軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

好みの焼き方を試す前に

高代に誘われて、台所に入った安芸乃は料理人達によって血抜きされたウナギを切るところから手をつけようとすると

「ちょ、ちょっと!姫様?その包丁の握り方は危ないです!私の様に握って下さい」

まさかの包丁の持ち方の指導から始まる事になった。問題の包丁の持ち方はどの様な持ち方かと言うと

「安芸乃殿、次郎兄上達が言っていたではありませぬか、刃物は刃の部分を垂直にするなと

合戦に出る武士ではないのですから、高代殿の様に刃の部分を水平にしてくだされ」

包丁の刃を垂直にするという、○人鬼スタイルだったからであり、高代だけでなく藤四郎からも注意されていた

それでも安芸乃は

「この方が力が伝わるからやりやすいのです!」

言い訳をして、持ち方を変えなかったが

「安芸乃姫様、そのやり方ですと宇治丸以外の食材も食べられる部分が少なくなってしまいます

なので、将来的に嫁ぎ先の倹約の為、今は慣れなくとも、私と同じ持ち方を試してみませんか?」

高代の「そのやり方だと無駄が出る」との言葉に

「わ、分かりました」

渋々ながら、高代の持ち方、いわゆる一般的な水平な持ち方に挑戦する事にした

持ち方は改善されたが、次は切り方が

「安芸乃姫様、その様に何度も引いたり押したりしたら宇治丸の身が崩れてしまいますから

柔らかい食材はスッと包丁を当ててから引くだけで良いのです。やってみて下さい」

ノコギリの様に何度も押し引きを繰り返していたので、ここでも高代に注意されていた

注意された所を気をつけながら、ゆっくり言われた様に切ってみると

「こんなにスッと切れるのですね!」

とても驚いていた。そこから会話する余裕も出て来た様で高代と会話を始める

「高代殿、あの柴田様の側室という事は、何処かの大名家の姫である筈なのに、何故これ程料理の腕が素晴らしいのですか?」

安芸乃から「大名の姫なのに、何故これ程料理の腕が凄いのか?」と、質問されると高代は

「安芸乃姫様、私は確かに一応、大名家の姫ではありましたが、姫であった時期は僅か5年だけだったので

母や弟達と生きる為、料理の腕を磨いたり食べられる野草を調べていたのです」

大まかに「私はお姫様だった時期は短かったから、料理の腕を磨いたよ」と安芸乃に伝える

高代の言葉に安芸乃は

「詳しく教えていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

細かく聞こうとした。すると藤四郎が

「安芸乃殿。人様の事を根掘り葉掘り聞くのは」

嗜めようとしたが、高代が

「小早川様、別に構いませぬ。隠す事でもありませんし、右府様も内府様も知っている事です。なのでお話しましょう」

前置きして話し始める

「私の母と弟達の母は、元々越前国を治めていた朝倉左衛門督の側室だったのですが私が産まれる前に兄上

つまり朝倉家の嫡男が幼くして亡くなった事により、父が無気力になりまして幼い私なりに父を叱咤しておりました

そんな父は、新たな側室に「骨抜きにされた」と言う言葉が的確な程、夢中になり

その側室との間に男児が産まれた事で、当時5歳の私と私の母、そして件の男児の産まれた翌年に産まれた生後半年の弟達と弟達の母を屋敷から追放したのです

私達に付き従ってくれた家臣の助けにより信濃国の川中島と呼ばれる場所の近くで暮らしながら

家臣達や母達が亡くなって私と弟達で暮らしていた所に、上杉攻めの近道の為に私達の住んでいた土地に六三郎様が来た事を好機と見て

何とか召し抱えてもらえないかと頼み込んで、そこから今に至ります」

高代の話を聞いた安芸乃が

「あの、高代殿。高代殿は今年で何歳だから、それ程落ち着いておられるのですか」

思わず高代の年齢を質問すると、高代は

「私は今年で30歳です」

正直に答える。それを聞いた安芸乃は

「わ、私と、同い年ではありませぬか!」

驚きで一瞬固まった。そこから元に戻ると

「話を聞くに、高代殿は姫であった時期は僅か五年程、それ以降は柴田様に召し抱えてもらうまで百姓として生きていたのですね」

高代の姫であった時期が短かった事、そこから六三郎に会うまでの事を聞いたが高代は

「安芸乃姫様、確かに大変でしたが、六三郎様に召し抱えてもらってからは

弟達も武士としての立ち振る舞いを義父上に教えてもいながら、理財を含めた内政を六三郎様の傅役的存在の利兵衛殿に鍛えてもらってますし

私も最初は柴田家の女中として働いておりましたが、義父上と義母上から「側室で良ければ六三郎様の嫁にならないか?」と

問われたので、了承しました。ですが、そこから六三郎様の出向する場所に時々同行させてもらっているのですが

六三郎様の行く場所では、普通ではない事ばかり起きました。それこそ、産婆として色々な方の出産の手伝いをして来た私でも

驚きましたのが、関東の北条家の一門の方の御正室様が何と四十五歳で出産なされた事ですねえ

六三郎様が羽柴様にも教えておりました義父上と義母上の平時の暮らしから、

身体を鍛える事と、食生活の改善を推奨したら見事、懐妊されましたが出産に一日と少し、およそ七刻程の時を要しました

と、まあそれくらい普通では起きない事が六三郎様の周りでは起きているのです」

柴田家で働き始めてから、1番驚いた北条家での出産補助の話をすると

「よ、四十五歳で出産!!?そ、その様な事が、誠に」

安芸乃は驚きで再び固まって、藤四郎は

「いやはや、やはり六三郎殿は我々の常識とは比べられない方ですな!ですが、六三郎殿なら、何故か納得出来ます!」

「六三郎なら納得出来る!」と、六三郎を人間扱いしていない言葉を口にしていた

そんな会話をしていると、高代から

「さ、私の話はここ迄にして宇治丸を焼いてみましょう」

ウナギを焼こうと提案されると、安芸乃は

「高代殿。私としては、少しばかりやってみたい焼き方があるのですが、よろしいでしょうか?」

関西風をやりたいのか、やってみたい焼き方があると伝える。それを聞いた高代は

「まあ、右府様達にお出しする宇治丸はありますから、

安芸乃姫様のやってみたい焼き方もひとつくらいは良いですかね?料理頭殿?」

念の為、料理頭に確認する。頭は

「一切れくらいでお願いしますね」と

「本当はダメですよ」感を出しながら、了承した。こうして安芸乃が関西風でウナギの蒲焼に挑戦する事が決定した。