見当たりませんでした」

バルタザールが出した斥候が、自分の目で見た物を主人に伝える。

バルタザールは暫く考えた後……

「よし、分かった。……このまま真っ直ぐ、速度を保ったまま進軍を続けるように各部隊長に連絡せよ」

「はい!!」

バルタザールは伝令兵に、自分の指示を各将に伝えるように命じた。

「しかし、平原か……我らの方が騎兵は優るが……」

バルタザールの率いている兵は合計七万。

六万が歩兵、一万が騎兵だ。

ガリアはテーチス海沿岸地域有数の騎兵の産地である。

故にロゼル王国の騎兵はテーチス海沿岸地域では、一、二を争うほどの強さだ。

ロマリア王国のアルヴァ騎兵もまた、精強だが……

こちらは数が少ない。

そしてその数を補う、アデルニア人の騎兵は金持ちが馬に乗っただけの、張りぼてに過ぎない。

負けることは無いと、確信できる。

だが、歩兵となると……

ガリア人は個人個人の武勇には優れるが、しかし集団行動が苦手だ。

その上、ロゼル王国の歩兵は部族単位で集められたモノで……

ロマリア王国のようにちゃんと組織化されていない。

果たして、ロマリア王国の重装歩兵と戦えるか……

「まあ、心配しても仕方がない。こちらは騎兵を活かして、戦うしかないだろう」

平原での戦いならば、騎兵が優位。

負ける事は無い。

ロマリア軍、ロゼル軍はと共に平原で向かい合った。

ロマリア軍は王国軍三万、同盟軍三万、アルヴァ騎兵五千、王国騎兵二千。

歩騎合わせて、合計六万七千。

一方、ロゼル軍は歩兵六万、騎兵一万。

合計七万。

両軍は以下のように布陣した。

ロマリア軍は中央にアルムス、副官としてグラムが率いる同盟軍二万。

右翼にバルトロ、副官としてロンが率いる、王国軍三万。

左翼にアレクシオス率いる同盟軍一万。

そして最右翼にはムツィオ率いるアルヴァ騎兵五千。

最左翼にはロズワード率いる、アデルニア騎兵二千。

特に右翼の王国軍は分厚く、左翼の王国軍は薄く延ばされている。

一方、ロゼル王国は中央、右翼、左翼にそれぞれ均等に二万ずつ配置した。

最右翼にガリア騎兵三千。

最左翼にガリア騎兵七千。

まず、初めに激突したのは両翼の騎兵であった。

「さあ、こっちに来な」

「ついて来れるなら、付いてこい。鬼ごっこだ」

ロズワード、ムツィオは軽くガリア騎兵と戦った後、すぐに背を向けて逃げる。

ガリア騎兵はそれを追撃するために、馬を走らせる。

「投擲!!」

ロズワード率いる騎兵は、ロズワードの指示と同時に自分たちの後を追って来た敵に対して、手投げ爆弾を投げつける。

煙が一面に満ちて、ガリア騎兵の視界が塞がれる。

「突撃!!」

ロズワードは煙幕の中、ひるまず突撃してガリア騎兵と何度か戦い、そして再び撤退する。

一方、ムツィオ率いるアルヴァ騎兵はギリギリ追いつかれない距離を保ったまま、逃げ続け、そして時折振り返りざまに矢を放っていた。

馬に乗り、走りながら後ろを振り向き、一斉に矢を放つ。

放たれた矢は空へと上がり、ガリア騎兵に雨のように降り注ぐ。

後ろ向きで放ったことを加味すると、驚くべき命中精度だ。

気付けば、ガリア騎兵は歩兵から随分と遠く離れたところまで来ていた。

騎兵隊長は慌てて引き返そうとするが、向きを変えようとするたびに果敢にアデルニア、アルヴァ騎兵は攻撃を仕掛けてくる。

これはロマリア軍の作戦だ。

騎兵で劣る以上、騎兵同士でまともに戦えば勝ち目は無い。

