軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

京六郎を見た安土城では

天正二十二年(1594年)三月十日

近江国 安土城

「殿、柴田家より浜松城へ行く面々が挨拶に参りました」

「ほう、思ったよりも早く、人選が決まったのじゃな。それで、五郎左よ!どれくらいの人数で、代表者は誰か分かるか?」

「はい。人数は百人程で、代表者は六三郎殿の弟の京六郎殿が務めます」

この日、播磨国の柴田家屋敷を出立した京六郎一行が、安土城へ到着した事が信忠に伝えられると、信忠は

「六三郎の弟が代表者か。立場的な物を考えると、間違ってはないのう。五郎左よ、その京六郎は権六や六三郎と同じ様に、勇ましい顔つきか?初めて会うのじゃから楽しみじゃのう!」

勝家と六三郎の顔のインパクトが強い事をもあり、京六郎の顔も同じ様な顔なのかと長秀に質問した。しかし長秀は

「殿。それが、、、」

京六郎の顔を見た上で、説明しようとした時

「京六郎様!嫁候補は居ますか?居ないのでしたら、私を是非とも!」

「いえ!私を是非とも嫁に!」

「私を!」

信忠の正室の松姫の侍女達が、京六郎へ逆プロポーズをしている声が聞こえて来たが、それを聞いた信忠は

「侍女達に関しては松に叱ってもらうとして、五郎左よ、京六郎と主だった者達を大広間へ移動させておいてくれ

ついでじゃ、母上と松は勿論、久太郎も呼んで参れ!柴田の鬼若子と呼ばれる程の猛将の六三郎の弟じゃ!皆で、どの様な若武者か見てみようではないか!」

松と帰蝶、そして安土城内で長秀と共に信忠を補佐している堀秀政に京六郎の顔を見せる事を決めた。命令を受けた長秀は、

名前の出た3人を呼ぶ為、家臣を走らせた。そして、自身も大広間へ移動して、京六郎を含めた主だった者達が大広間へ到着した事を確認すると

「先頭が、柴田京六郎殿で間違いありませぬか?」

京六郎を確認する。長秀の言葉に

「はい。拙者が柴田京六郎です」

京六郎は返答する。京六郎の言葉を聞いた長秀は

「それでは、今から内府様が来ますので、しばらくお待ちくだされ」

「ははっ!」

信忠が来るから待つ様に伝えて、京六郎も了承する。そんなやり取りの後に、松姫と帰蝶と秀政が大広間に到着する。3人が何事も無いかの様に、上座の近くに座ると、程なくして

「殿が御到着しました!」

小姓が信忠の到着を知らせる。その声で、全員が平伏する。そして信忠が上座に座り

「面を上げよ」

顔を見せる様に命令する。京六郎達が顔を上げた事を確認した信忠は、

「さて、此度お主達が浜松城へ行く者達じゃな!高代の弟である朝倉宗太郎と宗次郎!久しぶりに顔を見たが、しっかりと武士の顔になっておるな!嬉しいかぎりじゃ!」

最初に朝倉兄弟に声をかける。宗太郎と宗次郎は

「「勿体なきお言葉にございます!」」

平伏して、感謝の言葉を述べる。それを聞いた信忠も

「お主達の姉である高代の為に、しっかりと働いてくれ!」

そう伝える。そして

「先頭に居る若武者よ、お主が柴田京六郎じゃな?」

「はい、柴田越前守の次男、柴田京六郎にございます!」

京六郎を確認して、京六郎自身も答える。すると、信忠は

「先程、侍女達が京六郎へ嫁入りしたい旨を大声で伝えておる声が聞こえておったが、柴田家との縁を強くしたい者の娘が言っておるのかと思っておったが

どうやら、その様な下心ではない様じゃな。京六郎、お主、顔が母親や姉達に近いと言われておらぬか?」

京六郎が気にしている事を質問してくる。しかし京六郎は

「はい。父上や兄上の様な勇ましい顔つきではない事が、とても悔しく思います。なので、早く元服して、初陣を経験したいです!

ですが、その様な我儘を言っている様では、父上も兄上も拙者の元服を認めてくださらないでしょう。なので、今は高代義姉上へ安産祈願の品を渡す事と

どれだけの人数が徳川様のお世話になっているのかを確認するお役目に励みたいと思います!」

「勝家や六三郎の様な勇ましい顔つきではない事は悔しいが、今は役目に励みたい」と、

信忠へ返答する。京六郎の答えを聞いた信忠は

「はっはっは!京六郎よ、安心せい!確かにお主の顔つきは柴田家よりも織田家の血筋が強く出ておる!しかし、

お主の立派な身の丈と己の事よりも役目を最優先に考える気概は、柴田家の血筋が強く出ておる証じゃ!

つまり京六郎よ、お主は織田家と柴田家の良い所取りをしておるだけじゃ!

顔の事を気にしておるのかと思ったが、そこまで気にしておらぬ様で安心したぞ!

これならば、此度の役目を成し遂げてくれるじゃろうな!しかしじゃ、六三郎と違う点として京六郎はあちこちに出陣したり働きに出たりしておらぬから、

浜松城までの道も知らぬじゃろう。そこでじゃが久太郎!お主、京六郎達を浜松城まで先導してやってくれ!」

役目の事を最優先に考えている京六郎を褒めつつ、外に出ていない事を危惧して、秀政を案内役に指名した。久しぶりの役目に秀政も

「ははっ!若者達をしっかりと先導してみせます!」

気合いが入っていた。それを聞いた信忠は

「うむ。それでは、これが安産祈願の品じゃ。京六郎よ、高代にしっかり渡すのじゃぞ?そして、徳川家で世話になっておる人数の事、忘れるでないぞ」

「ははっ!」

「うむ、それでは部屋に戻ってしばらく休んでおれ。久太郎の準備が整い次第、出立じゃ」

「ははっ!それでは失礼します!」

部屋に戻って良いと伝えて、京六郎達は大広間を出ていった。京六郎達が出て行った事を確認した信忠は

「五郎左、儂は驚いたぞ!」

「どの様な事に驚かれたのですか?」

「京六郎の顔と身の丈じゃ!市叔母上にとても似ておる!そして、あの身の丈じゃ!六尺はあるのではないかと思う程じゃ!」

興奮しながら、京六郎の事を話していた。そんな信忠へ松姫も

「勘九郎様、三法師もあの様に育てたいですねえ。京六郎殿は少し、気にしている様ですが、あれは正しく美丈夫です」

息子の三法師の将来像として、京六郎を見ていた。帰蝶に至っては

「あれ程の美丈夫なだけでなく、六三郎の弟という立場もあるのですから、浜松城内は勿論、道中でも女子に言い寄られるでしょうねえ

堀殿、大変だとは思いますが、共に行く者達と共に京六郎殿を守ってあげてくださいね」

フラグ発言をした上で、秀政へ発破をかけた。秀政は

「ははっ!何事もなく安土城までの往復を成し遂げます。それでは、準備に取り掛かりますので失礼します」

準備の為、大広間を出て行った。こうして、京六郎の事を知っている人間がドンドン増えていくと同時に、変な女に言い寄られるのではないかと言う不安が増えているが、浜松城への出立が正式にスタートした。