軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

責任重大すぎる高代

慶長元年(1596年)三月二日

山城国 洛中 神戸家

「雉の肉団子定食、出来ましたよ!」

「こし餡の饅頭、持って行って!」

「粒あん乗せの団子も!」

「宇治丸の澄まし汁赤味噌仕立ても!」

信長が主上から神戸家の貸切予約を頼まれた翌日、神戸家はいつもと変わらず、いやいつも以上に繁盛していた

その理由として

(ああ、もう!一品ずつ頼まれるのが面倒だからって定食スタイルを提案するんじゃなかった!!

雉の肉団子なんて、肉をミンチに刻んで捏ねて丸めて揚げてと工程が多いし!家臣の皆さんはまとめて運べるから楽だと言ってるけど、

ウナギのお吸い物も通常の白味噌以外に、赤味噌と味噌無しで3パターンもあるし!

甘味の団子は、皿に置いて食べる形だから串に刺すのをやらなくて済むけど、何でこんなにアンコの種類もあるのよ!!

粒餡とこし餡は定番だから分かるけど、うぐいす餡なんて、老人手前の人かお坊さんしか注文しないし、かと言って切らさない様に言われるし

他にも、栗餡とか、こんなの絶対六三郎さんが作ったに違いない!

六三郎さん本人は、「自分はただの料理好き」と言ってたけど、ただの料理好きがこんな大繁盛店のメニューの元を作ったんだから

前世が料理人か料理好きの人じゃないとおかしいわ!色々と聞きたいけど、とりあえず今は営業終了まで残り少しだし頑張らないと!)

高代が楽をしようとしたら、逆に負担が増えると言う、六三郎と同じパターンに嵌っていたからだった

それに加えて、甘味の好みが細分化されている事もあったので、六三郎に色々と言いたくなっていた

高代が六三郎を変な人と思いながら働いてやっと営業終了の時間になった頃

「入るぞ」

閉店準備をしている中で入店しようとする男の声が聞こえて来たので、店長ポジションの家臣が

「すいません。今日はもう閉店、、、」

今日は営業終了したと伝えて、帰ってもらおうと件の男の元へ行くと

「右府、、様!も、もしや殿!三七様に何か起きたのですか?」

男はまさかの信長だった。信長が来た事で信孝が何かやらかしたと思った家臣は、思わず信長に質問する

しかし信長は

「三七は何もしておらぬ。安心せい!それよりも、、、いや儂が伝えたい事は店を閉め切ってからにしよう」

即座に説明せずに、店を閉め切ってからと話す。家臣はそれを聞くと急いで店を閉めると信長は話を始める前に

「さて、神戸家の主だった者達も残っておる様じゃな。それでは、説明を始める前に

これから話す事は、事が終わるまで他言無用である事を心得よ!」

「「「「ははっ!」」」」

全員の言葉を確認した信長は、話を始める

「うむ。それでは話すが、実は十四日後に神戸家を貸切にしてお食事をしたいと、儂に頼んで来た

とあるやんごとなき方が居られるのじゃが、その方は基本的にはほぼ毎日同じ場所でお食事をなされておる

それも、昔ながらの作り方や食べ方で決められたお食事じゃ

その様なお方が、神戸家の評判を聞いて、御自身もお食べになりたいと仰っておったのじゃが

この神戸家が繁盛しておる理由は、美味い物を出来立ての温かい状態で食べられる事だと説明したら

神戸家の料理人を御自身の住まわれる場所に呼ぶか、神戸家を貸切にするしかないとの説明を聞いて

貸切にしてくれと、儂にお頼みして来た。さて、皆の中には儂に対してこれ程の事を出来るお方を想定しておる者も居ると思うが、今は口に出すでない!」

話を一旦終えた信長は、「頭の中に出ている人が居ても口にするなよ?」と、釘を刺す

信長の言葉に全員静かになっていたが高代は

(ちょっと待ってよ!!現在の信長にそんな風に命令出来る人なんて、天皇陛下しか居ないじゃない!

なんで天皇陛下が、こんな一般食堂に来るの?人気だからとは言っても、御所で食べる物と比べたらジャンクフードなのよ!

そんなジャンクフードを天皇陛下に食わせても良いの?万が一にも食中毒なんて起きたら、私は斬首とか島流しになっちゃわない?

そんなの御免だわ!宗六郎を産んで、弟達もそろそろお嫁さんをもらって、六三郎さんの領地でゆっくり出来るところなのに!

決めたわ!天皇陛下の来る日は、私は休ませてもらう!リスクは出来るかぎり避けないと!そうよ!そう決まったら!)

内心、貸切の日は欠勤しようと考えていたが、信孝の家臣達から

「右府様!その様な重大な日の料理は、高代様でないと無理です!」

「そうです!高代様が料理を作る様になってから、一気に売上が増えました!倍増と言っても過言ではない程です!」

「それに、高代様が提案し、「定食」と名付けた食事方法も好評ですので、是非とも当日は高代様に料理を作っていただきたく存じます!」

まさかの高代を当日の料理番として推薦する声が大量に上がっていた。これを聞いた信長は

「高代、宗六郎と離れている所、済まぬがもう一踏ん張りしてくれ」

椅子に座った状態とはいえ、高代に頭を下げて頼み込んで来た。信長のその姿に高代は

(ちょっと!天下人の織田信長が私に頭を下げて来るなんて、断れないじゃない!カリスマ性の強い人がこんな事するなんて)

内心、複雑な感情になっていたが

「右府様、頭をお上げください。分かりました。やんごとなきお方の為の料理を作らせていただきます」

当日の出勤を了承した。高代の返事を受けて信長は

「流石、六三郎の嫁じゃ!!礼を申す!」

顔を上げて、高代を褒めていた。そして帰り際に

「高代、そして皆!今のうちに言っておくが、当日に貸切をするお方の希望する料理は「神戸家のいつも通りの料理」じゃ!

なので、変に特別な料理を作ろうと思わずに、いつも神戸家に来ている者達と同じ料理を出す様にな!それでは、よろしく頼んだぞ!」

そう言って、神戸家を後にした。こうして高代もまた六三郎と同じく、いや、六三郎以上に責任重大な仕事に就く事になった。