となれば、選択肢はただ一つ。

ひたすら引きつけ、粘り強く、騎兵を拘束する。

勝つ必要は無い。

負けなければ良いのだ。

もっとも、ロゼル王国将軍バルタザールもこれは予想していた。

だが、バルタザールにとって予想外だったのは、想像以上にアデルニア騎兵が強かったことだ。

それもそのはずで、アデルニア騎兵はアルムスが組織した常備軍であり、少なくともただ金持ちが馬に乗っているだけの騎兵ではない。

厳しい訓練に耐えてきた、精鋭だ。

無論、生粋の騎兵であるガリア騎兵、アルヴァ騎兵には劣るが……

しかし予想以上の粘りを見せていた。

そして歩兵同士の戦いは……

「一歩も引くな!! 前に押せ! 弾き返せ!!」

「構え、放て!!」

アルムス、グラムの指示が飛び交う中央の同盟軍。

こちらはガリア歩兵とほぼ互角、互いに一歩も引かず、戦線は膠着していた。

アルムスの鼓舞で同盟軍は踏ん張り、攻撃を跳ねのけ、そしてグラムが軽歩兵を指揮して、投槍や爆槍、そして弓矢で敵に軽微だが、損害を与えて、疲れさせていく。

ともに中央二万だが、しかし組織がしっかりしていて、戦術も高度なロマリア軍が優位に立っていた。

次にアレクシオス率いる左翼。

こちらも同盟軍の歩兵で、数が一万と少ない。

一方、相対しているロゼル軍右翼の数は二万。

少しずつ、押されていたが……

「こちらは数で劣る。押されるのは仕方がない。……隊列を崩さず、ゆっくり後退。無理に反撃してはならないと各部隊に伝達」

アレクシオスの巧みな指揮で、隊列はしっかりと整い、ガリア歩兵の猛攻を防いでいた。

隊列を崩さないロマリア軍は死傷者がまだ殆どでていないが……

ロゼル軍はロマリア軍を押しているうちに、少しずつを乱していた。

その上、功を焦った部隊長たちが無理な攻撃を繰り返し、大きな損害を受けていた。

そして最後、バルトロ率いるロマリア軍右翼。

こちらは同盟軍ではなく、正真正銘、歴戦の精鋭である王国歩兵。

しかも、兵力は三万でロゼル軍左翼二万を圧倒していた。

「押せ押せ!! 敵を押し込むんだ!!」

ロンは自ら最前線に立ち、兵士たちを鼓舞していく。

王国軍の百人隊長は功を焦らず、しかしチャンスがあるとすぐさま敵に斬り込んでいき、ロゼル軍の隊列を崩しながら敵を押し込んでいく。

その一方で、本隊の指揮をロンに任せたバルトロは別動隊二千を率いてゆっくりと、ロゼル軍左翼の側面に周り込んでいく。

短剣と盾で武装した、柔軟性の高いマニプルスだからこそ、可能な動きだ。

「よし、敵の脇腹を斬りつけてやれ!!」

バルトロがロゼル軍左翼側面に周り込み、側面から圧力を加えていく。

側面、そして正面からの圧力に耐えかねたロゼル軍左翼は崩壊する。

それを確認した、アルムス、アレクシオスは今までの防戦を捨てて一気に攻勢に出る。

今までの戦いで体力を使い果たしていたガリア歩兵に対して、体力を温存していたロマリア歩兵が斬り込み、、正面から圧力を掛けていく。

その上、ロゼル軍左翼を駆逐した、ロマリア軍右翼が柔軟な動きで周り込み、ロゼル軍中央と右翼を反包囲していく。

が……

「っち……撤退だ!!」

危険をいち早く察知したバルタザールはすぐにロゼル軍に撤退命令を出す。

すぐさま退却したことで、ロゼル軍は壊滅を免れた。

斯くして、ロマリア軍はロゼル軍に勝利して大きな戦果を挙げたが……

完全にロゼル軍の戦力を殲滅させることには失敗した。