軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下心満載の三家は成田家を動かす

天正二十一年(1593年)七月一日

武蔵国 某所

「いよいよ、武蔵国に入ったと見て良いかのう小十郎!」

「そうですな。常陸国から武蔵国に入ったと見て良いでしょう。佐竹様も小田様も、我々伊達家と共に移動してくださりました事、御礼申し上げます」

常陸国で佐竹家と小田家の言い争いを止めようとした伊達家が、共に進む事になって七日目。とうとう3家は武蔵国に入った。そこまでの道のりで、六三郎と話した面々が、話に花を咲かせていた

「伊達家では小次郎殿と片倉殿が、柴田様にお会いしたのですな。拙者は父上の名代として柴田様にお会いしました

最初にお会いした時は、柴田様本人と間違えて別の方に臣従の申し出をしようとしましたぞ。お二人や小田殿も同じ様な事をしませんでしたかな?」

「我々小田家は、とある村が野盗に襲われていた所を助けた後で、武田家の葡萄という果物の畑で倒れていた所を助けてもらい、

その後に武田家の屋敷で柴田殿に飯をいただいたのが、初めてお会いした時でしたな」

佐竹義宣と小田氏治が、それぞれ六三郎との初対面の思い出を語ると、伊達家は小次郎が

「佐竹家と小田家は、我々と比べると良い方向で話し合えたのですなあ。我々伊達家は、挨拶の際、母上が連れて行けと言ったので連れて行ったら、まさかの兄上の娘を

柴田様のお子の嫁に貰わないか?といきなり申し出たので、落ち着かせるのが大変でした。ですな、小十郎殿」

「確かに。あの時の御母堂様は、中央との結びつきを強くしたい気持ちが出過ぎておりました。まあ、とりあえず、その話はおいおい、

と柴田様が仰ってくださったので、一旦棚上げにはなりましたが。それでも諦めてない様でしたからな」

義姫の暴走話を景綱と共に笑いながら話していた。それを聞いた義重と氏治が

「「片倉殿!その話、詳しく聞かせていただきたい!柴田殿に、娘が居るのであれば倅か孫の嫁に迎えたい!」」

まさかの同じ言葉が出て来ていた。その言葉に最初に反応したのは

「父上!拙者は既に正室が居るので、無理ですぞ?」

義重の嫡男の義宣だった。その義宣に

「お主でなくとも、今年産まれた孫の義太郎の嫁としての話じゃ!安心せい!」

義重はフォロー的な言葉をかける。それを聞いた義宣は

「それならば構いませぬが、そうではなくて、父上。柴田様に娘が居るかどうかも分からない状況では、その様な話をするのも、どうかと思いますぞ」

少しだけ、義重を嗜める。そんな息子の言葉に義重は

「はっはっは!次郎は儂と違って、相手の事まで考える出来た息子じゃな!」

大笑いしながら、義宣を誉めていた。そんなやり取りをしながら進んでいると

「兄上、何やら城が見えませぬか?」

伊達家の小次郎が、城を見つける。その城を見た小田氏治が

「ああ、あれは忍城じゃ!水の上に浮いている様に見えるから、「忍の浮き城」とも呼ばれておる。かつて、あの軍神上杉謙信の軍勢も退けた程の堅城じゃ」

大まかな説明をしてくれた。その説明を聞いて、景綱が

「殿。上杉謙信と戦った城という事は、北条方の支城のひとつですから、流石に城主に挨拶くらいはしておいた方が良いと思いますぞ?」

政宗へ「忍城の城主へ挨拶しとこう」と促すと、佐竹家も

「父上。我々も挨拶をしておくべきかと」

義宣が義信に同じ様に促す。小田家は当主氏治自らが

「儂は早く挨拶して、柴田殿との縁を強くしたいから、先に行くぞ!」

そう宣言し、伊達家と佐竹家を置いていこうとしたので、両家とも結局

「待たれよ!伊達家も挨拶に向かう!」

「佐竹家も同じく!」

小田家と同じく、忍城へ挨拶に向かう事を決めた。そんな事を知らない忍城内では

「殿!!!北方から、何やら大軍が向かって来ております!」

「何!正木よ、何処の家か分かるか!?」

会話の中に出て来た殿とは、忍城の城主、 成田新十郎氏長(なりたしんじゅうろううじなが) 、報告した正木とは、 正木丹波守利英(まさきたんばのかみとしひで) である。そんな2人の声に釣られて、

「殿!戦にございまするか?」

「殿!」

「正木の爺様!敵襲にござるか!」

「丹波!何事じゃ!」

家臣達が続々と氏長の元に集まる。主だった面々が氏長の居る大広間に集まってから、1人遅れて

「何か、ありましたか?」

のほほんとした空気を纏った、ひょろ長の体躯の男が大広間に到着すると

「これ!十兵衛!成田家一門のお主が、その様に遅く到着してどうする!」

遅く到着した十兵衛と言う名の男が叱責されるが、その十兵衛という男は

「父上。その様に大声を出しては、頭に血が上って倒れてしまいますぞ?」

叱責して来た父親の体調を心配する言葉をかける。その男の名は、 成田十兵衛長親(なりたじゅうべえながちか) 、

心配された父親の名は 成田十三郎泰季(なりたじゅうざぶろうやすすえ) が、城主の成田氏長の父親の弟なので、叔父として一門として新十郎を支えている

そんな泰季と長親親子のやり取りを氏長は

「叔父上も十兵衛も、親子喧嘩は後回しにしてくだされ!!今は、北方から来る大軍が敵だった場合の対処を考えないといけませぬ!」

2人を諌めた。2人は

「「申し訳ありませぬ」」

と、頭を下げた。これで一応、話し合いの空気になったので、改めて

「さて!皆に伝えないといかぬ事じゃが、北方より大軍が向かって来ていると正木から知らされた。北条家からは、その様な報告は無い!

じゃが、北条家の味方か敵かも分からぬ者達を迎えるわけにもいかぬ!なので、誰か!軍勢の元に行き、話をして参れ!正木と共に行きたい者は誰か居るか?」

三家の元に行く者が居るかを問うと、

「殿。その様な事ならば拙者が丹波と共に行きましょう」

長親が「自分が行く」と立候補する。その長親に父の泰季は

「十兵衛、遊びに行くわけではないのじゃぞ!」

長親に危険な役目である事を伝えるが、長親は

「父上、それに殿。この忍城から見て大軍と分かる程の軍勢ならば、攻撃してくる場合は鬨の声を上げているでしょう。それが無いのであれば、きっと敵ではないでしょう!

なので、拙者と丹波が行っても大丈夫でしょうから、心配召されるな。それに、心配ならば 酒巻(さかまき) 殿と、柴崎和泉殿も連れて行きます、お二人共、よろしいですかな?」

大丈夫であろう理由と、増員を提案する。その提案を聞いた氏長は

「分かった。正木と十兵衛と酒巻と柴崎。お主達が、その大軍の前に行って、話をして参れ!敵ではないと判断出来たのであれば、少ない人数を連れて来い」

「「「「ははっ!」」」」

こうして、三家の大軍への使者の4人が指名され、ここから松田の愚行が知られて行く。