作品タイトル不明
罵詈雑言の嵐になる事を覚悟した六三郎は
天正二十一年(1593年)十月九日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「それでは武田殿!元服の儀、見事であった!また何処で会おう!それでは安房国へ出立じゃ!」
「武田殿を見て、我々佐竹家も気が引き締まった!次は、武田殿の子が産まれた時にでも、祝いの品を持って来る!それでは達者でのう!」
皆さんおはようございます。勝四郎くんの元服の儀の翌日、諸将がそれぞれの領地へ帰っているのを見送っております柴田六三郎です
いやあ、改めて本当に大人数が居たんだなと実感する程、躑躅ヶ崎館及び周辺がガラガラになりました。そして、於義伊くんの元服、於義伊くんと竹姫の祝言を浜松城でやる事に決まったので、
徳川家と最上家を送り出そうとしたら、於義伊くんが
「六三郎様にも、元服と祝言に出てもらいたく!」とリクエストして来ました。俺はこの後、穴山姉弟の事を話さないといけないんだけどなあ、と思っていたら
「行って来い!於義伊殿も勝四郎と同じく、幼い頃にお主に命を助けてもらった身じゃ!二郎三郎、良いか?」
大殿が家康に確認して、家康も
「そうですな。於義伊の成長には六三郎殿が必ず関わっておりましたから、出てもらいたいですな。六三郎殿、よろしいかな?」
了承したので、俺が約20年ぶりに浜松城へ行く事が決定しました。大殿は、鬼武蔵さんや俺の嫁達と共に躑躅ヶ崎館でお留守番だそうです
あれ?これは、俺が大殿の名代という事になるのか?いや、そんな事はないはずだ!うん、そうだ!そうに違いない!あまり深く考えても仕方ないので
「分かりました。それでは、於義伊殿の元服の儀と祝言に、喜んで出席させていただきます」
そう俺が返答すると、於義伊くんが
「ありがとうございます!それでは早速、浜松城へ行きましょう」
と、喜びながら催促するけど、ちょっと待ってもらいたい!
「於義伊殿、そして徳川様。実は拙者、これから武田家の皆様へ伝えなければならない事があります。それが終わるまでは、出立をお待ちいただきたく存じます」
六三郎が、於義伊と家康へ、出立を待ってもらいたい旨を伝えると、2人は
「分かりました」と、於義伊は答え、家康は
「何か重要な話の様じゃな。最上殿、そして三郎殿。我々も、この話の場に居るべきだと思うのですが、如何ですかな?」
信長と義光に、「話に参加しよう」と呼びかける。家康の呼びかけに2人は
「そうですな。何か得る物があるかもしれませぬな。太郎、お主も出よ」
「儂もある意味、当事者じゃ。勿論、出るぞ」
報告の場に出る事を了承した。それを聞いた家康は
「於義伊、お主も出るのじゃ。良いな」
「ははっ!」
於義伊に出る様、命令し、於義伊も了承する
結局、残った家の主だった面々がその場に出る事になったので、六三郎は
「それでは、件の件に関わる者達を連れて参りますので、勝四郎殿の居る大広間へ先に行ってくだされ」
そう言って、穴山姉弟の元へ向かうと、その途中で
「六三郎!」
盛政が六三郎を呼ぶ。盛政は六三郎へ
「六三郎、大殿から話は聞いておるが、穴山家の事をこれから話すのじゃな?ならば、儂もその場に出る!」
「自分もその場に出る」と宣言する。しかし六三郎は
「いや、兄上?兄上は」
言い淀む。しかし、盛政は
「六三郎!儂は、君花を嫁に迎えると宣言した!祝言を挙げてないから、まだ正式な嫁ではないが、嫁になる女子やその妹弟の危機に立ち向かわないでどうする!だから、儂もその場に出たい!頼む!」
出たい理由を話して、六三郎に頭を下げる。そこまでされた六三郎は
「分かりました。それならば、共に穴山姉弟の事を伝えに行きましょう」
盛政の希望を聞く事にした。そして、高代の部屋へ行き、
「君花、君江、勝五郎!3人は儂と共に大広間へ行くぞ」
3人に命令する。しかし、高代が
「六三郎様!まさか、3人を武田家に売るのでしょうか!?そうなのでしたら、絶対に渡しません!」
3人を守ろうと構える。しかし盛政が
「高代殿。六三郎がその様な男ではないと知っているであろう?それに、六三郎に命を救われて、武田家を立て直してもらっただけでなく、
甲斐国を再興させてもらった勝四郎殿や、周りの方々が、三人に危害を加えないと判断したからこそ、六三郎は、武田家に三人の事を伝えるのじゃ!
勿論、その場には儂も出る!嫁に迎える君花と、君花の弟妹である君江と勝五郎の側に居てやりたい!それだけじゃ!」
三人の事を武田家に伝えても大丈夫である理由を、高代に伝えると、高代は
「佐久間様がそこまで仰るのであれば、、分かりました。ですが六三郎様!三人の事、しっかりと守ってあげてくださいね!」
納得しつつ、六三郎に檄を飛ばす。高代の言葉を聞いた六三郎は
「任せよ!」
一言だけ返答して、3人を大広間へ連れて行く。大広間には既に、上座に勝四郎、一段下の左右に分かれて五郎と典厩が座っており
客人用の場所に信長達も座っていた。六三郎達が到着すると、勝四郎は
「六三郎殿、何やら伝えておきたい事があると聞いたのじゃが、どの様な事でしょうか?」
六三郎に質問する。質問された六三郎は姿勢を正して
「勝四郎殿、仁科殿、典厩殿。今から紹介する3人は武田家一門にとって複雑な思いを抱くでしょう!ですが、勝四郎殿を頂点とする武田家を始める為には
絶対に伝えておかないといけない事ですので、連れて来た次第です!」
勝四郎にそう伝える。それを聞いた勝四郎は
「分かりました。それでは三人共、名を名乗ってくれるか?
3人に自己紹介を促す。腹を括ったのか、盛政が隣に居るからなのか、君花は
「穴山君花と申します」
怯える事なく、自己紹介を行なう。君花に続き
「穴山君江と申します!」
「穴山勝五郎と申します」
2人も自己紹介を行なう。3人の自己紹介を聞いた勝四郎は
「穴山家の生き残りという訳か。君花とやら、お主から年齢を聞かせてくれぬか?」
3人に年齢を聞く
「二十歳です」
「弟と妹は何歳じゃ?」
「今年で十歳になります」
2人の年齢を聞いて
「そうか。下の二人は例の件を知らぬ歳じゃな。ならば、この場には君花だけで良い。二人は、部屋に戻りなされ」
部屋に戻らせた。そして、残った君花に対して
「君花よ、お主は父の愚行を聞いた時、どう思った?」
「誠に、愚行であるとしか思えませんでした!」
「そうか。ちなみに、お主の母は此処に居る五郎叔父上の姉が妹なのか?」
「いえ!家臣の娘でした!」
「ふむ。ならば、武田家との関係も薄いか」
幾つか質問をした後、しばらく考えこんだ。そして、
「六三郎殿。佐久間殿が居るのは何故ですかな?理由を教えていただきたいのですが」
盛政が居る理由を六三郎に質問する。しかし、六三郎が答える前に
「武田殿!拙者がこの場に居る理由ですが、君花を嫁に迎える事が決まったから、つまり嫁の側に居てやりたいと言う思いからにごさる!」
盛政が答える。盛政の答えを聞いた勝四郎は
「そうですか。そこまで話が進んでいるのであれば、拙者は勿論、武田家の面々がとやかく言うのも野暮ですな!
分かりました。六三郎殿が穴山家の子供達を召し抱えて、その長女が佐久間殿に嫁ぐという報告ですな。遠縁の娘が嫁ぐのです
その報告をしないといけないですから、確かに承りました。佐久間殿と君花、おめでとうございます。改めてですが、君花や弟妹の事、よろしくお願いしますぞ!」
最終的に、何も言わないどころか、少しだけ、盛政と君花の事を祝った。その言葉に盛政も君花も
「「ははっ!」」
頭を下げた。そして勝四郎は
「さて、六三郎殿。徳川様や最上殿から、於義伊殿の元服と祝言の為に浜松城へ向かうと聞いておりますから、出立してくだされ!」
六三郎へ浜松城へ向かう様、促す。こうして、六三郎は色々言われる覚悟を持って穴山家の事を報告したが、結局、何も無かったので、安心して浜松城へ出立した。